29 駒野場高校 1:2 陽光白崎高校
後半戦開始。
キックオフは駒野場の御子柴達樹のバックパスから。そのパスを受け取った三國が、達樹に目線で指示を送る。
――走れ! と。
それをアイコンタクトで受け取った達樹は、神宮司の横を駆け抜けて走っていく。
三國に襲い掛かるのが、統率された動きを見せる陽光白崎のMF陣。当然、三國は要注意人物として前半から激しいマークにあっていたが、今の駒野場はもう彼だけではない。
「三國先輩!」
三國よりはやや前線寄りにつく透がパスの受け手となる動きを見せ、三國はそこにパスを通す。
「涼宮!」
三國からパスを受け取った透は、前を向く。
ゴールポストは遥か彼方、まだ向こう。とてもまだ、届く距離ではない。
そんな透に向けて迫るのが、相手のCF、神宮司奏多だ。
(涼宮……。ショッピングモールで会った、御子柴の友人か……)
透は前を見据え、迷いなくドリブルを行い、正面からぶつかり合うようにして来るようだ。
(答えはフィールドの上で教える、か。教えてくれよ、君の答えとやらを……)
神宮司は透の足元で蹴られるボールをじっと見つめてから、スライディング気味のタックルで、真正面から透のボールを攫おうとする。芝が削れ、歓声が轟く。
「なに……?」
「……っ!」
透は神宮司のスライディングを宙に浮かしたボールで躱すと、再加速。サイドを駆け上がって来た遥人にパスを出した。
透からパスを受け取った遥人は、反対側の前線を駆け上がる蓮見翔をじっと見つめると、彼に向けて高精度の反対側へのロングクロスボールを送る。
「蓮見くんっ!」
「おう! 聞こえてるし見えてるぜ!」
ウイングとして翼のように横に張っていた翔は、遥人からのクロスボールを受け取り、中央を睨む。
「蓮見!」
達樹が手を上げながら走り込んでおり、翔はそこをめがけてピンポイントでのパス――ではなく、打てるもんなら打ってみやがれ、と言わんばかりの、シュートにも似たパワーパスを繰り出した。
「お前なら打てるだろ、御子柴ーっ!」
「くそがっ! オラぁっ!」
陽光白崎のDFがおおよそ反応できない速度でゴール前を横切ったボールに、達樹が足を伸ばしてタッチ、ボールの軌道が相手GKの目の前で変化した。
「させるか!」
しかし、相手GKの海藤は並外れた反射神経を見せ、今度は完璧に踏み込むタイミングを調整。達樹のタッチで軌道が変わり、ゴールコースに入ったボールに飛びつき、キャッチして防いで見せる。
「くそっ!」
達樹は本気で悔しそうに、手を叩いて天を見上げる。
「おうおう!? 俺がシュートした方がまだ入るんじゃねーの!?」
コーナーフラッグをつかんで立つ翔に、達樹は大声で返す。
「ほざいてろ馬鹿が! 次も俺が決める!」
「馬鹿って言った方が馬鹿だバーカ!」
「うっさいわボケ!」
ほとんど口げんかのようなやり取りに、海藤は一瞬あっけにとられかけるが、すぐに前線に向かってパントキックを行う。狙いはやはり、前線にいる神宮司だ。




