21 駒野場高校 1:0 陽光白崎高校
達樹が放ったシュートが相手DFの足に当たり、相手GKが反応できないままボールはゴールネットを揺らし、まさかの駒野場高校が1点をリードすることとなった。
これにはピッチに立つ選手はもちろんの事、ベンチメンバーも大歓声を上げる。
「ナイス御子柴! やっぱすげーなアイツは!」
「はい! DFに当たって軌道がずれて、相手GKも反応できていませんでしたね!」
翔と遥人が拳を突き出し、喜び合う。
「三國先輩のサイドの突破もさすがだった」
透も達樹へパスを供給した三國の突破力を見て、感嘆していた。
ゴールを決めた達樹はガッツポーズをしながら観客たちにセレブレーションを行い、集まって来た駒野場イレブンに囲まれ、歓喜の輪の中にいた。
一方で相手ベンチの動きは早い。陽光白崎の監督がテクニカルエリアまで出て、選手を励ましている。
「海藤! 今のはノーチャンスだ! 気にするな!」
「はい!」
陽光白崎の観客たちも、先制されたにも関わらず、力強く、むしろ失点前よりさらに大きな声援を送り始める。
その雰囲気も含め、ゲーム内容も、北平の初戦とは全く違ったものだ。
「やりましたね、私たちが前半で先制です」
神楽坂も別の意味で熱が上がりそうな熱気を宿し、鷲田を見る。
「うん、いいプレイだった」
鷲田も表情こそ綻ばせているものの、どこか落ち着いていない様子で、腕を組んでぬか喜びまではしていないようだ。
「正直、この展開は予想していなかったんだよな……」
喜び、口角こそ上げているものの、鷲田がそう呟いたのをベンチメンバーは聞いていた。
ピッチでは得点を決めてセレブレーションを行っていた駒野場イレブンが自陣に戻っていく最中だ。その途中、ボールをセンターサークル上に設置する神宮司奏多と御子柴達樹はすれ違った。
「ナイスゴールだ、御子柴」
「相手のゴールを祝うなんて、ずいぶんと余裕そうだな?」
「余裕なんかないさ。けど――」
神宮司はそして、足元にあるボールをじっと見つめる。負けていてもなお声援を送ってくれるサポーター。そして背後の仲間たちは声を張り上げて、逆転を狙うと信じている。ベンチや、選ばれなかったメンバーだっている。彼らの声や存在を、御子柴達樹と言う同じ部活の仲間だった少年のゴールを期に、神宮寺は背後に強く感じ始めていた。
「なんか、もやもやするんだ」
「なんだ、それ……」
汗をかく達樹が首を傾げるが、その答えはすぐに、身をもって味わうことになるのだ。
テクニカルエリアからベンチに戻りつつ、陽光白崎の監督が喜びあうピッチ上の駒野場イレブンと、気合を入れ直す陽光白崎イレブンを交互に見つめ、呟く。
「彼らに見せてやれ、強者のサッカーと言うものを」
その鋭い視線の先には、この決勝戦の熱にほだされつつある、エースストライカーの姿があった。




