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体育教師の鷲田純平の一存(?)で始まった1-Aの体育場業でのサッカーゲーム。
砂場のグラウンドに白い粉で引かれただけの簡素なフィールドが二つ。スペースも¨本物¨と比べれば半分の広さだ。
そこに男子と女子で分かれ、20人ずつの人数が割り当てられた。つまり、10対10のゲームだ。
「チームは出席番号の奇数と偶数で分かれて、偶数チームはゼッケンを着てくれ」
鷲田の指示により、クラスメイトたちは動き出す。グラウンドによく通る声であり、聞きやすくもあった。
涼宮透は、ゼッケン有りの偶数チームへと割り当てられた。
「ゼッケンない人いるー?」
クラスの中心人物的な男子から、透は「はい」と手を指し伸ばし、ゼッケンを受け取る。
黄色い蛍光色に、9と書かれた文字。ノースリーブのしゃかしゃかとした手触りのそれを手に取った瞬間、少しだけ身体が引き締まるような錯覚を感じた。
「……」
軽く息を呑んだ透は、次に息を吐き、そのゼッケンに袖を通す。一体、何年振りだろう……。
「お前リフティングうまくね?」
「ほれ、ほれ!」
さっそくサッカー経験者の一部は、まるで隣のコートにいる女子に見せつけるかのように、足元で地面にサッカーボールをつけないように何度も宙に浮かす、リフティングを行う等している。
「……」
そんな人たちをしり目に、透が自身の姿をじっと見おろしていたところ。
「あ、俺も偶数チームだった! ゼッケンゼッケン!」
思わず自分の視界に広がる、胸から下のゼッケン姿を見つめていた透の身体を押しのけ、元気はつらつなクラスメイトが飛び出してくる。
「わっ」
「あ、ごめんごめん!」
その少年はとても眩しい笑顔で、しかし申し訳なさそうに謝ってくる。どうやら、今から行うサッカーの授業をとても楽しみにしているようだった。
まだクラスメイトになってから日が浅いが、それでも知っている。彼の名前は蓮見翔。自己紹介で、サッカーが大好きと語っており、サッカー部に入ったはずのクラスメイトだ。
「へへ。体育の授業でもサッカーが出来るなんてラッキー」
翔はウキウキした様子でゼッケンを身に纏った。
「お、しかも10番じゃん!? いいのかよ俺10番!?」
10番の背番号。サッカーにおいて10番それは、エースナンバーと呼ばれるものであった。それ以外にも伝統的な意味合いを持つ、言わば特別な称号――。
「たかが体育の授業だろうに……」
「はぁ!? やるからには絶対勝つぞ! いくぞ偶数チーム!」
「めっちゃ本気じゃん……」
クラスメイトの冷ややかな声にももろともせず、翔は大きな声で拳を突き上げる。
それはなにも、女子に格好つけたいだとか、学校の成績のためなんかじゃない。
ただ純粋に、サッカーが大好きなんだろう。
「ははは」
グラウンドに小さくそよぐ風と同じほど、小さな声と表情で、透も周りにつられて笑っていた。




