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決勝戦まで残り3日を切り、サッカー部の練習にもより一層力が入る。2回戦と違い、けが人も病人も今のところおらず、駒野場が持つ最大限のスタッツをぶつけることが出来そうだ。
試合が近づくにつれ、もはやお馴染みとなりつつあるのが、ギリギリまで期日を先延ばしにすることに定評のある鷲田監督と、それを急かす神楽坂マネージャーのやり取りだ。
「まぁ、それはそれで試合のスタメン考えるのが大変なんだけどねぇ」
「……毎試合悩んでいませんか……?」
「そりゃそうだよー。試合で勝った時は選手は褒められるけど、監督の采配は2の次。負ければ監督の采配が悪いって、叩かれがちだからねぇ。ま、覚悟はしてるけど、将来優秀な監督としてメディアの取材を受ける時、経歴に泥は塗りたくないからね」
「……」
ジト目で鷲田を見つめる神楽坂に、鷲田は冷や汗をかく。
「ま、まぁ俺だって悩んで毎回決めてるってわけ……」
「もっと期日を意識してですね……こほっ、こほっ……」
せき込みだした神楽坂に、鷲田は心配そうな目を向ける。
「こりゃ完全に体調不良だね、神楽坂ちゃん……」
「い、いえ……。昨日から少し身体がだるい気はしますが、熱はありません……」
「いやいや、無理はしないでくれ」
しかし、と鷲田は腕を組む。
「サッカー部員も50人超えてるしねー。それを1人で面倒見るのはさすがにいくら神楽坂ちゃんでも無理があるよ……」
「……」
再度、ジト目を鷲田に送り込む神楽坂。曰くその目は、あなたがもう少し期日通りにタスクを行って来れば負担も減りますが?とでも言わんばかりだ。
そんな視線と気持ちを横からチクチクと感じる鷲田は、気まずい笑みを零していた。
「も、もちろん、俺がもう少しやることを早く済ますのもね……」
鷲田は気まずく頬を指でかきつつ、頭を下げていた。
「現状神楽坂ちゃん一人に負担が偏っているのは事実だ。マネージャー増やさないとね。前までは公式戦もすぐ終わって、練習試合ばかりだし、部員もそんなに多くなかったわけだし。嬉しい悲鳴ってやつだね」
「今は、次の決勝戦まで選手の皆さんに余計な心配と手間はかけさせたくありません。それまでは、平気ですから……」
神楽坂はそう言うと、口元を手で押さえて、再度咳をしているのであった。健気にも神楽坂は自身の体調不良を隠し、選手に余計な気遣いはかけさせたくないつもりのようだ。しかし、そんな事をされてしまうと、人としての心は持ち合わせている鷲田は胸が痛むものだ。
それに、駒野場サッカー部にとって戦術を考えると言う意味でも、彼女の役割は大きく、次節の陽光白崎を倒すのも、この先の試合でも、彼女の存在は必要不可欠なのである。
そうこうしていると、水分補給のために、近くまでやって来た涼宮透の姿が二人の目につく。
「お、涼宮」
声を掛けたのは、鷲田だった。
「はい」
「雪乃遥人くんという原石を見出し、スカウトし、磨いたのは君だね?」
「なんですかそのぎょうさんな言い方は……」
アクエリアスの入ったチューブを握り、汗を垂らす透は、ぞっとして眼鏡を光らせる鷲田を見る。雪乃遥人は、(だまし討ちに近い形で)スカウトしたのは紛れもなく事実だが、才能と努力と言う意味では間違いなく彼自身によるものが大きいと思っているのだが。
「君の周りには面白い人材が集まるらしい。次も、期待しているよ……?」
「え? え?」
何のことかわけがわからず、助けを求めて神楽坂を見ると、頼みの綱の彼女も「お願いしますお願いします」と、ぺこぺこと頭を下げてくるのであった。




