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夕日が差し込む、駒野場高校の帰り道。春の桜の花が舞い散る道路沿いに立つ、放課後の駒野場高校生行きつけのハンバーガーショップに、蓮見翔と御子柴達樹の自転車は停まっていた。
夕日が差し込む窓際の二階の席に、涼宮透と蓮見翔と御子柴達樹は座り、試合後の打ち上げのようなものを開催していた。二人とも帰り道は逆だったが、自転車と言うこともあり、ここにしたのだ。ちなみに発端は翔である。
「俺、追加でハンバーガーとホットドッグとテリヤキバーガーとポテトで!」
「いやいや頼みすぎだろ、お前……。どんだけ食うんだよ……」
「いーじゃん腹減ったし!」
QRコードを読み取らせて注文する最中、物凄い量であり、翔は達樹に窘められる。
「俺、こういう所でみんなとハンバーガー食べるの夢だったんだよなー!」
「低っ! お前の夢のハードル低っ!」
「てっぺん取るって夢はどこに行ったんだ……」
向かいの席で、すでに注文通り届いたフィッシュバーガーをもぐもぐと食べながら、透は呟く。
「あ、もちろん最終的な夢はサッカーでてっぺん取るって事だけど!」
「てっぺんねぇ。プロサッカー選手にでもなるつもりか?」
「そうだな。そのためにはまずは大会優勝だよな!?」
翔が目を輝かせて、隣に座る達樹と、向かいに座る透に向けて言う。
「大会って言っても、いろいろあるだろ……」
「ワールドカップとか?」
「そりゃもうプロ入ってるんだよ……」
ポテトをつまみながら達樹がやれやれと言う。
「そう言えば鷲田先生が言ってたけど、地区大会予選トーナメントって?」
「はぁ……そこから説明しないとダメなのか……?」
達樹が頭痛を感じる仕草をしながら、ため息をこぼす。
しかしなんだかんだ教えてあげようとしている姿は、面倒見の良さが如実に出ている。
「インターハイって聞いたことねぇか? 春にやるのはそれの予選だ。俺たち駒野場は新設の高校だし実績もないから、そこの予選トーナメントを勝ち上がらなくちゃならねぇ」
「俺たちはたぶん、埼玉北ブロックだな」
透がそっと付け足す。
「だな。そこで勝ち上がったチームが、今度は県代表を賭けたトーナメントに進む。そしてそこでも勝ち上がった上位校が、ようやく全国トーナメントに出場できるんだ」
「お、おおう……」
ナゲットのソースを口の端につけながらもぐもぐと、翔は頭上を見つめ上げる仕草を見せる。
「本当にわかってるのか、お前……」
「まあつまり、全戦全勝すりゃあいいんだろ?」
「うん、そういう事」
達樹が突っ込む前に、透がそう言い切る。
ここ数日で翔の扱い方と彼の言いそうなことが、もうわかり始めている。
一方で、絶句しているのは達樹の方である。
「それでいいのか……?」
「安心しろ。このエースストライカー蓮見翔様がいる限り、駒野場高校の優勝は決まったようなもんだぜ。なんたって二戦連続得点記録保持者だからな!」
「うん、凄いぞ蓮見。この調子で行こう」
もぐもぐと透がよいしょすれば、翔は照れくさそうに顔を赤くしながらだが、えっへんと胸を張っていた。
「……こいつら、揃って、馬鹿か……」
達樹は手に持っていたポテトをぽろっと落とし、今更つるむ相手を間違えたと自覚するとともに、時すでに遅しであることも自覚する。
「まあ実際。俺たち三人が力合わせれば、なんたって出来そうな気がするんだ。なんか……エモいな」
「急にしんみりするな気持ちわりぃ!」
「三国志でこういうのあったなそう言えば。俺たちは今日から義兄弟ってやつだな」
いたって真剣な表情の透が紙コップに入ったドリンクを掲げる。
「おい、マジか、お前」
「お、乾杯か? やろうぜ、乾杯!」
戦慄する達樹に、翔がノリノリで紙コップを掲げだす。
「ところで義兄弟ってなんだ?」
「同じ穴のムジナってやつだ」
「言い方ァ! せめて出来ればもっと良い言い方してくれないかな!?」
そして三人は紙コップを掲げるのであった。これが俗に言う、桃園の誓い、ではなく、バーガーショップのムジナの誓い、である。
……約一名、納得していない様子の者がいた気がするが、気にしないことにする。あともう一名、いまいちよく分かってない様子の者もいた気がするが、そこも気にしないことにする。
2章 完




