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北平高校との初戦を制した駒野場高校であったが、次戦は来週の日曜日にすぐにやってくる。一週間刻みのスケジュールを鑑みれば、あながち北平が駒野場相手に手を抜こうとしていたこと自体は、間違いではなかったのかもしれない。まあいずれにせよ駒野場は北平相手には、全力を尽くさねば勝てない相手であったし、勝利した以上は彼らの分の無念も背負わなければならない。それが勝者の責任の一つであった。
地区大会予選トーナメント初戦が終わった翌日の月曜の放課後――。
昨日の試合の疲れを考慮し、今日の駒野場高校サッカー部としての全体練習はお休みとなり、フリー練習の日となっていた。
涼宮透、蓮見翔、御子柴達樹の三人は、駒野場サッカー部の寮の一室である、食堂で屯っていた。
「うまっ! ここで食うカレーめっちゃ美味いんだよなー!」
翔は食堂で注文した大盛カレーライスをガツガツと食べており、達樹は売店で買っていたプロテインバー、透はセルフの水を飲んでいる。
「そういえば二人ともあんまし食堂で飯食べないよな。腹減らねーの?」
「逆に昼飯弁当食っておいて放課後ここでドカ食いできるお前が異常なんだわ……」
達樹がげんなりして突っ込んでいる。
「俺もお母さんが作ってくれた弁当があるし。何より、お金がもったいない……」
透はそう言って水をちびちび飲んでいる。
「お金もったいないから水で済ますってのも中々シビアなもんだな……」
「母子家庭だから、あまり母親に負担をかけさせたくないんだ」
「おっとマジか。そりゃあ悪かったな……」
「いいや、全然。平気だよ気にしないで」
達樹はバツが悪そうな顔をしていたが、本当に気にしていない透は平気な顔で、首を横に振る。
「プロサッカー選手になって、一緒に金儲けしようぜ!」
「言い方が厭らしすぎるだろ……」
翔がそんな事を言っており、達樹が苦笑している。
透は頷いていた。
「確かに。プロサッカー選手になれば、お金持ちだ」
「夢が膨らむ! 腹も膨らむ!」
「まあ、俺もそれが夢だしな。その為には予選突破して県大会出場。そして全国出て、アピールしねぇとな」
達樹もまた無事に、透と翔たちと同じくサッカーでてっぺんを目指す教、に入信したようだ。めでたしめでたし。
「そういえば次の相手はどこなんだ?」
翔がもぐもぐとカレーを大口で頬張りながら尋ねてくる。
透は今日の放課後、駒野場サッカー部員用グループチャットで流れてきたSNSを見つつ、
「扇大高校ってところらしい。御子柴は聞いたことあるか? 俺は無いんだ。私立らしいけど」
中学時代はサッカー部を離れていたため、それよりは知識がある中学校時代もサッカー部の達樹に尋ねるが、彼も思い出すような仕草をしつつも、最終的には見当つかずだったようだ。
「さぁな聞いたことねぇな……。一通りここら辺一体の強豪校は頭に入れてるつもりだったけど、中学時代含めて全く話題になったことがねぇ」
つまりは駒野場と同じく、新設校か、まだ全然サッカー部として歴史が浅い高校なのだろうか。
しかしいずれにせよ、向こうもこちらと同じく初戦を突破した相手になる以上、それ相応の実力があるはずだ。
「神楽坂マネージャーに聞いてみるのはどうだ? あの人なら何でも知ってそうじゃん!」
カレーをぺろりと平らげた翔が言う。
「蓮見、お前……」
達樹がじっと、翔を見やる。
「な、なんだよ御子柴。またなんか俺変なこと言った……?」
今度は翔がバツが悪そうな表情をするが、
「たまにはまともなこと言うじゃねーか」
「たまにはって酷くない!?」
全体練習はないが、フリー練習でちらほら自主トレしているサッカー部員もいる。新入生トリオは早速、二回戦の相手となる扇大高校について聞き込みをすることにした。




