14 駒野場高校 0:0 北平高校
どこか鬱蒼としていた雰囲気のロッカールームを潜ると、北平高校のグラウンドが快晴の青空の下、広がっていた。
気温、湿度、良好。グラウンドは土であるが、品質に問題はない。設立50年を越える、駒野場と比べれば歴史深いこのフィールドは、今は観客席に大勢の人が座っている。――やはりと言うべきか、ほとんどが北平高校の応援であり、駒野場からすれば完全アウェイの状況だ。
スターティングメンバーに選ばれたそれぞれの11人は中央へ、その他のベンチメンバー、監督、マネージャーは両サイドテクニカルエリア後ろのベンチへと向かう。
透たちベンチメンバーは、華々しくピッチに整列していく11人の背中を、じっと見送るのだ。
ピッチ上のセンターサークルに横一列で並んだあと、観客たちに一礼をしてから、それぞれのイレブンが交差するように握手をかわしていき、最後はお互いのキャプテン同士が残る。
「……っ」
「ふ……」
ネイビーの駒野場ユニフォームの度會と、ホワイトの北平ユニフォームの土佐。お互いに向き合い、にらみ合う。
主審のコイントスが行われ、キックオフの権利を北平が取得し、コートの権利を駒野場が得る。
最後にお互いのキャプテンが握手をしてから、それぞれ自身がいるべき場所へと、駆け足で散った。
直後、開始したのが北平側の大声援。実際にそうであるのだが、まるでそれすらも武器とするかのように、駒野場イレブンに圧倒的な圧力をかけてくる。
「……これくらい、跳ね返さなくちゃね」
ぼそりと、ベンチに座る鷲田が呟く。腕を組み、その視線は円陣を組んでいる駒野場イレブンの中央、度會に向けられていた。
「さぁ、過去のツケを返す時だよ。度會キャプテン」
まるでそんな監督の声に返事をするかのようなタイミングで、ピッチ上の駒野場イレブンが声を上げていた。
「やっべ……ベンチなのに緊張してきた……」
一番端っこの席に座る透の一つ隣に座る翔が、そわそわしている。
「ああ……。まだホイッスルすら鳴ってねぇのに、たまらねぇなこの瞬間は。もしかしたら自分が呼ばれるかもしれないっていう緊張感ってやつだ」
ぞくぞくと、達樹も来たるその瞬間に、身体を震わせている。
「今は応援しよう。先輩たちを」
透も、自身の身体に押し寄せる熱気を抑えるように、努めて冷静に、ピッチで戦う仲間たちを見つめて言っていた。自分たちにとっては初戦。しかし先輩たちにとってこの試合は、過去のリベンジでもあり、同時に、過去の自分たちに勝つ為の試合なのだ。
主審が腕時計を見つめ、首にかけたホイッスルを口に咥える。
――そこから一息つく間もなく、鳴らされる笛の音。インターハイ地区予選トーナメント初戦、駒野場高校VS北平高校、開始だ。




