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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第25話 いざ賽河家へ

菊理が倒れ、謎の麻痺で身体が動かせなくなって2週間後―――


長い静養の日々の中で、ようやく少しだけ回復の兆しが見え始めていた


最近やっと起こしてもらえば上半身を自立出来るようになったものの、相変わらずそれ以外は動かないままだ


そのため嗣臣が不在の時等は天鬼に物を取ってもらったり、移動を頼んでいる


「はい!菊理しゃま。読みたがってた雑誌でしゅ」


「ありがとう天鬼ちゃん」


天鬼に礼を言い雑誌を受け取ると、天鬼は眉を下げ菊理の動かぬ身体を見つめる


「……にしても、早く治ると良いでしゅね。このままだと不便でしゅし」


「うん。このまま天鬼ちゃんや嗣臣さんに頼りっぱなしも申し訳ないし……」


申し訳なさそうに視線を落とす菊理に、天鬼はぶんぶんと首を横に振った


「天鬼は気にしてないから大丈夫でしゅ!それに主も菊理しゃまのお世話が出来て嬉しそうでしゅよ?」


「そ、そうかなぁ」


苦笑しながら菊理は答えたが、実際のところ天鬼の言う通りだった


嗣臣が屋敷にいる時は献身的に菊理の補助をしてくれるのだ

風呂や着替え、トイレ以外は全て嗣臣が身の回りの事をしてくれる


(……つきっきりで世話してもらうの若干恥ずかしいんだよなぁ)


内心そう思い、あの日菊理の意識が戻った時の事を思い出す


抱きしめられ、感じた嗣臣の温もり、そして掠れた声で紡がれた言葉―――


『…………このまま意識が戻らないのではと、心配していた―――』


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」


うっかり思い出した事で恥ずかしくなり、菊理は身悶えする



「?どうしまちた菊理しゃま?」


「な、なんでもないよ!」


キョトンとした顔の天鬼に、菊理は慌てて誤魔化した

必死で心を落ち着けさせつつも、胸の奥に残るもやもやは消えない


あの日自分の恋心に気づいた菊理は、嗣臣の態度にほんの少しだけ不満を抱いていた


「―――――菊理。今いいか?」


ふいに障子越しから、その嗣臣が声をかけてきた


「は、はい!」


反射的に返事をすると、すぐに戸が開き嗣臣が入ってきた

現れた彼はいつもの事ながら真顔であったが、どこか急いでいるようだった


「今から月彦の所へ行こう。先程、文の返事が来た」


「へ?今から?」


『月彦』という初めて聞く名前の人物も気になるが、それ以上にあまりにも唐突な提案をされた為、菊理はぽかんとしてしまう


「そうだ」


「急すぎません?」


「ついさっき文の返事が来て、『来ても良い』という許可が下りたからな」


「いやぁ、でも出掛ける支度してないですし――」


「そのままで大丈夫だ。もたもたしている時間は無い。一刻も早く菊理の身体が動かぬ原因を突き止めねば」


そう言い終えると、有無を言わさず菊理を抱き上げた


「わっ!!」


「さ、行くぞ」


戸惑う菊理をよそに、嗣臣はさも当然の如く外へ向かう


「えぇ!?で、でもどうやって?私動けないんですよ!?」


「それは問題無い。月彦が妖獣を移動手段として貸し出してくれた」


そう言って顎で庭を指す

菊理もその方向を見ると、そこには巨大なピンク色の象が1頭、宝石を散りばめたやたら豪華な櫓を背に付け佇んでいた


(………アラブの王族かな)


あまりにも現実離れした光景に、菊理はただ呆然とそれを見つめることしか出来なかった



―――――――――――



屋敷を出て数分後――――


菊理と嗣臣は空の上にいた


上空からは広大な森と街並みが小さく広がり、風が絶え間なく櫓を揺らしている。


(空を飛ぶ象かぁ…………)


菊理は嗣臣に支えられ、櫓の中からピンク色の象を見下ろした


象は大きな耳をパタパタとはためかせ鳥のように飛んでいる


その時ふと、家を出る前に聞きそびれた事を思い出し嗣臣に話しかける


「あの、そう言えば月彦って誰ですか?初めて聞く名前ですけど」


「……ああ、そう言えば説明しそびれていたな」


菊理の問いに嗣臣は前方を見据えたまま、淡々と口を開いた



「この前、道之の屋敷で御三家の話になっただろう?比良坂家と大神家、そして3つ目の一族を賽河(さいが)家と言うのだが、月彦はその賽河家当主だ」


「へぇー……でもそれでなんでその賽河家に出向く話になるんです?」


菊理はその賽河家に行くことが、何故自分の身体が治る手がかりになるのかが結びつかず、首を傾けて問い返した



「賽河家は比良坂家や大神家のように霊力を持って死者の管理をしているのではなく、穢鬼や穢神の研究を主に行っているのだ。それと同時に霊力の研究もしていてな、もしかしたら菊理の身体が動かなくなった原因が分かるのではと連絡を取った」


「御三家なのに戦わない一族なんですね」


菊理が感心していると、嗣臣は難しそうな表情を浮かべる


「戦えるは戦えるのだかな………賽河家は少々異端なのだ。月彦はそれを気にして極力戦わないが、その異端さを忌み嫌う黄泉守人は多い」


『異端』という言葉に、菊理は生唾を飲み込んだ

何がどう異端なのか、想像はつかないがそんな一族の当主に自分の身体を診てもらうのは、若干恐怖を感じる


するとピンク色の象が、徐々に降下しみるみる地上が近くなった


「……着いたようだな」


嗣臣がそう呟き、菊理は下を見つめた


そこにはまるで黒い箱の蓋のようない異質な建物がぽつりとそびえ立っていた


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