20 駒野場高校 0:0 陽光白崎高校
開始早々、陽光白崎の個の力と連携をまざまざと見せつけられ、あっという間にゴールの危機を迎え、どうにかコーナーキックへと流したプレイを見て、駒野場ベンチはふぅと息をつく。
「こほっ、こほ……っ。危なかったですね……」
体調不良の神楽坂が咳込みながら言う。
「神宮司君だけを警戒していても、周りの選手にやられかねない。さすがは県大会出場校だ」
鷲田も思わしくなさそうに、眉間にしわを寄せていた。
「でも、俺たちだってここまで勝ち抜いてきた実力はあるはずだ。今は選手たちを信じよう」
鷲田の言葉に、神楽坂も頷いていた。
陽光白崎のコーナーキックは、度會を中心とした駒野場DFによって防がれ、今度は駒野場がマイボールとする。
「三國!」
度會はすぐに、駒野場の攻撃の要である三國へとボールをパス。
中盤でボールを受け取った三國は、MF陣にパスをし、再度受け取ると言うワンツーを行い、相手を1人躱す。
「三國先輩っ!」
「御子柴!」
中盤まで下りてきた達樹が受け手となり、三國はそこへ向けてパスを出した。
その直後、ボールをパスした自身の真横を駆け抜けていく赤いユニフォームの残像に、三國は驚く。
「後ろ! 来てるぞ!」
陽光白崎の背番号11――神宮司奏多が最前線から中盤深くまでもう戻って来ていたのだ。
「っち!?」
達樹は三國からのパスを受け取りつつ反転。相手DFがすぐさま達樹の進行方向に立ちふさがり、後方からは神宮司が猛スピードで戻ってくる。あっという間に進路を塞がれた達樹は、前節の扇大のソレとは全く違うという事を、身をもって味わっていた。
(包囲が速い……っ!?)
「こっちだ!」
サイドを駆け上がる三國がパスを要求し、達樹はそちらに向けてパスを出す。
後ろから追いついた神宮司がそのパスをカットしようと足を伸ばしたが、わずかに達樹の判断とパススピードがそれを上回り、どうにか三國へとパスはつながったか、つま先に微かに触れていたほどには、ギリギリであった。
「――いい判断だな。ギリギリ間に合わなかった」
神宮司が達樹とすれ違いざまに笑いかける。その表情はやはり、どこか余裕そうだ。
「今は敵同士だ。あまり話しかけるな」
内心で焦る達樹は仏頂面のまま、三國の後を追っていた。
サイドを駆け上がる三國に対し陽光白崎のDFが襲い掛かるが、三國は卓越した個人技でそれを躱し、さらにサイドの奥深くからペナルティエリアまで侵入。
しかし自分で決めきるには角度も足りず、相手DFの戻りもマークも早い。一瞬でそうと判断した三國は、後ろから駆け上がってくる味方が揃うまで、ドリブルでキープを続ける。
パスの出しどころとなるために、相手DFラインのオフサイドラインぎりぎりまで上がった達樹。ふと後ろを見るが、神宮司はセンターサークル付近で立ち止り、さすがにここまでは戻って来ておらず、こちらをじっと見ているようだった。
(お前には絶対に負けねぇ……。あの時とは、違うんだ……!)
並々ならぬ対抗心を燃やす達樹が三國をじっと見つめ、三國もその達樹の動き出しの瞬間を待っていたようだった。
相手GKとDFの間を狙うような、絶妙なスルーパス。達樹はそれに反応し、ディフェンスラインから一気に飛び出して裏抜けを果たした。
「マーク付け!」
相手GKであり、キャプテンマークを巻く海藤が声を張り上げる。
陽光白崎のDFも素早く反応し、シュートブロックの態勢に入った。
「このっ!」
達樹は三國から供給されたボールに追いつくと、ワンタッチでシュートの構えに入り、左足を力強く振りぬく。相手DFが壁になっていたが、瞬く間に囲まれると直感し、躱す余裕はなかった。なんでもいい、とにかく入ってくれ! とインパクトの瞬間に、願いをこめるように。
「っ!?」
達樹の左足から放たれたシュートは、ハンドを避けるために身体を捻った相手DFのふくらはぎに当たり、角度が大きく変更される。
「まずいかっ!?」
「っ!?」
DFに当たったことにより、当初予測していたコースを大きく変えた達樹のシュートに、海藤は逆サイドへ足を踏み込んでいてしまい、なんとボールはそんな海藤の真横を素通りし、ゴールネットを揺らしていた。
「え。は、入った……?」
まるで自分が決めた事が信じられないように、ゴールを決めた達樹が、思わず呟く。
しかしスコアは間違いなく1-0。陽光白崎が優勢と言う多くの下馬評を覆し、駒野場が前半の早い時間に、1点を先制する試合展開となった。




