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駒野場サッカー部のスタメン組半数以上が体調不良で学校を欠席し、なおも早退者が続出している。
そんな異常事態を受け、放課後の練習はスケジュールを変更し、今いる健康なサッカー部員が全員、マスク着用の元、ミーティングルームに集められていた。
50人ほどいるはずのサッカー部員はなんと、10数名ほどになってしまっている。いつもは先輩が座っている席を1年生が座って前に詰めているという状況だ。
「皆さん通知した通り、現在駒野場サッカー部員で病欠、および早退者が続出している状況です」
部員と同様にマスクをし、タブレットを触る手ですらビニール手袋を着用した完全装備姿の神楽坂が、この場のサッカー部員全員に改めて状況を説明している。まるで保健所から来た専門家のような佇まいだ。
「皆さん、帰宅したら手洗いうがい、消毒を徹底してください! うがいはイリジンを使ってください!」
「それでどうにかなるのか、これ……」
マスク越しに達樹が呟く。
「ていうかもしも、このまま全員風邪ひいたらどうなるんだ……?」
翔がそわそわし、隣に座る透に聞く。
「不戦勝。相手校が戦わずして勝ち上がる」
「はぁ!? そんなのずりーよ!」
「……こんなの前例がないから、俺もわからないけど、たぶんそうなるんだと思う」
透も最悪のケースを想定する。
トーナメント出場中のこのタイミングで、一斉の体調不良。しかもサッカー部員だけ。体調不良の多くはスタメン組ときた。……それはまるで――。
「まさかガチで、北平の呪いなんじゃねぇの……?」
数少ない生き残りの1年生メンバーが、そんな事を呟く。
するとさらに、駒野場サッカー部を地獄へと突き落とす、戦慄の知らせが入る。
「たった今、度會キャプテンと、三國副キャプテンも高熱を出して早退したと……」
マスクで口元を隠してはいるが、痛ましそうに伏し目になって、神楽坂が言う。
「「「……!」」」
飛車角両落ち。初戦が北平高校だった時以上の衝撃が、この場の全員に押し寄せる。精神的支柱と絶対的エース。駒野場サッカー部の要であった二人も失い、いよいよ残されたメンバーは悲壮感を漂わせていた。
この場の誰もが2回戦突破を、不戦敗と言う形で諦めそうになっていたが、唯一……いや、唯三諦めていないのが、一年生トリオであった。
「……試合は日曜です。今はこれ以上の体調不良を出さないようにすることと、戦術の見直しが必要かと思います」
透がぼそりと、モニター前に立つ神楽坂に向けて言う。
「え……。し、しかし、この状況では……」
神楽坂が残されたメンバーを見渡して言う。しかし、まだ諦めてはいけない、可能性は信じなければいけないのだろう。
思わず弱気になってしまった自身を否定するように首を振り、神楽坂はこくりと頷いた。
「えっと、対策ですが、やはり手洗いうがいと……」
「――お話し中申し訳ないけど、これは呪いでも単純な感染症でもないわよ」
急に別の女性の声が聞こえ、駒野場サッカー部員たちは顔を上げる。モニター脇の通路口から、コツコツとヒールの足音を鳴らしながら入ってくる白衣姿の人影が。
やって来たのは、駒野場高校の養護教諭、静石であった。
……白衣の胸ポケットに堂々と、タバコがぶっ刺さっている……。




