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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
2章

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13 新入生チーム 1:3 駒野場高校

 鮮やかな連携プレイと、卓越した個人技。時間にして僅か数分、いや、数十秒の出来事だった。

 新入生チームが得点をした。

 もちろん、駒野場こまのばに慢心はあっただろう。相手は中学生から進学したてで、ましてや戦術も決めていない急ごしらえのチームだ。いくらキャプテンの度會わたらいが真剣にやれと声を掛けていたところで、そこの根深い問題を突かれるのは致し方ないし、鷲田わしだもそこは致し方ないのだろうと思っていた。

 しかしまさか、そこではなく、戦術と技量で凌駕をしてくるとは。


「へぇ……」


 一点を返し、喜び合う新入生イレブンを眺め、二階席から鷲田が呟く。

 彼らはようやく一点を返しただけだと言うが、まるで優勝したかのように喜んでおり、まあその気持ちは分からなくもない。

 対照的なのは、得点を許した駒野場イレブンの面々。表面上は気にしていない素振りと余裕を見せつけていたはずが、明らかな動揺を浮かべている節を、鷲田は見て取っていた。


蓮見翔はすみかけるくん……。あの跳躍力とスピードは、いったい……」


 隣ではマネージャーの神楽坂舞かぐらざかまいが、まるで研究対象を見つけたマッドサイエンティストかのように、未知の生物との遭遇したかのように、データを調べなおしている。


「……あれで、部活動所属していなかった……?」

「その前のプレイ。クロスを上げた涼宮透すずみやとおるくん」

安藤あんどう君の股抜きですか? あれは偶然では?」

「いいや。その更に前だ。彼が入ってから、明らかに新入生くんたちの動きがよくなっている。まるでばらばらだった軍隊が、一気に知性を宿して、整列したかのようだ。もちろん、個人技も目を見張るものがあったけど」

「……悔しくないのですか? 二年間ずっと苦楽を共にして作り上げたチームが、軽々と一点を返されて」


 神楽坂からの問いに、鷲田はほくそ笑む。


「もちろん、愛着はあるし悔しいさ。でもそれより大切なのは、チームとして育って成長して、強くなってくれること」

 

 鷲田はやはり嬉し楽しそうに、「俺もまだまだって事さ」と言う。

 たかが一点、しかしされど一点。サッカーと言う競技において一点とは、大小ある様々な持つスポーツと比べて、とても大きな意味を持つ分類のスポーツの一つだ。ましてやピッチに立つ11人や、ベンチメンバー。中にはベンチに入れなかった者や、それを含めた観衆と、競技人口。それらを加味して、全員がその一点を死に物狂いで欲し、また奪われまいと必死に守る。

 その一点と言う重みを何よりも、鷲田は知っていた。


「ここからどうなるのでしょうか、この試合展開は……」

「ワクワクするかい、神楽坂ちゃん?」


 神楽坂はタブレットをぎゅっと力強く握り、こくりと頷く。


「はい、とても。興味深いです」


 ――そして、一見サッカーとは無縁そうな彼女もまた、この競技に魅了されてこの世界に足を踏み入れた少女だ。


「ふふ。でも残念。どうやら、¨タイムアップ¨だ」

「? タイムアップ? まだロスタイムも含めて10分はあると思いますが」

「いいや。決着はもうついているようなものさ」


 鷲田はそう言って、メンバーの入れ替えを行う新入生チームと、急遽円を作って話し合っている駒野場チームを交互に見ていた。下がっていく新入生チームは、前半から大車輪の働きを見せていた御子柴達樹みこしばたつきと、最後まで全力疾走をし、一点をもたらした蓮見翔の二人。

 そして駒野場サイドは、度會と三國が口元を隠すようにしながら、何やら言い合っている。さながらそれは――本番のような真剣さで。

 いいじゃないかいいじゃないか、と鷲田は、内心でにこやかであった。


「我が校のロスタイム計測システムは極めて正確無比です。もし残り時間に差異があるのなら、大至急修正しないといけませんね……」

「いや、あのね神楽坂ちゃん……そう言う意味じゃないのよ……」


 そっちじゃないそっちじゃないと、あごに手を添えてぶつぶつと思案する神楽坂に、鷲田はこてんと椅子からひっくり返りそうになっていたが。

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