表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/47

12

 インターハイ地区予選トーナメント、初戦当日――。

 早朝、まだ朝露が立ち込める駒野場高校の正門前に、駒野場高校のサッカー部員たちは集合していた。本日の北平高校との試合は、相手の高校が試合会場である。つまりは、アウェイでの試合という事になる。相手は毎年優勝を狙う強豪校。当然、その熱量は学校全体として高く、応援する声も今の駒野場高校の比ではないだろう。相当なアウェイ環境が見込まれる中、まるでアリジゴクの巣に自ら落ちていくアリの様な存在が、今の駒野場イレブンなのだ。


「全員いるな? じゃあバスに乗るぞー」


 試合の日もいつもと変わらずのジャージ姿の鷲田わしだの号令の下、駒野場イレブンたちは二台のマイクロバスに分乗し、北平高校へと移動する。

 

「やっぺー……。昨日全然眠れなかった……」

「……実は俺もなんだ」


 隣同士の席に座る蓮見翔はすみかける涼宮透すずみやとおるが、お互いの寝不足を告白する。

 一方で、一つ前の席に座る御子柴達樹みこしばたつきはと言うと――。 


「珍しくお前らと気が合うな……」


 どうやら同じだったようだ。


「……」


 一方で、同じマイクロバス車内に乗る度會恭介わたらいきょうすけは、映り行く景色の窓に映る自分の姿をじっと見つめ返し、何か物思いにふけっているようであった。


「ほら」


 そんな度會の隣に座っている三國颯太みくにそうたが、そっとお菓子のグミを渡してくる。

 それに気づき、一瞬だけ躊躇した様子の度會だったが、渡されたクマの形をしたグミを手に取った。


「ありがとう、三國」

「考え事か?」


 片耳のイヤホンを外しつつ、三國が聞いてくる。


「……ああ。去年の練習試合の時を、思い出していた」

「奇遇だな。俺もだ」


 もぐもぐと、口を動かしながら三國が前を向き、呟く。


「……あの時は悪かった。あと、止めてくれてありがとうな」

「何回言うんだよ、それ。大丈夫だ」


 三國は表情を変えずに、グミをもう一粒口に含む。

 度會も同じように、グミを口に入れた。

 するとぽつりと、三國が再び口を開く。


「俺も去年は悔しかった。必死にやってるのに、馬鹿にされてさ。でも勝てなかった」

「……だな。あの時の悔しさをバネにして、今日まで頑張って来たつもりだ」

「俺もだ。確実に俺たちは去年より強くなってるはずだ。それは相手もそうだけどさ。だけど、もう負けるつもりはない」


 表情こそ今一つ変えないが、三國も生粋のサッカープレーヤーであり、何よりも胸の内に秘める熱い思いを抱いているのは、知っていた。


「ところで、一応聞くが、なんでクマのグミなんだ……?」

「なんでって。お前そっくりだから」

「……どういう意味だ、こら」


 やがて駒野場サッカー部は、北平高校へと到着する。

 出発の時の霧は晴れ、快晴の空の下。日曜にも関わらず、すでに多くの車が駐車場に止まっており、しかしそれはほぼ全てが北平を応援する人々のもの。

 駐車場では、北平高校の監督が一人で迎えていた。


「――ようこそお越しくださいました。1年ぶりですね、ええっと……」

「どうもどうも鷲田です! 一年ぶりですね? 今日はよろしくお願いします!」

「ああそうだそうだ。よろしくね、鷲田監督。去年はおたくにお邪魔したけど、今年はこっちですね」


 まるでこちらの事をあえて覚えていないような、腹の奥では喰えないようなそんな相手にも、鷲田ははきはきと明るい挨拶を笑顔で返していた。


「すでに私たちはグラウンドで練習中です。更衣室に案内するんで、そこで着替えてください」

「どうもー! 今日は楽しみましょうね!」

「あははは……で、では私はやらなくちゃいけないことがあるので先に」


 マイクロバスからぞろぞろと降り、1年生は備品なども運びつつ、用意された更衣室へと向かっていく。駒野場が異常なのは言うまでもないが、歴史ある北平高校の更衣室は、お世辞にも綺麗とはいいがたいものだった。

 間もなく、鷲田のオーダー発表の瞬間である。各自ユニフォームや、試合に臨む準備を行っている中、ふとロッカールームのドアがノックされる。鷲田かと思ってこの場の全員が見るが、やって来た相手は見覚えのない人物だった。――いや、正確には、新入生トリオだけが見覚えのない相手であったが。


「邪魔するよ。いやぁ、間違えてこっちのロッカーに忘れ物しちゃってねぇ。ごめんごめん、と」


 ずけずけと入って来た男子の上下白のユニフォームは北平高校のもの。


「お前は……」


 その男子を見た度會が、眉間にしわを寄せる。


「お、久しぶりじゃん。駒野場のキャプテンさん?」

土佐道春とさみちはる……」


 不敵に微笑む相手校のキャプテン、土佐道春その人であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ