18
インターハイ県大会出場権を懸けた、地区予選トーナメント決勝戦当日――。
快晴の青空となった天気の下、駒野場サッカー部を乗せた2台のマイクロバスが、都会の白崎市にある陽光白崎高校の裏門を通過し、駐車場に停まる。
「無理はしないでよ、神楽坂ちゃん」
「……大丈夫です。駒野場サッカー部が創設史上初めて県大会出場が懸かる大事な試合ですから、見届けないわけにはいきません」
昨日休んだことでやや体調が回復した様子の神楽坂舞も、駒野場サッカー部員として帯同していた。
決勝戦という事もあり、試合会場となる陽光白崎高校はその前から異様な雰囲気に包まれていた。相手側のホームと言うこともあり、北平の時同様、相手の圧倒的な応援の元にプレイすることになるだろう。
相手校によって用意されたロッカールームは清潔なもので、選手たちはそこで着替えを終えて、ピッチ上へ事前トレーニングへと向かう。
その前に、鷲田から本日のスタメンの発表だ。順当にいつものスタメン組が呼ばれる中、
「――FW、御子柴達樹。以上」
本日のスタメンとしてFW起用されたのは、達樹がただ一人。つまりは、達樹の1トップと言う布陣だ。
――MFが5人となる4-5-1のこのフォーメーションは、直前の試合で陽光白崎が使用していたものと同じ。そして、ワントップが1年生と言う点も、同じだ。
「相手校と一緒……」
直前のミーティングで陽光白崎の情報を頭に入れていた度會が、呟く。そのフォーメーションの真意を鷲田に訊くように視線を向けると、鷲田は開口一番、笑顔を見せて、
「いやー相手校と丸パクリにすれば行けるかなって!」
「「「ずこっ」」」
責任感も説得力も全くない言い分に、試合前の緊張感に包まれていた駒野場イレブンはずっこける。
冗談冗談、と鷲田は眼鏡をそっと触り、真面目に答える。
「相手のFWの1トップは噂の神宮司奏多くんをぶつけてくる可能性が高い。DF最終ラインは文字通り最後の防波堤だけど、バイタルエリアまで持っていかれる前にMF陣でなんとか食い止める。そして御子柴の技術力と突破力を信じて彼に1トップをしてもらう。もちろん守備タスクも忘れないようにね。やれるか、御子柴?」
「……」
鷲田が問いかけると、達樹は暫し黙り込んでから、静かに頷いた。
「はい、やります」
「よし。相手は全員レベルが高いが、そんなの今更言ったところで県大会出場を懸けてる以上、それは越えなくちゃいけない壁だ。全員サッカー、気持ちでも負けるなよ? 勝って、県大会出場を決めるぞ」
「「「はい!」」」
鷲田の言葉に、一同は返事をして、頷いた。
その後の円陣はベンチメンバー、鷲田と神楽坂も加わり、全員が肩を組み合わせ、キャプテン度會の言葉で締める。
「行くぞ駒野場! 絶対勝つぞ!」
「「「おう!」」」
その後相手のスタメンも判明し、大方の予想通り、前回試合でハットトリックを決めたFW神宮司奏多をワントップとした布陣を引いてきた。
試合開始直前、横一列に並んだ両イレブンは、審判によるチェックを終え、試合開始前の決勝戦用セレモニーを聞く。駒野場の青と、陽光白崎の赤が、審判の黒を挟んで綺麗に横一列で並んでいる。
その両端に立つ1年生1トップFWスタメンの、元同じ中学校出身の2名は、やはりお互いの存在を強く意識している事だろう。
「……っ」
「……」
お互いにこの試合唯一の一年生スタメン同士が握手の瞬間、目と目が合う。
「試合、出られるか分かんねーんじゃなかったのか?」
険しい表情の御子柴に、
「前の試合でうっかり活躍しちゃったみたいでさ。疲れるから早くベンチに下がりたいんだよね」
薄く笑う神宮寺。しかし次には、手を合わせ力を込め、目を細める。
「だからさ、前半で勝負を決めてやるよ」
そんな、神宮寺の宣言を聞いた達樹もまた、口角を上げてやる。
「安心しろ。俺がお前をベンチに引きずり下ろしてやるよ」
駒野場高校 陽光白崎高校
スターティングメンバー
FW FW
御子柴 神宮司
MF MF
三國 西村 沖村 佐川 鶴岡 太田
近藤 小笠原 荒木 堀
DF DF
度會 氷室 永井 安藤 長谷川 本柳 岸川 渡辺
GK GK
原田 海藤
ベンチメンバー
亘 中村
坂本 梶本
蓮見 本田
涼宮 鷺
雪乃 八木




