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試合終了のホイッスルが鳴り、駒野場高校の勝利が確定した。
その瞬間、歓喜に沸くピッチ上の駒野場イレブンと、観客席の一角に押し込められていた駒野場サッカー部員たち。
対照的にその周りはしんと静まり返っており、北平の勝利を信じて疑わなかった人々は言葉を失い、呆然としている。
「どうもどうも! 今日はいい試合でしたね!」
「あ、ああ、はい……」
テクニカルエリアで罵声にも似た檄を飛ばしていた北平の監督は30歳ぐらい老けたような顔立ちで、満面の笑みを見せる鷲田と力なく握手をしている。
一方、ピッチでも座り込んでしまった北平高校の面々に向け、駒野場高校の選手たちが手を貸し、立たせてやったりなど、お互いの健闘を讃えていた。
「ほら、立てるか?」
度會が手を差し出したのは、相手校のキャプテン、土佐であった。
「……」
呆然自失している土佐は、その手をじっと見つめる。
「笑いたきゃ笑えよ……」
ぼそりと、力なく項垂れる土佐に、度會は首を横に振る。
「笑うかよ。お前たちは確かに強い。こっちが負けても別におかしくねぇ試合だった」
度會は土佐の手を無理やりにでも握り、立たせてやる。
「今度試合するときは、最初から本気出して来いよ? 俺たちがまた勝っちゃうからな」
「……言われなくても、そうしてやるよ」
土佐は顔を上げ、度會を見つめてから、彼の肩に手をポンと添えた。
「俺たちの分まで絶対勝て。そして県大会出場して、全国目指せよ」
「……おう」
土佐から確かな思いを受け取り、度會は真剣な表情で頷く。
そしてそれから、思い出したかのように、土佐は周囲を見渡す。
「あの20番は、何者なんだ?」
最後の最後で、自分を罠に嵌めた――いや、嵌められたというよりは、自分が自ら罠に嵌りに行ったような、奇妙な感覚がする相手だった。
度會はアイツか……と呟き、喜びを分かち合っている1年生トリオを見る。
じっと、三人の様子を見ていた度會は、肩を竦めた。
「駒野場の秘密兵器。期待の新人ってやつだ」
「……そういう事にしておいてやる」
土佐は苦笑し、試合後の整列のために中央に、度會と共に向かっていた。
ピッチの上で整列した両チームは、観客席に礼をする。ベンチからは三國を含めたメンバーが、最後までピッチで戦ったイレブンを迎えていた。
「度會……」
「三國。仇はとったぜ」
「ああ……やったな!」
にこりと微笑み、三國は度會の胸に抱き着くようにしていた。
度會は若干戸惑っているような表情を浮かべていたが、三國の髪を優しく撫でてやっている。
「「「あの三國先輩が、笑った……!?」」」
1年生トリオが珍しすぎる光景を凝視していると、見世物じゃないぞと、他の先輩たちに散らされるのだ。
「お疲れーみんなー!」
鷲田監督もまた拍手で、駒野場イレブンの健闘を讃えていた。
「皆さん。勝利おめでとうございます」
神楽坂も笑顔を見せていた。
「あー!?」
途端、翔が何か思い出したかのように、その場で絶叫する。
「ど、どした……?」
達樹がおっかなびっくりに聞くと、翔は頭を抱え、
「アイツらの連続無失点記録は阻止したけど、代わりに俺の連続得点記録が、途絶えた……!?」
「たかが体育授業の得点ごときで、お前のあれは記録でもなんでもねぇんだよ……」
「安心して、蓮見」
透がぼそりと、言う。
「記録よりも、記憶には残ってるから」
ぐっとポーズを決める透に、翔が「確かに!」と頷けば、達樹はやれやれと肩を竦めているのであった。
3章 完




