第4話 義両親、襲来
次の日の朝―――
菊理は陽の光を身体に感じ、目が覚めた
「………うーん。もう朝かぁ………」
頭がまだ覚めきらず、布団の中で丸くなり温かさを噛み締める
しかし次の瞬間ハッと飛び起きた
「―――ヤバッ!!仕事遅れる!!」
菊理は急いで布団を蹴散らすと慌てて支度にかかろうとするが、途中でそんな事はしなくていい事に気が付いた
(――――ってもう私はあちら側には居ないんだから仕事も無いんだった)
菊理はふとかつての仕事を思い出していた
菊理は黄泉人にされる前までペットショップで販売や生体管理の仕事をしており、毎朝早く出勤しては販売している犬猫の世話や清掃をしていた
重労働で汚い仕事でもあり、安月給だったが菊理はあの仕事自体は好きであった
(………もうあのモフモフ達と一生戯れられないのはさみしいなぁ)
そんな感傷に浸っていると、後ろから声が聞こえた
「起きたか」
驚いて振り返ると、そこには嗣臣がいた
「あ!お、おはようございます!もう起きてたんですね」
菊理は慌てて佇まいを正した
「ああ、君に脇腹を蹴られてな。中々刺激的な目覚めだったよ」
「ゔっ……」
さらりと言われ、菊理は言葉に詰まる
「す…すみません」
「嘘だ」
「ぐっ…」
やられたと言わんばかりに、菊理は嗣臣をジトリと睨むが、彼の表情は変わらない
「本当は君に布団をはぎ取られたんだ。寒さで目が覚めた」
「………どっちにしろ私が原因なんですね」
菊理は眉を下げ肩を落とした
すると嗣臣に「朝食の用意が出来てるぞ」言われ、菊理は気持ちを切り替え居間に向かう事にした
―――――――――――
居間に入ると、そこには使用人が用意してくれた料理が並んでいた
和食であっさりめではあるが、朝食にしては豪勢である
「わあ、美味しそう。いただきます」
菊理は嬉しそうに手を合わせると早速、魚料理を一口頂く
「美味しい!これ鯖?ですか?ここにも現世の魚が来るんですか?」
興味津々に尋ねる菊理に嗣臣は静かに箸を置く
「いや、これは常世で生息している魚だ。常世にも現世に似たものが捕れる」
「へー………ハッ!もしやソレも嘘だっていうんでしょう!?」
菊理が疑うように目を細めるが、嗣臣の表情は変わらない
「嘘ではないぞ」
「むむむ」
勘が外れ菊理は悔しそうに唸る
そんな事をしつつ、2人で朝食をとっていたその時、慌ただしく廊下を走る音が聞こえたかと思うと、居間の戸が勢い良く開いた
「嗣臣様!」
使用人の1人が血相変えて入ってくる
「どうした」
「大変でございます!大旦那様と大奥様が――――」
使用人が用件を言い終わる前に、今から2人の人物が入ってきた
着物を着た白髪交じりの老人と妙齢だか何処か品のあるご婦人だった
「……父さん。母さん」
「ええっ!?」
ぽつりと呟いた言葉に菊理は驚きの声を上げる
「嗣臣……コレは一体どういうことだ?今すぐ説明しろ」
老人――嗣臣の父は静かに、しかし重く圧のある声で問いただす
和やかな食事はこうして呆気なく終わりを迎えたのだった




