15
紅白戦が終わった直後、新入生サイドのベンチは、死屍累々と言う言葉が相応しい有様だった。お互いに礼をきちんとした後、もう立っていることが不可能となった面々が、芝生の上に次々と倒れ込む。
そこには最早格好つけも見てくれも関係ない。己の限界を越えた形容しきれぬ人間が、集団で屯っているのである。
「つ、疲れた……死ぬぅ……ウチ、もうマジむりぃ……」
「あしが、あしが、攣った……!」
言語能力を失ってメンヘラ化した御子柴達樹と、右足をピーンと伸ばす蓮見翔。
その他、力を使い果たした新入生たちに混じり、涼宮透も差し出された備品のアクエリアスをちゅーちゅー吸っていた。
(おいしい……生き返る……)
首からタオルを下げ、風呂上がりのおっさんのように、透は至福の時を過ごしていた。
「――みんなお疲れー。いやーいい試合だったよ」
拍手をしながら、監督の鷲田が労いの言葉をかけてくる。
「寮のシャワーとか自由に使っていいからね。汗臭いまま帰るの嫌でしょう?」
一方で、と鷲田は眼鏡を光らせ、駒野場高校サッカー部の2,3年生たちを見る。
彼らは疲れこそあるが、全員立ったままで、情緒不安定にはなってはいないが。
「きーみたーち? 情けない1失点だねぇ。油断してたんじゃないのー?」
「ぐ……」
度會が前に立ち、痛恨の極みと言うような表情を浮かべ、気を付けの姿勢をしていた。
「再来週から始まる地区大会予選トーナメント。そこまでに修正! 各々反省点も纏めるように。明日からまた練習頑張るよー」
「「「うっす……」」」
先輩方はそろって返事をしていた。
さぁて、と鷲田は振り向き、今一度新入生たちを一人一人見渡していく。
「改めて入部してくれてありがとう、そしてこれからよろしく、一年生諸君。今日のゲームはもちろんだけど、大事なのはこれからだからね。君たちがこの駒野場高校のサッカー部員として、新しい歴史の一ページを刻んでいくのと同時に、人間としても強く成長してくれるのを期待するよ」
「「「……」」」
人間としての尊厳を失いかけていた新入生一同も、今一度気を引き締める。
「そして君たちが将来――例えばプロサッカー選手にでもなってくれた時は改めて……」
鷲田は唇を噛み締め、どこか、湿っぽい雰囲気で、かつ神妙な面持ちで、語り掛けてくる。
「俺を紹介してくれ。俺の功績だって宣伝してくれ。凄腕監督としてテレビとか雑誌の取材受けて、いっぱいギャラ貰いたい。マジで頼む」
「「「いい話だと思ったら極めて不健全だった!」」」
この突っ込みは……今日一番、新入生チームが団結した瞬間だった気がする。




