24 駒野場高校 1:1 陽光白崎高校
前半のうちに同点になり、ゲームは振り出しに戻った。いや、0-0ではなく1-1の振り出しというのは、追いつかれた側に大きな影を落とすものだ。点を取り、勝っていたはずが同点に追いつかれる。それは優位性と言う心の余裕を失うには十分なほどであり、逆に負けている状況から追いついた側は、自分たちの自信へと大きく繋がるものだ。すなわち、スコアは振り出しに戻ったかもしれないが、そのチーム情勢は大きく異なっている。
「くそ……っ」
あごから垂らす汗が足元のサッカーボールに落ちては弾ける、追いつかれた側の御子柴達樹と。
「……」
涼しい顔で配置につき、対面する達樹をじっと見る、追いついた側の神宮司奏多。
主審のホイッスルで試合は再開し、達樹は後方にバックパスを出してから、神宮司の横をマークするように背後に立つ。
神宮司は敢えて進まず、代わりに味方MFがボールを奪いに行くのを待っているようだった。
「ずっと謎だったんだ、御子柴」
「……」
「そんなに勝ちたいなら、駒野場じゃなくて、陽光白崎に来ればよかったんじゃないのか?」
味方から受け取ったボールを足元に収め、達樹は神宮司に背を向けつつ、ボールをキープする。
「そんなにサッカーに熱く夢中になって、そうまで勝ちたいなら、来ればよかったんだ、お前も陽光白崎に」
「違う!」
達樹は前を向き、強引に神宮司を突破しようと試みる。
「じゃあなんだ? 負けるためにやるのか? それとも、楽しむためにやってるなんて言わないよな?」
「それも違う!」
達樹のドリブル突破は失敗に終わり、神宮司にボールを奪われる。
達樹は態勢を崩し、前に転がるようにして倒れてしまった。審判によりホイッスルが吹かれ、神宮司のファールとして、駒野場のフリーキックになる。
達樹はすぐに立ち上がり、クイックリスタートを行い、味方にパスをしようとするが、それは審判によって注意され、不発に終わった。完全に焦りが見られる中、ボールが戻される間も、神宮司は達樹に声を掛けていた。
「昔から自己中だな、お前は。中学の時から変わってない」
達樹の叫びは、神宮司によって冷徹に、返される。
「自己中だと……!?」
「勝ちたいならなんで俺から逃げた? 俺とレギュラー争いして勝てないから、陽光白崎に来なかったんだろ? 弱小校ならレギュラー掴んで試合出られるからな」
「なんだと……今なんて言いやがった……!」
「俺に勝ちたいっていうのなら、同じ高校で勝てばよかったんだ。結局お前は中学の時に俺に勝てなくて、逃げたんだろ。それがこの様だ。弱小校でレギュラーを勝ち取って、良い気になったな、御子柴」
「んだとてめぇ!」
ピピピッ! と、言い合う二人を見て主審が止めに入る。
観客たちは達樹に対して、ブーイングを送っていた。傍から見ても、神宮司の才に嫉妬した哀れな弱小校のFWにしか、今の達樹は見られていなかったのだ。
「神宮司!?」
「御子柴! どうした!?」
度會と海藤、両校のキャプテンも出てきて仲裁に入り、その場はどうにかカード無しで収まっていたが。
「御子柴……」
ベンチからその様子を見守っていた透が、拳をぎゅっと握りしめる。




