15 駒野場高校 0:0 北平高校
圧倒的北平高校サイドの大声援で始まった、前半戦。
早速、北平高校がFWの2選手とMFの2選手の間でパスを回し、駒野場の陣地に侵入していく。
「ちょっと待て……」
開始早々の展開を見た、ベンチに座る達樹が呻く。
「全然、練習と違ぇ……」
「あ、当たり前だろ、本番なんだから」
同じくベンチに座る先輩の一人が、達樹に対して当然だと言わんばかりに言うが、達樹の視線はピッチを向いたままだ。
「駒野場の紅白戦の相手と、まるで動きが違ってやがる……!」
普段練習相手にしている駒野場高校の二軍たち。彼らと直前まで、紅白戦を行ってこの初戦を迎えたわけだが、そんな彼らのプレイとはまるで全てが段違いの動き出しだった。
戦術もフォーメーションも違うのでそれは当たり前かもしれないが、達樹が言うのはそこではなく、そもそものレベルの話だ。
「……っ」
ベンチに座る鷲田も、腕を組んで北平高校の動きを見つめているが、その表情は険しいものだ。
そしてその圧力、凄さは、ピッチ上にいる駒野場イレブンが何よりもよく分からされているに他ならない。ネイビーのユニフォームの領地に、続々とホワイトのユニフォームが侵攻していき、その色を塗り替えていくようだ。
ファーストボールから猛攻を仕掛けてくる北平高校の選手たちを、駒野場の選手たちは自陣深くでどうにか抑え、跳ね返していく。
「くそっ」
駒野場のFWがボールを受け取って攻め込もうとするが、全てのコースは塞がれ、守勢に回る味方の上りは遅れている。
「ぐあっ!?」
土佐率いる北平DF陣にあっという間にボールを刈り取られ、前線に運ばれていく。
「来るぞ!」
対する駒野場DF陣も、度會を中心にラインを組み立て、北平の攻撃陣をどうにか押し返していた。
しかしその防波堤は決壊寸前であり、北平のそれと比べれば圧倒的に押されている状況に変わりはなかった。
「三國!」
頼みの綱であり、駒野場高校の攻撃陣をけん引する三國にボールが回っても、相手の5バックは強固に陣を組み、彼の行動を阻害する。
それでも三國の卓越した個の力で一人を躱し、サイドを駆け上がっていくが、中央はすぐに人を集められてしまい、望みの薄いクロスを上げるしかなくなる。
それを北平は首尾よくマイボールにし、今度は反転攻勢、カウンターをしかけてくるのだ。
そしてそれに呼応するように、鳴り響くのは北平サイドの歓声。この場のすべてが、北平に味方するようだ。
「去年の練習試合はもうこの時間で俺たちが得点してたけど、今年は無駄によく耐えてやがるな」
未だ全然走っておらず、圧倒的に余裕がある土佐がほくそ笑む。相手はやはり、三國を中心とした攻撃に頼り切っている。そこを抑えるか、万が一突破されたとしてもサイドに泳がせれば、残りは貧弱なアタッカーしかおらず、対処は容易だ。弱小校らしく、セカンドプランも無きに等しい。
「……お前らがどう足掻いても俺たちには勝てねぇんだよ」
その視線の先には、北平の猛攻をどうにか受け止め、声を張り上げて味方を鼓舞している度會の姿があった。




