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地区大会予選トーナメント二回戦目の相手である扇大高校。どんなチームなのか、実力も未知数なため、それらを調べるために、涼宮透、蓮見翔、御子柴達樹は駒野場のビックデータに会いに向かう。
駒野場サッカー部のマネージャーであり、2年生の先輩でもある神楽坂舞は今日もジャージ姿でサッカー部屋内練習場にある、備品室にいた。
「神楽坂マネージャー! こんにちは!」
「「こんにちは」」
翔が開口一番、元気な挨拶を行い、透と達樹がそれに続く。
「こんにちは、皆さん。フリー練習なのにちゃんと来ていて偉いですね」
「マネージャーこそ! 備品室で何してたんですか?」
「備品のチェックです。日々の練習で、皆さんが使うときに不足してはいけませんから。一個一個ちゃんと調べているんです」
「え、かなりの数ありますよ……? それを一人で……?」
部屋にびっしり詰まれている段ボール箱の数々を見つめ、達樹が驚いているが、神楽坂はそれが当然であり普通だと言わんばかりに、大して表情を崩していない。
「ええ。すぐ終わりますし、鷲田監督や皆さんの負担にはしたくないですから」
「何て優秀な人なのだろうか……」
透も感動していた。……それと同時に、なんでここまで優秀な人物が、はっきり言ってこんな普通な偏差値の公立校である駒野場にいるのか、疑問に思うのだが……。
そこで透は、本来の要件を思い出す。
「次の対戦相手の情報が分からなくて。神楽坂マネージャーならなにか知ってるかと思って、聞きに来たんです」
「グループのSNSには扇大高校と言う名前と公式サイトしか流れてきてなくて、肝心のサッカー部の情報がネットを漁っても出てこないんです」
透の言葉に続き、達樹の言う通り、ここに来るまでにスマホでネット検索しても、過去大会出場等と言った痕跡は一つも見つからなかった。
これには神楽坂も、眉根を寄せていた。
「それがですね……本来なら私も皆さんに情報を教えたかったのですが、ネットで調べた通り一切出ておらず……。北平のような老舗の歴史ある高校ならまだしも、どうやらそうではないようでして、扇大高校サッカー部の情報が何処にもないんです」
「過去大会のデータもですか?」
達樹がさらに尋ねるが、神楽坂ははいと頷く。
「では直近、すぐ前の試合のデータは? 地区大会予選トーナメント初戦です」
今度は透が尋ねる。
駒野場が北平と戦っているのと同時刻。扇大も相手校と戦っているはずだ。
さすがにそこのデータならあるだろうと思って神楽坂に聞くが、それも芳しくない反応だ。まだ昨日の今日のことで、情報が入り切っていないのかとも思ったが、どうやらそうではないようで。
「それが、扇大高校も駒野場と同じく完全屋内サッカー場を持っておりまして、試合はそこで行われたようです。なので外部入場が固く禁止されて、試合内容は完全秘匿状態だったそうです」
「え……」
透が絶句する。
まるで無観客試合の更に上の様な、完全秘匿状態でゲームが行われたようだ。
「何対何で勝ったとかもわかんないんですか?」
翔が尋ねる。
「高校サッカー連盟の公式トーナメント表に記載されているスコアボード上では、3-0となっていましたね」
「正直相手にもよるけど、中々強そうだな」
達樹が呟く。
しかしそれ以外に今のところ情報が全くなく、ほぼすべてが謎に包まれている、扇大高校サッカー部であったのだ。
「すみません、あまりお役に立てていないようで……」
「い、いえそんなことありません! 寧ろ俺たちがお邪魔しちゃったなーなんて! いやーほんと、大変ですよね、マネージャーさんも、ね!?」
途端、たははと髪をかきながら笑みを浮かべてにこにこと話し出す達樹に、透はジト目を向ける。
「いえまあ、大変なのは否定しませんが、好きでやっていますので、全然大丈夫ですよ」
「あ、ですよね! 知ってました! いやーあはは!」
きょとんとする神楽坂に、赤面する達樹はますます豪快に笑っていた。
「……なんか、御子柴の様子変じゃね? あのプロテインバーに変なの混ざってたのか……? 大丈夫かなぁ……?」
「大丈夫いつもの事だ」
本気で心配している様子の翔と、本気で心配していない透だった。




