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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
3章

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35/48

5

 簡易ミーティングが終わり、夕暮れ。部活動も終了の時間となり、帰宅時間となった。

 グラウンドの後片付けをし、シャワーを浴びたり、洗濯物をしたり、寮の食堂で軽く食事をするチームメンバーもいるが、初日のハードな練習を終えた一年生はみんな、一番に帰宅したい者が多いようだ。


「それじゃあ、蓮見はすみは預かる。ほら確りしろ」

「うぅ……悪い、神子柴みこしば……」


 帰り道が同じ方面の御子柴達樹みこしばたつきは、初日の練習でだいぶ消耗した様子の蓮見翔はすみかけるの面倒を見てくれるようだ。


「ありがとう、神子柴。蓮見も、気を付けて帰るんだぞ」


 帰り際のロッカールームで、涼宮透すずみやとおるは二人を見送る。


「おう。つっても、正直俺も今日はかなり疲れた……。こんな練習を毎日やってんのは、さすがだな」


 達樹も疲労感を露わに、あくびをこらえているようだった。


「涼宮もミーティングの時は悪かった……。俺、もっと体力つけねーとな……」

 

 翔が申し訳なさそうに頭を下げてくるが、透は首を横に振る。


「仕方がないし、俺も久しぶりにあんなに練習したから、足がパンパンだ。帰ったら冷やさないとな」


 冗談ではなく、かなり痛みを感じる。感覚でわかるが、明日は全身筋肉痛コースだろう。


「じゃあな、涼宮。明日も頑張ろうぜ!」

「しっかりケアするんだぞ、涼宮」

「うん、また明日」


 翔と達樹を見送り、透も帰り支度をする。

 ロッカールームはもうほとんど人はおらず、今はもう透が一人だけだ。

 そこへ、食堂で軽食を食べてきたと思わしき二人組の、二年生の先輩が帰ってくる。

 ロッカールームは個人個人のものがあてがわれており、一応仕切りこそあるが、全学年共通で使うことになっている。

 やって来た二人組の先輩は、まだ透がいることに気が付いていないようだ。……そんなに存在感が希薄なのだろうか。

 まあ、今のところ話すこともないし、こちらも痛みと疲労で疲れている。後片付けをし、荷物を鞄にしまって、帰ろうとしゃがんでいたところ、先輩たちの話声が聞こえてくる。


「――つかさ、マジで県大会出場とか目指してんのかな、度會先輩」


 ぴく、と透の手が止まる。


「いやいや勘弁してほしーよな……。俺たちは別に、サッカー適当にやりてぇから駒野場ここにいるのに」

「なー」


 二人の先輩は、度會たちの愚痴をこぼしあっているようだ。


「俺たちが県大会出場できるわけねーのにな」

「つか本気で上目指すんなら、もっと強い高校行ってるし」

「――おい、タオル落としてるぞ」


 そこへなんと、二人の先輩にとってタイミングの悪いことか、最後まで残っていた度會が部屋に入って来た。

 びっくり仰天し、驚いて声音が妙に高くなった二人の先輩が、「あ、あざす……!」と言って度會からタオルを受け取り、クモの糸を散らすようにロッカールームから出て行った。


「……まったく」


 度會はやれやれと、その場で肩をすくめてから、自分の個人ロッカーまで向かおうとした、が。


「む……?」

「……あ、お疲れ様です」

「お、お疲れ……い、いたのか。すまん気が付かなかった」


 ……どうやら度會にも認知されていなかったようだ。

 ようやく目と目が合い、度會は申し訳なさそうに言って来た。


「よく、言われます」


 内心でしょんぼりしつつも、透はすぐに立ち上がった。


「一人か?」

「はい」

「そうか。もう帰るのか?」

「はい」

「初日の練習で疲れただろう。気を付けて帰るんだぞ」

「はい」

「……」

「……」


 ロッカーの向こう側で、度會が着替えする布が擦れる音だけが聞こえてくる。

 ……き、気まずい。二人組の先輩のあんな会話を聞いた直後で、タイミングが最悪すぎる。

 息を軽く吸った透は、そっと口を開いた。


「……俺は、駒野場高校でてっぺん取りたいです」

「……っ。てっぺん……?」


 一瞬だけ間を置いた後、度會が訝し気に向こうから聞き返してくる。

 透は慌てて、なぜか見えていないのに、ぴしっとその場で気を付けをしていた。


「あ、いや、友達の口癖で……」

「ははは。変な奴だな」


 ……今のはどっちの事だろう……? その友達か、俺の事だろうか……?

 などと、自分から声を掛けておきながら、堂々巡りになりかける透はますます内心で慌てていたが、度會の口調は穏やかそのものだった。


「駅まで歩きか?」

「あ、はい。駒野場駅で、電車です」

「そうか。俺もなんだ。せっかくだし、一緒に帰らないか? 別に命令じゃないし、無理やりじゃないけど」

「い、いえ。とんでもありません」

 

 度會からの誘いに、透はこくりと頷いていた。

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