11 新入生チーム 0:3 駒野場高校
紅白戦の後半戦の20分間が始まる直前。体操着にゼッケン姿の新入生チームと、黒い練習着の駒野場高校チームは、円陣を組んで最後の集団ミーティングを行う。
駒野場高校側も、本番の試合さながら(一応監督の目もあるので)円陣を組んでミーティングを行っていたところだ。
やはりその中心にいるのが、タブレットを片手に持つ度會恭介だ。
「三國。ナイスプレイだった。後半もいけそうか?」
「ああ、任せて」
「よし。全員油断するな。相手が後輩だからと手は抜くなよ」
「そうは言ってもなぁ……。あんまり本気でやっても、後輩がびびっちまいますよ?」
チームメンバーが笑いかけてくる。
しかし度會は、険しい顔つきのまま、首を横に振る。
「この程度でびびってるようじゃ、県大会出場すら夢のまた夢だぞ? 俺たちの目標を忘れたのか?」
「いや、だからこんな試合で熱くなって怪我でもしちゃ……」
「……」
やる気半分、流し半分といった面々が多いこの状況に、度會は小さくため息をついていた。
後半開始――。
新入生チームはまだまだ顔を覚えられていない者が多いが、御子柴達樹と言うCFの一年は目立っており、覚えた。あとは……さっきから変なポジションに立っている、蓮見翔とか言う少年も。
後半戦開始のホイッスルのアナウンスが流れ、ボールはこちら側から。
CBの位置で戦局を見守るように立っていた度會の元へ、前線からバックパスが行われる。
今度は翔の予想以上のスピードに戸惑うことはなく、しっかりと警戒をしつつ、そのパスを受け止めた度會は、ボールをコントロールしつつ、出しどころを探す。
(三國は)
個人技に秀でた彼の姿を探し、首尾よく見つけるが、彼はアイコンタクトでノーのサインを出している。
(なんだ……? マークされているのか……?)
度會は首を傾げつつ、彼とは別のMFにボールをパスする。
ボールを受け取ったMFは、反転し前進するが、その前に相手が立ちふさがった。
涼宮透だ。
「……っ」
「!」
強引に突破を行おうとドリブルを行おうとするが、透は彼の一手先を行くように進んでおり、気味の悪い感触で、じりじりと下がりかける。
「っち」
思わず舌打ちをしつつ、MFはサイドを駆け上がって来た味方にパスを渡す。
しかしサイドでパスを受けた味方もまた、相手のDFが二人していく手を阻んできて、行く道をなくし、たまらずバックパスを行った。
(単純突破が出来なくなったか……。この短時間で、ディフェンスラインを整えたのか……? ……まさかな)
その様子を自陣から見守っていた度會は、まさか自分のところまでボールが戻ってくるとは思わず、慌てて受け止める。
再度三國の方を見るが、彼はまたしても目を横に振り、芳しくない状況を伝えてきていた。
「この!」
そこへ向かってくるのは、翔であった。前半の頭から全力疾走と言わんばかりの彼であったが、後半もなんのそのと言った脚力であった。
だが技術はない。度會は冷静にGKまでパスを送り、GKは前線までボールを蹴りこむ。
しかし――リズムが変わった。漠然と、そんな気がした。
相変わらず圧倒的にこちらがポゼッションを握っている。得点差も3-0と大幅リードしている。こちらには余裕があるはずだが、前半とは勝手が違う。
「……」
その時、なにか背筋が冷めるような奇妙な感覚を味わい、度會は生唾を呑む。
相手陣地に目線を向ければ、誰かと目が合ったような気がして、そんな視線に、まるですべてを見透かされているような、奇妙な感覚であった。




