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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
3章

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55/97

25 駒野場高校 1:0 北平高校

 駒野場高校のCB、度會わたらいのゴールにより、アディショナルタイム間近の後半、ついに試合の均衡は破れた。

 まさかの予想だにしていなかった、駒野場のリード。北平の観客たちは驚愕の声を上げ、ピッチ上で戦う土佐とさを除いた北平イレブンの面々は、地面の上に砕け落ちるようにして倒れたり、天を仰いでいた。鬼の形相だった北平の顧問も、一瞬何が起こったのか理解できていないように、呆然とテクニカルエリアで頭を抱えていた。

 その逆に、歓声と雄たけびを上げるのが駒野場イレブンと、数少ない観客たち。ベンチメンバーも一斉に飛び出し、ゴールを決めた度會に向かって拳を突き上げていた。


「ハァハァ……。意味が、分かんねぇ……。え、どういう、こと、だ……?」


 呆然と立ち尽くし、目の前の出来事が夢ではないかと疑う土佐。

 背番号20の相手MFと競っていたはずだ。そうしたらいつの間にかボールは足元になく、バックパスを供給され、それをDFの度會が決めた。

 まず副審を見るが、当然オフサイドフラッグは上がっておらず、オフサイドはなし。

 次に主審を見るが、主審はゴールを喜んで度會の周りに群がる駒野場のメンバーたちに「早く戻るようにー」などと声をかけ、ゴール自体は認められているようだ。

 そして最後に巨大モニターを見るが、そこにも紛れもなく1-0と言う文字が刻まれている。


「決められ、た……?」


 顔を手で覆い、汗を拭いながら再び目を開けるが、現実は変わらない。

 連続無失点記録が途絶えたことなど、もうこの際どうでもいい。格下の駒野場に、ましてや相手DFに、同じキャプテンのCBにゴールを決められたことが、理解できない話だった。


「土佐……。ま、まだ試合は終わっちゃいない……。アディショナルタイムだって、あるんだ……」


 CBの仲間が、おずおずと、こちらの顔色を窺ってくるように声を掛けてくる。


「なんだ一体……。何が起きたんだ……?」

「え、えっと……」

「早く教えろ」

「あ、えっと……。お前が20番と競り合ってるときに、相手の5番のキャプテンが走ってきて、20番がヒールで落としたボールに、お前は、気が付いてなくて……」

「なんで、気が付かなかった……」

「お、俺たちは必死に声をかけたさ! でもお前、全然聞いてなくて。ずっと20番のユニフォーム引っ張ってたんだ!」

 

 20番。

 駒野場イレブンとゴールを喜びあう中、しかしいまいちその輪に入り切れず、なんか微妙な笑みを浮かべているあの1年。確か名前は、涼宮透すずみやとおるとか言った。


「俺がアイツに引っ張られすぎて、ボールすらも、見失っていたのか……?」


 土佐は自身の身体を見つめ、驚愕する。

 周りは必死に声を掛けてくれていたと言うが、聞こえなかった。いや、正確には、()()()()()()と言った方が正しいか。

 ひとしきり喜び合った駒野場イレブンが、自身の目の前を通って自陣へと帰っていく。

 その最中、度會と目が合った。


「昨年は手も足も出なかったけど、今年は足は出た」

「……っ!」


 土佐は納得が出来ず、度會を睨みつける。


「なんでCBのてめぇが、あんな位置まで!? それにお前、ボロボロだったはずだ! どこにそんな余裕残してやがったっ!?」


 見てくれも泥だらけの傷だらけの度會の姿をじっと見つめ、叫ぶ。

 度會は軽く微笑んで、どこか気恥ずかしそうにだが、答えてきた。その視線は、駒野場イレブンの攻撃陣たちに向けられている。


「まだまだあいつらはひよっこだからな。先輩でありキャプテンである俺が、しっかり面倒見ないとな。それに余裕なんて全然ねぇよ。もう今にも足はちぎれそうだし、全身が痛む」

「じゃあなんで……っ!」

「逆に、お前らが本気出してねぇだけだろ」

「……っ!?」


 言われ、土佐はハッと息を呑む。


駒野場おれたち相手に余力残して勝とうと思ってたみたいだけど、甘かったな。俺たちは全力でてっぺん目指す。そう約束したんだ。だから余裕なんてねぇし、常に全力なんだよ」

「く、くそ!」

「まだ試合は終わってねぇ。全力で来てみろ。まだ余裕あるんだろ?」

「言われるまでもねぇ!」


 ま、できれば手加減してくれると助かるがな、などと度會は捨て台詞を残し、自陣に戻っていく。

 残りのアディショナルタイム。

 本当の意味で本気を出した北平高校が僅かな時間で攻め込むが、試合はそのままホイッスルの音と共に終了。1-0で、駒野場高校が勝利となった。


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