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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
3章

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11

 決戦の日が近づく中、選ばれた選抜メンバー20名を中心としたチームと、それ以外の者に分かれての紅白戦練習が、駒野場サッカー部で行われている。

 主に連携面を見ることが多い全体紅白練習であるが、今回選ばれた1年生トリオの周囲との足並みは、お世辞にも揃っていると言いきれるものではなかった。端的に言えば、傍から見ればまだまだ試合に出すのは時期尚早であるというのが、サッカー部員ほぼ全員からの評価だ。

 それでもどうにか、しがみついて抗い、必死に食い下がる三人の新入生。

 しかしそんな新入生たちに対し、上級生たちにも誇りやプライドはある。

 ただでスタメンはおろか、ベンチの座すら譲るつもりは、選ばれた20人の中では誰にもないのだ。

 

「ぐはっ」


 激しいプレスによってボールを奪われ、芝生の上で転がる涼宮透すずみやとおる。全身に湿布を貼りつつプレイしているのだが、激しいインテンシティについていけていないようだ。


「……」


 同じピッチの上からそんな彼の背をじっと見ていた度會わたらいは、続いて鷲田わしだを見る。

 彼は二階の席から、くまなくピッチに広がる全選手をじっと観察しているようだった。

 その他、かける達樹たつきも、スタメンで頭から出せるかと言われれば、疑問符が付く内容になっている。


「ありゃまた見てらんないかもな……」


 同じポジションを守るCBの仲間に横からぼそりと言われるが、度會の表情は岩のように硬いままだ。


「目先の事に集中するんだ。舐めているとまたやられるぞ?」

「おっと、了解」


 公式戦前の最後の練習は、多くの不安要素を残したまま、終了していく。

 試合前日の夜。この日もボロボロで家に帰って来た透は、エナメルバックを玄関に落とすようにして置き、リビングへ行く。芝生の上での練習で、その気になれば洗濯も駒野場で行える。泥だらけで帰る心配が無いというのが、母親目線での屋内練習場のいいところでもある。


「……」


 日に日にボロボロになり、傷を増やして帰ってくる息子の姿をリビングでじっと見た千春ちはるは、はぁとため息をつく。


「今日もいっぱいしごかれたみたいね?」

「うん、そりゃあもう、ぐうの音も出ないほどに」


 でもお腹はぐぅと鳴る。寮のご飯も美味しいが、母親の手料理に勝ることはない。

 透はジャージ姿のまま、リビングに用意されていた夜ご飯を食べていた。


「明日、いよいよ駒野場高校の公式戦初戦なんだ」


 顔に絆創膏を貼った姿のまま、箸でご飯をつまみながら、透が言う。


「知ってるわよ。メンバー入りしたって聞いたときに、スケジュール見ちゃったもん」


 ふと、リビングに掛かっているカレンダーを見ると、明日の日曜に蛍光ペンで小さく〇が付いてあり、【試合当日】とだけ書かれていた。気づかない間に、いつの間にか書き込まれていたのだ。

 そんな母親の心持にどこかくすぐったい思いを抱きつつ、透はもぐもぐと、ご飯を食べ終える。


「ユニフォームは一回洗濯して畳んでおいたから。忘れ物はしないように、夜のうちに支度しておきなさい?」

「ありがとう」

「試合に出られるかはわからないかもだけど、ベストは尽くしなさいね?」

「うん」


 透はそして、明日に備えて早めに床につく。目を閉じて、眠りに落ち、目を開ければいよいよ試合当日だ。


「……」


 そう思うと、胸が高鳴ってしまい、中々眠れない。寝不足は何よりもの敵だというのに。

 ふと、枕もとで充電コードに接続して充電中のスマホを手に取り、SNSの連絡先に登録してある翔のアイコンまでスライドする。寝る前に彼と話せば、眠りにつけるだろうかと、何気なく考えたのだ。


「……でもよくよく考えたら、うるさくて眠れなさそうだな……」


 と言うかそもそも寝る前の電話なんて、付き合いたての彼氏彼女がやることでは……?

 そう思い至り、危うく危ない橋を渡ろうとしてしまっていた透は、まるで念仏でも唱えるようにぶつぶつと言葉にならない声を呟き、必死に眠りに落ちていくのであった。


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