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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第27話 『異端』たる理由

「それじゃあ早速明日から機能回復訓練を始めようか。反復療法の時は比良坂邸に椿を寄越すから安心してね。それに加え、うちで週1回、電気刺激療法もしよう。早く良くなるように頑張ろうね」


「はい。お願いします」


菊理が頭を下げると、月彦は笑みを浮かべカルテを閉じた


「ああ、それと月彦。お前に調べてほしい物が―――――」


嗣臣が月彦に頼み事をしようとしたその時だった


ガシャァァン!!


「――――!?」


屋敷の奥の方で、何かが破壊された音が聞こえたのだ


すると研究室の鉄のドアが勢い良く開かれた


「―――月彦様!」


使用人の椿が血相変えて入ってきた


「何があったの?」


「穢鬼にこの研究所に侵入されてしまいました!」


その発言に、室内は緊張が走る


「そんな……」


菊理は三度起こった出来事に、口を手で押さえる


「また結界をやぶられたのか……」



嗣臣がそう呟くと、扉へ向かう


「皆はここで待っていろ。俺が片付ける」


嗣臣がドアを開け出ていこうとすると、月彦が呼び止めた


「待って嗣臣。僕が行くよ」


「月彦……無理はしなくていい」


心なしか心配そうな表情の嗣臣に、月彦はキッパリと否定した


「無理なんかじゃないさ。友人を助けるのに、理由なんていらないだろ?」


そう言って子供のような笑顔を浮かべた時だった


「ギィィィィィィィッ!!」


金切り声に近い鳴き声と共に、穢鬼が研究室まで侵入してしまっていたのだ


「椿!菊理さんと離れて!!」


月彦が叫びながら白衣を脱ぎ捨てる


「シィィィィィィィッ!!」


穢鬼の鋭い一撃が月彦に入るその直前


「ギャッ!!」


穢鬼が壁にめり込んだのだ

いや、正確には月彦が穢鬼の顔面を片手で掴み、壁にめり込ませていた


「―――!?」


菊理は予想外の展開に言葉を失った


「これは……どういう事?」


菊理が困惑していると、次第に月彦の身体がバキバキと音を立てながら変形していく


骨格が軋み、筋肉が膨張し、指先からは鋭い爪が伸び、元々白い肌はさらに青白く変色していった

やがてその全身に、黒い紋様が血管のように浮かび上がった

瞳は金色に輝き、白目はまるで闇のように黒く染まる



「これが賽河家が『異端』と言われる所以で御座います」


使用人の椿がぽつりと語り始めた


「どういう事ですか?」


「賽河家の人々は皆、穢鬼を胎内に宿しているので御座います」


衝撃の事実に、菊理は目を見開いた


「穢鬼を……宿す!?」


「賽河家の初代当主が穢鬼と穢神の研究を追究した結果、その力に魅入られ、『穢鬼の力を授かる代わりに一族の身体を捧げる』という悪魔の契約を、ある穢神と行なったので御座います。そうして強大な力を授かり、頂点にまで上りつめたのです」


淡々とした語り口調のまま、椿は月彦を見つめている


月彦は飛びかかる穢鬼を振り返りもせず、腕を振るうと、次の瞬間穢鬼の胴体が真っ二つに裂け、血飛沫が飛び散る



「そんな……!それはあまりにも……」


「はい、常軌を逸した契約に御座います。しかも黄泉人と穢鬼との力の拮抗が崩れてしまえば、その身体は穢鬼に飲み込まれ、死ぬまで乗っ取られてしまいます」


椿の言葉と同時に、月彦は床を蹴り、一瞬で次の穢鬼との距離を詰める

そして首を掴み、そのまま握り潰した

骨の砕ける嫌な音が響く


「月彦様はそんな賽河家の宿命を嫌い、穢鬼の力は極力使わず、己の力のみで常世の管理を担っているので御座います。他の黄泉守人から忌み嫌われようとも、それを黄泉人達の為に使っているのです」


その言葉の直後、最後の穢鬼が咆哮を上げて突進する

月彦はそれを正面から受け止め、次の瞬間には、頭部を叩き潰していた


室内はシンと静まり帰り、月彦の荒い息だけが聞こえている


すると徐々に、月彦の身体が戻り元の姿に戻った


「―――――ふぅ。全て駆除出来たかな。椿、この穢鬼の死骸を集めて保管して。後で細かく調べたい」


「かしこまりました」


何事もなかったかのように、軽い口調で椿に指示すると、彼女は頭を下げ、もくもくと穢鬼の死骸を集め運び始めた


菊理はその異様な光景をただ呆然と見つめていた


――――――――――――


「いやぁ悪かったね。こんな騒動に巻き込んじゃって」


帰り支度をしている嗣臣に、月彦は申し訳なさそうに苦笑を浮かべた

すると嗣臣は小さく首を横に振った


「いや、良い。菊理の身体が動かない原因を突き止められてよかった」


穏やかにそう述べると、ふと思い出したかのように言葉を続けた


「ああ、月彦。先程言いそびれてしまったんだが、調べてほしい事がある」


そう言って嗣臣は懐から小さな小瓶を月彦に手渡す


それは2週間前道之から渡された蜘蛛が入っている小瓶だ


「―――これは?蜘蛛?」


「2週間前、道之の屋敷近くである黄泉人に付けられていた蜘蛛だ。この蜘蛛に操られ、結界を壊したと見られている。恐らく今回襲ってきた穢鬼達も、同じ手口で結界を破り侵入したと思っている。後でお前も屋敷周辺を確認してみると良い。俺はこの蜘蛛を操る穢神に心当たりがある。それを確認してほしい」


そう依頼する嗣臣の瞳は鋭く、どこか核心に近いものを感じているようだった


「そして、これより前に行われた夜会での襲撃事件でも、同じような蜘蛛が発見されている……この一連の事件は同一人物による犯行だと俺は確信している」


「つまりまさか――」


月彦が息を呑むと、嗣臣は頷いた


「ああ、俺は黄泉人の誰かが蜘蛛を操る穢神と繋がっていると見ている」


嗣臣の言葉が静かに重く響くのだった

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