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忘れ物を取りに来た、と言っておきながら、北平高校のキャプテン土佐道春はロッカールーム入口に身体を寄りかからせ、着替え中の駒野場イレブンを値踏みするような視線を送ってくる。
「ここは俺たちに用意された場所のはずだ。相手校が何しに来た?」
上半身裸の度會が、険しい表情のまま尋ねる。
「何しに来たって失礼だなぁ。ここは北平のホームだよ? 別に何しようが自由じゃん」
「試合前だ。俺たちにだって戦術ってもんがある。できれば試合後にしてほしいな」
度會が言い返すと、土佐は腹を抱えて笑う。
「戦術って……。お前らにもあるんだな、そんなのが」
「てめぇ……!」
度會が向かっていこうとするが、すぐ隣の三國がすかさず度會の前に身体を入れるようにしてとどまらせ、ハッと思い至った度會も抑える。
「あー怖い怖い。ラフプレイとかやめてよー? 俺たちは次の試合もあるんだから」
などと、こちらなど踏み台に過ぎないと言わんばかりの、北平のキャプテンの物言い。
度會は今度はいくらか冷静に、言葉を返す。
「俺たちにだって、次の試合はある」
「ははは。また来年のインターハイの事?」
「違う。地区予選トーナメントの事だ」
「あっそ。精々祈っておくんだな。俺たちは絶不調だって事を」
などと、連続無失点記録を続けている中ありえもしない事を言い放ち、結局土佐はそのまま背中を向けて去っていった。
「……すっげー嫌な奴」
ぼそりと、透のそばで着替えていた達樹が呟く。
「結局アイツの忘れ物ってなんだったんだ?」
「馬鹿。あるわけねぇだろそんなの。俺たちをおちょくりに来たんだよ」
「なんだよそれ! すっげー嫌な奴!」
「だから今さっき俺が言っただろ、それ……」
と、達樹と翔が言い合う中、
「……」
透も去っていく土佐の背をじっと見つめていた。
やがて、用意されたロッカールームに鷲田と神楽坂がやってくる。
「お待たせーみんな。……あれ、なんかあった?」
並々ならぬやる気と殺気を感じ取ったようで、鷲田がはて、と首を傾げる。
「いや、なんでもないです」
もう落ち着いている様子の度會が、冷静に答えた。
「おーけー。じゃあお待ちかね、今日のスタメンとベンチメンバー、発表するよ」
「はい」
鷲田がオーダー用紙を手に、ホワイトボードにネームプレートを当てはめていき、発表を始める。
度會や三國などのスタメン組が順当に、ピッチを模した盤面の上に当てはめられ、ベンチの欄。そこに透、翔、達樹の三名が加えられた。
「ベンチ入りか……」
「おおー!」
「……」
達樹、翔、透もそれをじっと見つめていた。
「うん、今日はこれで。それじゃあドキドキハラハラの初戦、行こうか?」
鷲田がウインクを行い、親指を立ててピッチの方を指す。
軽く息を吐いた度會が立ち上がり、よしと、その場で軽くジャンプを行う。そうすると、その度會の肩にそっと三國が手を置いてから、黄色いひも状のものを手渡していた。校章があしらわれた、駒野場高校のキャプテンマークだ。
度會はそれを受け取り、まるで過去の自分をそこに縛り付け、気持ちを入れ替えるように自身の左腕に巻いていた。
「みんな。この初戦、何としても勝つぞ!」
「「「おう!」」」
度會を先頭に、いよいよ駒野場イレブンがピッチに入場していく。
駒野場高校 北平高校
スターティングメンバー
FW FW
西村 坂本 小林 刈谷
MF MF
三國 小笠原 沖村 近藤 横永 藤田 西野
DF DF
度會 氷室 永井 安藤 土佐 足立 国塚 武田
小野寺
GK GK
原田 溝口
ベンチメンバー
亘 飯田
石井 大野
御子柴 佐久間
蓮見 星
涼宮 吉田




