第38話 黄泉人の妻
2人が肌を重ねあった後
しばらくして菊理が目を覚ました
「んん……………あれ、まだ夜が明けてない」
外を見るとまだ日は出ておらず真っ暗だった
(そういえば昨日、嗣臣さんと―――まぁ最後まではしなかったけど………)
菊理はふと、先程の事を思い出す
触れられ身体が支配されるような甘い感覚に、それに伴う多幸感、そして熱を帯びた視線――
(い、いろいろすっごかった……………)
鮮明に思い出した菊理は顔が真っ赤にさせた
そして寝間着を見てある事に気付く
(あの後、綺麗にしてくれたのかな?寝間着が直してある)
あの時乱れていたはずの寝間着がきちんと整えられていた
嗣臣が直してくれたのだと思うと、胸がくすぐったくなった
「………でも一応お風呂に行ってこよ――」
身体を起こそうとしたその時、勢い良く腕を後ろに引っ張られた
「っわぁ!」
「………どこへ行く?まだ夜明け前だぞ?」
嗣臣が布団から離れようとした菊理を引き戻したのだ
気が付けば、逃さないように後ろからしっかりと抱き込まれている
「つ……嗣臣さん!?お、起きてたんですか?」
「ついさっき目が覚めた」
「そ、そうですか……ちょっとお風呂に入り直そうかと……」
菊理がモゾモゾしながら布団から出る口実を告げるが、嗣臣はそれを許さなかった
「それは後にしろ」
「い、いやぁでも汗かいたしぃ………」
「後で一緒に入れば良いだろう」
「へぇ!?それは無理ぃ!!」
「そんなに拒絶する事ないだろう。ちょっと前までお互いの肌を見ていたんだぞ」
「私は見てないですぅ!!」
さらりと言ってのける嗣臣に、菊理は真っ赤な顔を覆いながら反論する
「そうか。俺は見ていたから安心しろ。恥ずかしがることは無い」
「ひぃ!安心出来ないぃ!今すぐ忘れてくださいぃ!!」
「断る。忘れるものか絶対に」
そう言って嗣臣は菊理を抱きしめる腕を強くした
「………やっと手に入れた温もりだ。忘れもしないし離しもしない」
「うぐぐ………」
大切そうに抱きしめ囁く嗣臣に、菊理はそれ以上何も言えなくなってしまう
その時ふと、この屋敷に来た時の事を菊理は思い出した
――――あの頃、こんな未来が待っていたなんて想像もつかなかった
そんな風に思い、彼女は思わず笑った
「……ふふっ」
「なんだ急に笑い出して」
「いえ、最初出会ったばかりの時をふと思い出して……嗣臣さんに助けられて、目が覚めたと同時に祝言を上げて……私はこのまま名前も知らない人と初夜を迎えないといけないんだって思い込んでて、パニクってたなぁって」
「ああ、そういえばそうだったな。こちらも急に決めた事だったから、準備で忙しくて菊理に説明する暇が無かったんだ。今思えば、あれは確かに説明不足だったな。すまなかった」
嗣臣が改めて謝ると、菊理は菊理を振った
「いえ。でも最初は割り切った関係でいる筈だったのに、いつの間にかこんな事になって……人生って分からないなって思います」
「そうだな。そこだけは誤算だった」
「後悔しましたか?」
「するわけ無いだろうそんなもの」
「そっか」
短く返事をすると、少し間をおいて再び口を開いた
「嗣臣さん」
「なんだ」
「ありがとうございます。私を黄泉人にしてくれて。こうして黄泉人になったから、嗣臣さんと一緒にいれます。あの時助けてもらえて、本当に良かったです」
「そうか」
嗣臣はそう言って菊理を抱き寄せた
そして2人はお互いの温もりを感じながら、再び眠りにつくのだった




