表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/64

第55話 真なる姿

『我は炎獄(えんごく)。賽河家と契りを結んだ穢神だ』


その怪物―――炎獄は禍々しさを漂わせながら、誇る様に名を名乗った


身体に纏う瘴気が、まるで全てを枯らせてしまうかのような死の匂いを感じさせ、菊理は思わず息を呑んだ


「じゃあ初代当主が契約した穢神って―――」


『如何にも我だ。あやつとは互いに利害が一致していたからな。黄泉人のくせに面白い奴だった』


炎獄は遠い昔を思い出したかのように、懐かしみ不気味に笑みを浮かべる


『―――だが、一番の誤算だったのは、今の当主が我らを忌み嫌った事だろうな。まあ拒絶しようがどうしようが、この運命からは逃れられんが………しかし自暴自棄になり、何やら面白い事を企てていたから乗っ取ってやったのよ』


「そんな……その身体は月彦さんのものです!今すぐ返して下さい!」


菊理の叫びに、炎獄はおかしなものを見たかのように吹き出し、嘲笑った


『それは無理な相談だ。初代との契約で一族の身体を好きにさせて良いと許可が出ている。此奴の肉体は我のものだ』


「それなら……あなたから月彦さんを剥ぎ取ってみせる!」


そう言って菊理は福に乗ると、短剣を取り出し構える


『ふははははははは!やれるものならやってみるがいい小娘よ!』


炎獄は腹の底から笑い声を響かせると、巨大な腕を振り上げた

次の瞬間、灼熱の瘴気を纏った攻撃が菊理を襲う


「――――っく!」


福が地を蹴り、寸前で回避する

吹き荒れる衝撃波に髪を乱されながらも、菊理は必死に炎獄の動きを見極めていた


すると炎獄の左脇に、一瞬だけ隙が生まれる


(――――今だ!)


菊理は福を走らせると、一直線に炎獄へ突っ込んでいく


「はぁっ!」


福から飛び降り、短剣を突き立てる

刃が肉へ沈み込み、同時に霊力の糸が炎獄へ絡み始めた――――だが


(えっ!?)


霊力の糸が繋がり始めようとしていたその時、炎獄が引きちぎり、そのまま菊理を吹き飛ばした


「きゃあ!!」


宙に投げ出された菊理は、無情にも地面に叩きつけられる


「きゅう!」


福は急いで菊理の元に駆け寄り、安否の確認をする


「成る程……貴様、なり損ないだな?稀に異質な力を持つ者が現れるとは聞いていたが……目にしたのは初めてだ」


炎獄は物珍しそうに菊理を見つめると、彼女の反抗的な目を見て鼻で笑った


「だが、だとしても我には勝てん!この一族と結んだ強固な契りを断ち切る等、不可能な事よ!」


炎獄が愉快そうにゲラゲラと笑う様子に、菊理は圧倒的な差を感じ取り唇を噛み締めた


「そんな………」


(やっぱり、無理な事なのかな……月彦さんを救うのは―――)


心が折れかけ俯く菊理に、炎獄は容赦なく攻撃を仕掛ける


そしてその攻撃が直撃しそうになった、その時だった


『―――な!?』


突如何かが辺りを包み込むように光り輝いた

それは夜を切り裂く朝日のように神々しく、穢れを拒絶する聖なる光の様だった


炎獄の攻撃は浄化されるかの様にたちまち消えて無くなっていく


『――――主様』


「え?」


突然聞こえた声に、菊理は驚いて辺りを見回す

と、目の前で福の身体が淡く輝いていた


『僕ですよ。福です』


「福……ちゃん!?どうして?糸で繋げてないのに」


『共有の括り紐で心が通じ合えるようになっているのです』


そう言われ、菊理は思わず左手首を見つめる


共有の括り紐はそれに答えるかの様に淡く輝いていた


『主様。僕をお使い下さい』


「福ちゃんを?どういう事?」


困惑する菊理に、福は静かに頷き、穏やかな声で続けた


『今のこの状況の主様なら扱える筈です。僕に糸を繋ぎ、こう唱えて下さい―――――さあ』


「よく分からないけど………やってみるね」


菊理は言われるがままに福を霊力の糸で繋ぎ、福の言葉を復唱した


「『霊力の糸よこの世の全ての理を括りませ。そしてその真の姿を現したまえ』」


すると復唱の終わりと共に、福と繋がれている糸と共有の括り紐が眩い光に溢れ始める


そして次の瞬間、眩い光柱が福を包み込んだ

轟音と共に霊力が爆発的に溢れ出し、周囲の空間そのものが揺らぐ

吹き荒れる風に菊理の髪が激しくなびき、激しい光に、彼女は思わず目を閉じる


『………な、なんだこれは!』


炎獄が驚き動揺の色を見せた時、光は徐々に収束していく


そしてそこに現れたのは―――――


「これは―――剣?」


それは1本の直刀だった


長くスラリと伸びる刀身は2メートル以上あり、黒塗りの装束が施された剣だった


『これが僕の本当の姿――韴霊剣(ふつのみまたのつるぎ)です』


剣から響く福の声を、菊理は驚きながら見つめる

まるで穢を落とすかの様に光り輝くその剣を、彼女はゆっくりと手に取った―――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ