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夕暮れ、ショッピングモールで購入した備品の数々を、駒野場高校に停まっている移動用マイクロバスに、4人の一年生たちは詰め込んでいた。
「ふぅ。これで終わりか。しっかし毎回これをチェックしてる神楽坂先輩には頭が上がらねぇな……」
ひと汗かき、マイクロバスから降りた達樹は額の汗を拭いながら言う。
「本当ですね。明日は神楽坂先輩の為にも、絶対に勝ちましょう!」
遥人が力強く言っていた。一応念の為に言っておくが、別に死んでおらず、大事をとって休んでもらっているだけだ。
「明日勝てば県大会出場……。俺たちの夢に近づくんだな……!」
翔が両手で握りこぶしを作って、明日が待ちきれないようにうずうずして言っている。
そして、3人に向けてその拳を高くつき上げた。
「絶対勝つぞ! 駒野場イレブン!」
「「「おー!」」」
「よっしゃ! じゃあ今から特訓だ!」
「「「さすがに今からは勘弁してほしいっ!」」
マイクロバスの前で恥ずかしげもなく大声を出して決意を叫ぶ四人組。当然、他の部活動は土曜の夕方まで活動しているところもあり、周囲の生徒からは何事かとぎょっとされるわけだが。
夕日が沈んだ夜。自宅マンションまで一人帰って来た透は、またしても自動販売機の前で、上下スウェット姿の隣人クラスメイト、毬本澪と偶然遭遇する。今日はお互い私服姿だ。
「あ、どこか出かけてたの涼宮くん?」
「サッカー部の用事があって。午前で練習は終わってたんだけど、買い出しに行ってたんだ」
「買い出し? それって1年生だから?」
「マネージャーが風邪をひいてしまって」
「うっわ……。大変だねそれ……」
などと言いながら、階段を登ってエントランスホールへ。透がカギを出そうとしていたが、それより早く毬本がカギをかざし、オートロックを解除する。顔を見ると、その表情はふふんと得意げだ。
「もう忘れてないから!」
「さすが」
エレベーターに一緒に乗り、しかし透はスマホで何かの動画を熱心に見ている最中であった。
毬本が自販機で買ったジュースを空けて飲みながら、透をじっと見る。
「何の動画見てるのー?」
「GoTuberの猫芝けまりさんと言う人の動画」
「ぶ――っ!」
途端、飲んでいたジュースを吹き出す毬本に、透はぎょっとする。
「だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫大丈夫……えっと……」
口周りをスウェットの袖で慌てて拭きつつ、毬本はどこか興奮気味に、言葉を続ける。
「動画どう? 面白い? ためになる?」
「うん。何よりこの人は、サッカーの知識があって、本当にサッカーが好きなんだなって、わかるんだ」
「きゃーっ」
「……?」
なぜか言葉にならないような甲高い声を出し、自身の身体をぎゅっと抱きしめるようにして立つ謎の行動をする毬本に、透は訝しげな視線を送る。
「ちゃ、チャンネル登録とか、してるの……?」
「うん。いいねとチャンネル登録してるよ」
「きゃーっ」
「……?」
以下、繰り返し。
エレベーターから降りた二人はお互いの玄関ドアに向かう。少し進んだところで、そう言えばと、透は振り向いた。
「毬本さん」
「ん? なあに?」
ワイヤレスイヤホンを取り、スマホをポケットにしまい、真剣な表情で、口を開く。
「次の試合。大事な県大会出場を懸けた試合が終わったら、あなたに伝えたい事があるんだ」
「……え」
「今は試合に集中したいから、言えなくて申し訳ないけど。必ず、試合が終わったら渡したいものと伝えたいことがあるから、覚えておいてくれると、嬉しい」
「……え、ちょっと……」
「約束だ。それじゃあ、また」
「……ま、また。あ、あと、試合頑張ってね! 応援してる!」
「うん」
がちゃん、と音を立ててドアを閉めて、自室に帰っていく透。
やや遅れて、毬本も自室に入るのだが。バクバクとなる心臓で、ドアにぴたりと背中を張り付けるようにし、ずるずると、腰を落としていく。
「約束って……え、えええええーっ!?」
体育座りの姿勢となって玄関の上にぺたんと座り込み、じたばたと両足をバタバタさせて悶える毬本であった。




