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神楽坂から支給された練習着を早速、一年生たちは開封し、それぞれ着用する。
新品特有のやや鼻を突く真新しいポリエステル繊維の臭いは、きっとすぐに薄れていき、黒くて目立たないが、すぐに汚れや汗も染み着くことになるのだろう。手触りも完璧で、本当に持っているのかと疑うぐらいの軽量感で身体にフィットし、通気性も胸元を触る風が心地よいくらい風通しがよく、問題がなかった。
サイズも神楽坂が一人一人選定したと言っていたが、間違いなく、ジャストサイズそのものであった。
「おお……すげぇ……かっけー……!」
個人ロッカーに併設されている鏡で、練習着を着た自分の姿を反射させ、蓮見翔はまるで変身ベルトを与えられた子供のように喜び、何回も何回も自分の姿を見つめている。
「……っ。……っふ」
御子柴達樹も、周囲に気付かれないように、隠れてこそこそ、自撮りをしている。……すぐ隣のロッカーの涼宮透にはバレバレであるが、そこは敢えて言わないと言うのが、男子高校生のマナーと言うものだ。
しかし時に、現実とは得てして非情なモノである。
「……あ」
「え……」
気づけば、向かいの鏡越しに、翔と目と目が合ってしまう達樹。彼の手元には、鏡の反射で映った、自撮りの痕跡が。
よりにもよって一番気づかれたくない相手に気付かれたのと同時に、しかし翔は何かを悟ったように、無言でうんうんと頷いている。
まさか、と達樹は心臓を鳴らす。
(!? 今回ばかりは、お前に感謝するぜ……蓮見……。そうだよな、お前だって、俺の気持ちが分かるよな……!)
うんうんと、鏡越しに達樹が、心の友よ!と感涙に咽び泣く思いで笑顔を見せていたが。
ああ、わかるぜ、と翔がうんと頷いてから、
「御子柴ってちょっとナルシスト入ってるよな!」
「よーしてめぇだけはぶっ殺す!」
「なんでだよ!?」
総勢20名の前で敢え無く告発され、達樹は殺意を宿して翔に食いかかっていた。
「ちょっ、やめてぇーっ! ひん剥かないで、御子柴のえっちー!」
「うるせぇ! てめぇだけは絶対ぇに許さねぇからなー!」
(……後でお母さんに送ってあげようかな。練習着姿の写真)
一方で透も、そっと周囲にばれないように自撮りを一枚取り、サッカーをやることを許可してくれた母親の千春にメールを送っているのだった。
練習着に着替え終えた一年生たちは、練習場へと向かっていく。昨日使用した屋内練習場はメンテナンスを行っており、今日は屋外のグラウンドでの練習であった。
「――よお一年。練習着姿、似合っているぞ」
グラウンドに立つ緊張の面持ちを見せる一年生たちを迎えたのは、昨日激闘を繰り広げ、今日から正式に同じ仲間として戦うことになる三年生の先輩であり、駒野場高校サッカー部キャプテンの度會恭介だった。
上級生たちはすでに全員グラウンドにおり、各々軽めのストレッチなどのウォーミングアップを開始している。鷲田もおり、選手たちに細かく気を配って時より声をかけ、コンディション面も含めてじっくり観察しているようだった。
「早速だが、今日から合同練習だ。わかっているとは思うが、駒野場は実力主義だ。いい動きやプレイをすれば一年生だろうがレギュラーを狙えるし、逆に俺たちはいつだってベンチ降格の危険もある。だからこそ、俺たちも毎日の練習を必死にやる。お前たちも頑張ってついてきてくれ、一年」
「「「はい!」」」
昨日の敵は今日の友、とは良い言葉だ。
早速、学年関係ない初日の合同練習が開始された。




