19 駒野場高校 0:0 陽光白崎高校
決勝戦試合開始――。
最初のキックは陽光白崎高校から。ワントップFW神宮司奏多が後方にパスをし、自身は前線に向けて走り出す。
「……っ」
「……」
駒野場のワントップである御子柴達樹がボールを追って陽光白崎高校の陣内に走り出し、二人は真横ですれ違い、駆け抜けていく。
「神宮司!」
陽光白崎の中盤MFが前線へ走る神宮司へ向けてロングパスを供給。
走る神宮司は後ろから飛んでくるロングパスを一瞬見た後、落下地点をすぐに予測。そこへ向けて走り込み、目論見通りそのパスを伸ばした右足でトラップしてみせると、タックルしてきた駒野場MF陣を一人、二人と難なく躱し、あっという間にDFラインまで侵入する。
「速い……っ!」
度會が思わず呻き、しかしすぐにDF陣に指示を出す。
「寄せろ! 永井!」
「……っ!」
味方に指示しつつ、自身も神宮司を食い止めようとするが、神宮司は左を駆け上がってきていた味方MFにパスを通し、自身はゴールから放れる動きを見せる。
完全に神宮司に釣り出されていた駒野場DF陣は対応が遅れ、陣形も瞬く間に崩され、相手MFのアタッカー人の侵入を許していた。
「今だ!」
中央に走り込んできたMFに向け、サイドでボールを持つ陽光白崎MFがパスを出す。
「やらせるか!」
度會がそれに対してはピッタリマークして、ゴールへの方向を完全に遮断していたが、
「甘いな」
ニヤリとほくそ笑んだ陽光白崎MFは転がって来たボールを股下で通過させ、スルーした。
「なっ!?」
「カバーッ! ボールそっち!」
GKの原田が懸命に声を張り上げる。
ペナルティエリアライン上、ぎりぎりを転がるボールに身体を寄せるのは、駒野場DFの安藤と陽光白崎FWの神宮司だった。
距離的には安藤が近い位置にいたのだが、神宮司は予想を大きく超えるスピードでボールに追いつき、あっという間に安藤を抜き去る。
「まずはご挨拶だ!」
角度のない所であったが、シュートモーションに入った神宮司は身体を逸らせながら思い切り右足を振りぬく。
「はやっ!?」
右足から放たれたシュート性のボールは風を裂き、思わず驚愕する原田の真正面へと向かってくる。無理な姿勢から打ったとは思えぬ、まるで弾丸のような威力とスピードのシュートは、今まで経験したことがなく、原田の反応は遅れていた。それでも、真正面に来たことが不幸中の幸いか、どうにかボールを弾き飛ばすことには成功したが、コーナーキックを与えてしまう。
神宮司のキック力を目の当たりにした陽光白崎の応援席は、早速コーナーキックのチャンスという事もあり、大歓声と拍手に包まれた。
「……っぶねぇ!」
原田はボールを弾き出した自身の両手を見つめた。真正面だったから身体が残ったものの、分厚いキーパーグローブ越しでも、手の平がジンジンと熱く痺れている。まともにミートしたシュートではない、無理な体勢からのご挨拶でこの威力であったのだ。




