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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第49話 神との遭遇

「………今どれくらい歩いてるんだろう?もう結構彷徨ってる気がするんだけど」


山を登り始めて数十分――――


傾斜のきつい獣道を、木々をかき分けるようにして、ひたすら進んでいた


菊理は福を頼りに歩かせているが、中々それらしい場所には着かない


すると、福が急に立ち止まった


「きゅ!」


「ん?どうしたの?」


福が差した場所を見ると、山肌にぽっかりと口を開けた、不自然な穴だった


中は暗く、ひんやりとした空気が漂っており、まるで誰かを待っているかのようだった



「もしかして……ここが天界の入り口?」


「きゅう!」


福の迷いの無い返事が、それを肯定していた


「よ……よし!行こうか福ちゃん」


菊理は覚悟を決めると、福の背から降り、穴の中へと入った


暗く、土の匂いがする狭い穴を福と共にゆっくりと歩む


途中、足を取られそうになりながらも、先の見えない出口を目指し、動き続けた


すると、急にひらけた場所に付いた


「――――!」


菊理は思わず息を呑んだ


柔らかな光に包まれた大地

風に揺れる草花

どこか懐かしく、優しい空気


先程の薄暗さとは想像出来ないほど、穏やかで、美しい風景が広がっている


「わぁ………。ここが天界」


そう呟き、辺りを見渡した


(なんとなく、昔自分がイメージしてた天国って感じの所だなぁ)


菊理が天界の美しさに感動していたその時、福が急に立ち止まると、耳をピクリと動かした


そして突然、福は元気よく走り出した



「きゅー!」


「え!?ふ、福ちゃん!?」


何かを思い出したかのように、勢い良く駆け出した福を、菊理は慌てて追いかける


「ま、待って!置いてかないでー!!」


しかし慣れない地面に足を取られ、中々追いつけず、福との距離はどんどん広がっていく


そして小さくなっていった福は、ある屋敷の中に軽い足取りで入っていった


「ぜぇ……ぜぇ……もーどうしたのぉ……」


息も絶え絶えに、屋敷の門へとたどり着くと、見知らぬ声が聞こえた


「―――あら?あなた。久しぶりねぇ、今までどこに行ってたの?心配してたのよ」


「きゅ!」


福の鳴き声が聞こえ、菊理がそっと物陰から覗き込むと、そこには美しい女性が楽しそうに福と話をしている


(………誰だろう?)


そう思いながら、菊理はその女性を見つめる


明るい茶色の髪を結い上げ、まるで飛鳥時代の礼服のような衣服を身に着けているその女性に、菊理は思い切って声をかけた


「あの………すみません」


「あら、あなたは?」


「私はそこにいる福ちゃん―――福咲鹿の主です。一応………」


菊理がそう答えると、女性は目を大きく見開き、驚いたように福に顔を向けた


「まぁ……あなた使えている主人がいたのね。だから帰って来なかったの?」


「きゅう」


福は嬉しそうに返事をした

その様子を見るに、福とその女性は以前からお互いを知っているようだった


「ということは………あなたは括り人かしら?」


「は、はい!でもなんで分かったんですか?」


「神獣を従えられる黄泉人なんて基本的に存在しないもの。いたとしたらそれは、神に最も近い黄泉人―――括り人のみ」


「あなたは、一体――」


そう尋ねられた女性はふわりと笑みを浮かべ、こう答えた


「私は人々の縁を繋ぐ神―――菊理媛命」


「く、菊理媛命ぉ!?あなたがですか!?」


菊理はまさかの神との遭遇に驚きの声を上げた


「あ、あああのはじめまして!私、比良坂菊理です!私の菊理って名前はあなた様からあやかって母が名付けてくれてですね!その……えっと………」


「………ふふっ。そんなに身構えなくとも、良いのですよ」


「あ、はい……すみません」


その女性――菊理媛命にくすくすと笑われた菊理は、恥ずかしそうに下を向いた


「共有の括り紐を受け取りに来たのでしょう?そろそろ来るのではと、待っていたのですよ」


「え……なんでそれを………」


「こう見えて神ですから、そちらの事も把握してるのですよ。ここでは何ですから、どうぞ中へお入りください」


そう言って菊理媛命は菊理を屋敷へと案内した


まだ実感も湧かない中、彼女は神の領域へと足を踏み入れるのだった

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