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白崎市の大型ショッピングモール内にある、イタリアンレストラン、シャイゼリアの列で待つ神宮司奏多と偶然にも遭遇した、駒野場サッカー部の1年生たち。
振り向き、偶然こちらを発見した神宮司は、硬直していた。
「どうしたの奏多?」
神宮司の隣に立つ女子が彼を不思議そうに見ている。
「中学校の時の、サッカー部のチームメイトだ」
「ふーん」
一方で駒野場側も、
「神宮司って誰だっけ?」
「次の相手の同級生ですよ……前の試合で前半でハットトリックしてる人です……」
ど忘れしている翔に、相手に失礼のないように小声で聞こえないように教えてあげる遥人。
その一方で、チームメイト、と言われた達樹の表情はこわばっていた。
「久し、ぶりだな……神宮司……」
「久しぶり御子柴。元気だった?」
「ああ……まあな……」
神宮司は笑顔で達樹を見つめてから、透たち他の3人を見る。
「友だち?」
「ああそうだ。駒野場のサッカー部だ」
駒野場サッカー部。それを聞いた神宮司の顔色が、微かに変わる。
「ああ……次の試合の相手か。こんなところで会うなんてね」
「俺も、お前とは明日フィールドの上で会うもんだと思ってた」
「フィールドって事は……試合出るのか?」
神宮司が意外そうな顔で達樹を見る。
「ああ。初戦と2回戦とも出てる。多分明日も、出番はあるだろう」
「凄いな、陽光白崎は先輩もみんなレベル高くて、ポジション争い激しいんだ。明日の試合も出られたらラッキーって感じなんだ」
神宮司は悪気のない笑みで、自嘲気味に言っていた。
「……」
そんな神宮司を前に、達樹が自然と左手に握りこぶしを作っているのを、透はじっと見ていた。
「なんでまたサッカーやってるんだ?」
達樹が問いかけている。
「なんでって。中学サッカー部だったし、またサッカー部やるのは当然だろ? 他に入る部活もないしさ」
神宮司は即答する。
「悪い。質問が悪かった。――お前の夢はなんだ?」
(まるで試合で削り合ってる相手同士みたいだな……)
本人は気づいていないだろうけど、かなり険しい表情で達樹は神宮司を問い詰めるようにしており、現場はピリピリとしている。透はそれに気づいて、内心穏やかな雰囲気ではなかった。
しかし一方で神宮司は、そんな事気にも留めないように、口角を上げて答える。
「勘弁してくれ、御子柴。前も言った通り、公務員とか安定してる職だ」
「……っ。だったらなんで、サッカーやってるんだ!?」
「だから、さっきも言っただろ……。中学の時やってたから……」
水掛け論になりかけたタイミングで、シャイゼリアの店員が神宮司たちを呼ぶ。どうやら、席が空いたようだ。
「奏多?」
連れの女子に声を掛けられ、神宮司は頷く。そして次に、達樹をやや苛立った表情で見た。
「人の夢は人の勝手だろ。別に何をしようが。中学の時と変わらないんだな、お前は」
「そっちこそ、あの頃とそのまんまだ。……レギュラーじゃない俺たちがどんな思いで、お前の背中を見てきたか……」
「おうおう」
ここへきて、翔が前に進み出て、自分自身を指さし始める。
今か!?っと、透は無言であわあわと両手を上げかけるが、翔はニヤリと笑みを零し、止まらなかった。
「じんぐーじだがなんぐーじだがマングースだが知らねぇけど、次の試合覚悟するんだな」
「は、はい……?」
「この駒野場のエースストライカー、蓮見翔様がお前たちを絶対に倒す!」
「「「……」」」
この宣言には、この場の全員が引き気味であった。
「ま、まんぐーすって……。ぐ、しかあってねーし……」
くすくすと、神宮司の連れの女子が堪え切れずに吹き出しており、神宮司も髪をかいてため息を零していた。
「じゃあ、行くわ。明日はお手柔らかに頼むよ、駒野場サッカー部のみんな」
店員を待たせるわけにもいかず、神宮司たちは一足先に入店していった。
「お店、変えます……?」
遥人が気を効かせて達樹に訊くが、達樹は首を横に振る。
「いや、悪かったな……。シャイゼリアでいい。ユーべ風ドリアが食べたい」
「あれな! 300円で食えるとか神すぎる! 1000円で3つも食えてお釣りあるんだぜ!?」
翔が次には達樹に向けて明るく言う。イカ墨の黒とクリームの白が織りなす人気のメニューだ。
達樹はそんな翔を見て、いつも通り、苦笑混じりに肩を竦め、先に入店していく。
「……一時はどうなることかと思いましたけど、蓮見くんのおかげかも、ですかね……」
遥人がほっと一息ついていた。
「危なかった……。ナイス、蓮見」
「え、なになに?」
透も翔にグッドポーズをしていたが、当の翔はいつも通り、なんのことかきょとんとしているのであった。




