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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
3章

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37/51

7

 翌日。放課後に今日もサッカー部の練習を行っている駒野場サッカー部員たち。

 案の定、涼宮透すずみやとおる蓮見翔はすみかけるは筋肉痛を発症し、今日の練習の動きは昨日に引き続きまったく動けていない状況だ。

 中学校サッカー部所属であった御子柴達樹みこしばたつきでさえ、連日のハードワークに遅れをとっており、精彩を欠いたプレーが目立っていた。

 その他、新入生の一年生たちも、三日目となる駒野場サッカー部員として、四苦八苦していた。


「こりゃあ、今年のインターハイは一年のメンバー入りはなさそうだな」

「この短時間でアピールしろってのも無理な話だけど」


 先輩のそんな声が、聞こえてくる。

 今日の練習場には、鷲田わしだ監督と神楽坂かぐらざかマネージャーの姿はない。選手たちが足を使って動き回っている中、今日の二人はミーティングに引き篭もり、頭を悩ませるのが今日のタスクであった。

 ミーティングルームの椅子に座り、鷲田はぼさぼさの髪をかきつつ、手元の資料と睨めっこをしている。


「うーむ……」

「先生」


 傍らにはどこか暇を持て余した様子の、神楽坂がいる。彼女がまるで大切な人形のように肌身離さず持ち歩いているタブレットは、今だけは鷲田の手元にあった。


「ん? どうしたの神楽坂ちゃん?」

「敢えて小言を言った方が良いでしょうか? それとも、気を利かせる差し入れでもした方がいいでしょうか?」

「敢えて小言を言いつつ気を利かせて差し入れが欲しいな」

「では」


 神楽坂はそっと、自身が糖分補給のために常備しているチョコレートの小袋を、鷲田の手元に置きつつ。


「インターハイ予選出場メンバーの選定は、今日がタイムリミットです。夕方までには高校サッカー連盟に出場選手20名を送付しなければなりません。そして、今は、夕方です」

「わ、わかってるってば……。だからこうして悩んでいるんでしょうに……」

 

 落ち着いた声音で、しかしどこか捲し立てるように神楽坂に指摘され、鷲田は苦笑しつつ答える。

 インターハイ予選に出場する選手を前もって連盟に伝えなければならないのだが、時間ギリギリまで鷲田は思案しているのであった。

 登録メンバーは全部で20人まで。ベンチ入りを含めた試合に臨むメンバーは、そこから16人と言うのが公式ルールだ。駒野場は新入生も入れて現在50人規模となっており、つまるところ約半数以上が、ベンチ入りすら許されない状況となっている。


「神楽坂ちゃんだったらどうする? メンバー?」

「私の意見では……」

「もちろんあくまで参考だよ。こういうのは色々な目線も欲しいんだ」

「データはすでに、渡しましたが」

「データじゃなくて、神楽坂ちゃんの目で見た所感ってやつさ」


 鷲田が問いかけると、神楽坂はむむむと口に手を添え、真剣に悩みだす。……それで日が暮れそうである。


「やはり順当に、2年生と3年生から入れて行くべきだと思います。1年生をいきなりメンバー入りさせるのは、リスクが大きすぎるかと」

「リスク、ねぇ……」


 鷲田はその言葉を反芻はんすうし、おもむろに立ち上がった。

 お手洗いか、と思ったが、どうやらそうではないようで。


「タブレットありがとう、ギリギリにはなって申し訳ないけど、あと10分で決める」


 どうやら最後の最後は、一人で別室に閉じこもって決めるようだ。


「わかりました。では私は、練習場に戻ります」

「ああ。あ、あとチョコレートもありがとう、これは返すよ」


 そう言って小袋に入ったチョコレートを、鷲田は神楽坂に返却した。


「え、食べていいですよ」

「いやいや。いいかい神楽坂ちゃん? 女の子が男にチョコレートを渡すのは、大事なイベントの時にするってのが鉄則だ」

「? どういう意味でしょう?」

「……い、いつかわかるさ。いつか神楽坂ちゃんが良いって思った男の子に、チョコレートは渡してあげな」

「? よくわかりませんけれど、わかりました」


 察しがつかない神楽坂に苦笑しながら、鷲田は鍵付きの個室である監督室に籠っていくのであった。


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