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早速、新入生チームはゼッケンを纏い、即席のミーティングを始める。
まず20人いる中で、当然スターティングメンバーとベンチメンバーに分かれなければならない。
当然、必然的に出場時間が長くなりそうなスターティングメンバーに名乗りを上げる面々が多い中。
「キャプテン、やりたい奴いるか?」
他クラスの新入生が聞いてくる。
サッカーにおけるキャプテン。司令塔の役割も担い、何より勝利も、敗北も、その責任を真っ先に担う重要な存在。初めての顔合わせという事もあり、何より相手は圧倒的な経験の差がある先輩クラスだ。これが1年目からレギュラーを狙うようないわゆる強豪校にいるべき獰猛な野心ある一年生が集う場所ならすぐに埋まるポジションではあるが、名もなき新設校である駒野場はそんな場所ではない。
はっきり言えば、半場お遊びで入ってきているような人だっているのだ。
曰く、この場で進んでやりたがる人はいない、かに思われたが。
「――なら、俺がやる」
「あんたは?」
「御子柴達樹。1-Aだ」
「じゃああんたで」
達樹が左腕にキャプテンマークを巻く。そういえばレフティーであったと、今思い出す透であった。
それ以降、新入生チームは御子柴達樹を中心に、戦術を決めていく。みんな体操着の上にゼッケン姿なので、格好こそはつかないが。
「それじゃあ次に。中学時代のポジションとか、教えてくれるか?」
中学時代に担当していたポジション順に、順当にメンバーが割り当てられていく。
「えっと。蓮見は?」
「俺? 中学は帰宅部だった」
「……」
達樹が顔を引きつらせる。心情を読み取るのであれば「俺はこんな奴に得点を許したのか……っ!?」とでも言いたげだ。(実際に言っていたのかもしれない)
「へいへい、御子柴くんよ~? まさか、体育の授業で得点を決めたこの俺を、ベンチスタートさせるわけないよなぁ~?」
このこの~と、達樹の胸元を小突きながら、にやにや顔の翔が言っている。
ぴくぴくっと、今度は擬音すら聞こえてきそうなほど顔を引きつらせる達樹であった。
「じゃあ、逆に俺はベンチスタートで」
涼宮透は自分からベンチスタートを選択していた。
「ええ、正気か!? 絶対お前もスターティングメンバーの方が良いって!」
翔が懇願するように言ってくるが、透は遠慮していた。
「い、いや。後半にでも出れればいいよ」
「そ、そんなぁ。……じゃあ、俺もベンチでいいかなぁ」
「さっきまでの威勢はどうしたんだよ……」
とたん、しゅんとなる翔に、透は苦笑する。
「俺に気にせず、前半からフルスロットルでアピールしてくれ、翔。お前がてっぺんを目指すのに、ベンチスタートじゃダメだろう」
透がそう言えば、翔は「確かに!」と再びやる気に満ち溢れる。
また、透や翔の他にも、中学時代にサッカー部ではない所謂ノリと勢いでサッカー部に入部したものも少なくなく、逆に達樹のように中学時代にサッカー部にいた方が少ないという有様が、実際のところであった。
(まあ本気でてっぺんを目指す奴はみんな、強豪校や少なくとも中堅以上に行くもんな……)
透は内心で呟く。……翔は該当しないのだが。
「準備OKか、1年?」
相手チーム――駒野場チームのキャプテン、度會恭介が声を掛けてくる。上下黒の専用練習着はとてもスタイリッシュに見え、背中にはそれぞれの背番号があしらわれている。
「はい。お待たせしました、度會先輩」
達樹がそう返事をし、後方に控えるスターティングメンバーたちに目配せをする。
ベンチスタートとなった透は、静かにテクニカルエリア後方のベンチに座った。
「じゃあさっきも言った通り。こっちにも面子はあるんでな。手加減なしで行かせていただく」
度會がそう言えば、達樹は負けじと自信を宿した口調で言い返す。
「望むところです、先輩」
(体育の授業でも感じたけど、似合ってるな、御子柴)
どこか頼りになる彼の背を見つめてから、透はピッチに広がっている両チームの選手たちを一人一人、じっくり観察し始めたのだ。




