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その日のチームとしての全体練習は終了した。全体練習後もピッチに残って自主練習をする者や、用事があって帰る者、寮室でリフレッシュしたりも、その人個人の自由時間だ。
「くそっ」
一度意識してしまうと、どうしても奴の姿がフラッシュバックする。
御子柴達樹は居残り練習を続け、足の感覚がなくなりかけるほど、ドリブルやシュートの練習を繰り返していた。
シュートは狙ったところに思い通りに飛んでいかず、ドリブルも落ち着かない有様だ。
ピッチの外で足のストレッチをしている透、翔、遥人は、並々ならぬ気迫を宿す達樹に、どうしたものかと顔を見合わせていた。
「御子柴」
同じように居残りで練習を続けていた度會が、見かねて声を掛けてくる。
「度會キャプテン……」
「今日はもう上がれ。ゆっくり休むんだ」
「でも……」
「キャプテンの命令が聞けないのか? 生意気な後輩だな」
そう笑いかける度會は、大きな手で達樹の汗だらけの髪をくしゃくしゃにしていた。
うわっ、と達樹は逃げるように身体を後退させ、思わず笑みを浮かべていた。
そんな微笑ましい(?)やり取りを遠くで見つめ、1年生たちはひとまず安心すると共に、流石キャプテン、さすきゃぷだ、等と語り合っていた。
「やっぱ、同じ中学って意識するものなのかな」
足を伸ばしている翔が誰にでもなく呟いてる。
「思えば僕たち、御子柴くん以外はみんな中学サッカー部じゃないですもんね……」
遥人がそう言えばと答えていた。
「確かに。卓球部の友だちがいきなりサッカーやり始めたら、俺は正直、びびる」
透がぼそりと言っていた。
そんな3人の近くでは、三國が自分のスパイクを履き替え、そっとスパイクについていた汚れを掃除している。
「そう言えば三國先輩って、昔からめっちゃサッカー上手かったんですか?」
翔がそんな三國に尋ねると、三國は視線をこちらに向け、
「どうだろうな。昔から度會と一緒に遊んでたけど」
「度會先輩と同じ中学だったんですか? 中学時代の話、興味あります!」
中々三國とこうして話す機会が今までなく、ここぞとばかりに遥人も三國に聞いていた。
三國はいつも通り落ち着いた様子で、スパイクを熱心に磨きつつ、
「中学どころか、小学校と幼稚園から度會とはずっと一緒だった。幼馴染って言うのかな。高校も同じところに入って、一緒に大会出ようって言ってたんだ」
「幼稚園からずっと一緒なんですね! お家が近いとかですか?」
「ああ。実家が隣同士なんだ。隣人ってやつかな」
「すごい。それが今同じチームでサッカー続けてるってもう、運命ですね!」
「まあ、俺が度會におんぶにだっこみたいなもんだけど」
遥人が両手を胸元の前でぎゅっと握り、興奮気味に言っているが、三國は腐れ縁ってやつかなと、クールにスパイクに息を吹きかけていた。その口角が上がっており、満足いく仕上がりの様だった。
……その、一方で。
「隣人か……。隣の、人。……あ……」
何かを思い出したような透が、愕然としている。
「ん、どしたの涼宮?」
「トイレか?」
翔と三國が揃って透を見ている。
……隣人に用があることを、ド忘れしていたのである。




