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その日の放課後、駒野場高校サッカー部の全体練習の時間だ。
昨日の実質の休養日を挟んだ本日は再び、ハードな練習が開始されていた。すべては週末の扇大高校との二回戦に臨むため。
「それじゃあ、鷲田監督も神楽坂マネージャーも、扇大高校の詳細はよくわからないと……」
全体練習の途中、水分補給をしに給水器から水を飲みながら、度會が鷲田と神楽坂と会話をしていた。
「うーん……俺も出来る限りは調べたんだけどねぇ、これが一切情報ないわけよ」
「相手の高校のHPにも小さくサッカー部の概要だけが載っているだけでして、戦術や構成、フォーメーションまで全てが不明ですね」
やはり謎に包まれている扇大高校。鷲田も神楽坂も険しい表情だ。
「悪いねぇ度會キャプテン。相手校がどんな戦術か不明な以上、対策特化の練習じゃなくて、基本メニューの底上げを重点的にやってほしい」
鷲田もお手上げ、と言わんばかりに肩を竦めていたが、度會は構いませんと言っていた。
「いずれにしても、俺たちはやるべきことをやるだけです。相手がどんな戦い方をしてくるかわからないんであれば、こちらは最善を尽くすまでですから」
「さすがです、キャプテン。チーム得点王ですものね」
「たった1点、だけどな……」
神楽坂がうんと頷いて褒めていたが、突如、鷲田が閃いたと言わんばかりに指を鳴らして眼鏡を怪しく光らす。
「な、なんですか……」
くつくつと笑い出す鷲田に、度會がおっかなびっくりとなるが。
「いっそのこと調べに行っちゃえば良いじゃない! 名付けて、潜入スパイ工作!」
「かなりの犯罪です」
何を言い出すかと思えば、と神楽坂がぴしゃりと食い止める。
「そこはお互いフェアプレーで行きましょう……」
度會も肩を竦めていた。
その一方、後方のピッチでは駒野場メンバーが全体練習を行っているわけだが。
神楽坂が彼らをじっと見つめて、一言。
「今日は皆さん、動きが重そうですね」
「確かに。でもまぁ、北平高校との戦いでみんな全力出し切っちゃったんでしょ。今日もゆっくりペースで問題ないよ」
鷲田もまた大きくその場で伸びをしながら、お気楽そうに言っていた。
二人の言う通り、昨日の休養日を挟んでの本日であったが、みんな動きが重たそうで、精彩を欠いたプレーが目立つ。決して練習に身が入っていないわけではなく、真面目に取り組んでいるのだが、細かい所でのミスが目立つ印象だ。
「すいません……そうします。俺もさすがにまだ全快したとは言い難いですからね」
度會もいまだに傷だらけの足を引きずっているようで、北平との激闘で消耗した体力も戻しきれていないようだった。




