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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第5話 地獄の初顔合わせ

突然の嗣臣の両親の訪問に部屋の空気は冷え、緊張感が漂う


(この人達が嗣臣さんのご両親………)


緊迫した空気の中、改めて菊理はチラリと嗣臣の両親を見る


嗣臣の父の方はやや小柄ではあるものの、背筋は真っ直ぐ伸び威厳が感じられ、圧倒されるような風格が感じられる


一方、嗣臣の母はというと、物静かで嗣臣の父の後ろで控えめにたたずんでおり、どこか儚げで憂いを帯びた女性だ。目元の三白眼が嗣臣に似ているのを見るに、彼は母親似であることがよく分かった


そんな事を思っていると、低い声が静かに居間に響いた


「どういうことだ嗣臣。勝手に嫁を決め、私達に黙って祝言をあげるとは」


そう問いただす声にはかすかに怒りが滲んでいる


(………あ。そういえば式にご両親はいなかった気がする)


菊理の脳裏にあの祝言の記憶が蘇る


慌ただしく理由のわからないまま行っていた式だったが、よくよく思い返してみるとあの時出ていたのは菊理と嗣臣、そしてそれ以外は嗣臣に使える使用人達だけだった事に菊理は今思い出したのだ


一般家庭の結婚ですら段階を踏んでからするものであるのだから、いかにも由緒正しき家柄の比良坂家の息子が勝手に結婚していたらそれは大問題であるのだろう


「……俺がすぐにでも菊理を妻に迎えたいと思い、早急に祝言を行ったんですよ父さん。それ以上でもそれ以下でもありません」


淡々と事実を述べる嗣臣に対し、嗣臣の父は怒りを露わにした



「それを通す筋ってものがあるだろう!夫婦の契りを交わすという事は私等にも関係があるのだぞ!」


怒号が響き菊理は身体を強張らせる

しかし相変わらず嗣臣は眉一つ動かさない


「だからですよ。父さんは菊理を妻にする事を確実に反対するだろうと思いました。ですから少々強引に事を運ばせてもらったんです」


「当たり前だ!こんな貧相で、ちんちくりんで、品格も皆無な小娘を嫁にするなど許す訳がないだろう!比良坂の名を背負える器ではないわ!」


嗣臣の父は菊理を指差しながらハッキリ侮辱の言葉を吐き散らす


「うぐぅ……」


あまりの物言いに、菊理の精神は見事に打ち砕かれた


(こんなド直球で貶されたの初めて……私のライフはゼロよ……)


菊理が沈んでいると、急にそっと肩に温もりが触れた

嗣臣が慰めるように彼女の肩に手を置いたのだ


「嗣臣さん………」


嗣臣は菊理をチラリと見つめると、また実父を見つめ反論した


「菊理をそのように貶すのは止めてください。いかに父さんであっても許しません」


嗣臣は父の指摘を諌めるも、依然として平静を保ったままだ


しかしそんな時だった


「フン!………こんな事ならまだ『寿美(すみ)』の方がマシだったわ」


嗣臣の父から『寿美』という名前が出た瞬間、嗣臣の表情が微かに動いたのだ


あれだけどんな時も真顔を崩さなかった彼が、たった今初めて崩しそうになったのを菊理は見逃さなかった


「……寿美の事は関係ないでしょう」


嗣臣は静かに反論するも、明らかに空気が変わったのが感じられる


「関係はあるだろう。寿美はお前の―――」


「あのぅ……」


2人が言い争う中、菊理は思わず口を挟んだ


3人の視線が一斉に彼女に向かう


「あ、す、すみません。貧相でちんちくりんで品格もクソもない嫁がしゃしゃってしまって………。その、寿美って誰ですか?初めて聞く名前なんですが………」


自虐も込めつつ尋ねるも、その重苦しい空気は変わらない


「嗣臣」


すると今まで黙っていた嗣臣の母が口を開いた


「あなたまさか、菊理さんに寿美さんの事、話していないのですか?」


母の問いに嗣臣は口を開かず黙っている


「ハッ!嫁のクセに知らんのか!寿美の事を」


嗣臣の父は馬鹿にしたように菊理を見下す

そして続けてこう告げたのだ


「ならば教えてやろう。寿美はな、かつて――――――――――――――


――――――――嗣臣の嫁だった女だ」



衝撃の事実が言い渡され

菊理はただただ呆然とするほか無かった

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