第22話 繋がる先にあるもの
嗣臣と大神の息子達との手合わせが続く中、菊理は大神に呼ばれ別の修行を受けていた
箱の中身を蓋を開けずに霊力だけを頼りに視るという、いわば透視のような修行だ
前回の実戦での菊理の能力を見て、大神が思いついたものらしい
「うーん………」
菊理は霊力の糸を出し箱に繋げると、集中して中身を見ようとする
すると脳内にぼんやりと箱の中身が映し出された
「ええと……『壱』と書かれた紙切れが視えます」
「そうか、開けてみろ」
大神に促され、菊理はゆっくり箱の蓋を開ける
するとそこには『壱』と書かれた紙切れが入っっていた
「おお!当たりました!やった!」
菊理は嬉しそうに声を上げた
この修行を始めてから実は既に7回、その全てで成功を遂げていた
まずは形を当てる所から始まり、色、個数、材質、名称、そして文字と様々なお題を大神から出され、それを連続で当てていた
ここまで連続正解を出せた菊理は、自分に少し自信が出てきていた
「やっぱりお前の霊力は戦闘向きじゃねぇのかもな。霊力の流れも掴めねぇし。だがその代わり眼に見えない物を視る力や聴く力に特化しているようだ。普通そうやって視る事は俺等だって出来ねぇからな」
「へ?そうなんですか?」
菊理はキョトンと目を丸くすると、大神は大きく頷いた
「おう。戦いに長けた者、守りに長けた者、治癒に長けた者――黄泉守人にはいろんな奴がいるが、お前みたいにハッキリと視える奴は初めて見た。予知や過去を見れる奴もいるにはいるが、そいつらも断片的にしか視えねぇらしい」
「へぇー……イマイチ凄さが分からないですけど」
「しかも透視能力だけじゃなくて、物を繋ぐ力もある。本当に変わった力だよお前の霊力は」
大神に自身の能力の異質さを指摘されるも、あまりピンと来ない菊理は不思議そうに手のひらを見つめる
すると稽古場の入り口から声が響いた
「皆さんそろそろ休憩にしませんか?」
大神の妻・蓉子がお茶とお茶菓子をお盆に乗せ、やってきたのだ
「あ、お菓子食べたい!」
「僕もー!」
その言葉に子供達は素早く反応し、母に駆け寄った
こうして修行はお開きになったのだった
―――――――――――――――
皆で揃ってお茶菓子を食べていると、尚道が菊理に話しかけてきた
「ねぇ菊理さん。さっきお父さんと何やってたの?」
「箱の中身を当てる修行だよ」
「へぇー!俺もやりたい!」
そう言ってひょいと箱を手に取ると、霊力を込め中身を見ようとしている
しかしどんなに霊力を込めても一向に視えてくる気配がなく、尚道は眉をひそめる
「……?どうやったら見えるの?全然見えてこないよ?」
「ははっ!お前には無理だ尚道。これは菊理だけが出来るんだよ」
大神が豪快に笑いながら言うと、尚道はむっと頬を膨らませた
「ちぇっ。…………あ、じゃあさ、お母さんの赤ちゃんも視れるの?」
尚道は思いついたように母のお腹を指差しながら菊理に尋ねた
「え!?えぇ??視れるかもしれないけど……」
「じゃあ弟か妹か教えてよ!俺絶対弟が良いんだ!」
期待の眼差しで詰め寄る尚道に、菊理がたじろいでいると、横から尚道を援護するように声が上がった
「おとうと、おとうと!」
「お、それ面白そうだな。菊理やってみろ」
「えぇ……」
道隆と大神からも頼まれ、菊理は戸惑いながらもやってみることにした
「では、失礼します」
「ええ、お願いします」
菊理は恐る恐る蓉子のお腹に糸を繋げた
「うーん……」
意識を集中させると、徐々に胎内の映像が視え始める
するとある光景が脳内に映り、思わず笑みを浮かべた
「………あ、可愛い。今指しゃぶりしてますよ」
「まぁ。お乳を飲む練習でもしてるのかしら」
菊理の発言に、蓉子は目を細め愛おしそうにお腹を撫でる
更に意識を深く集中させると決定的なものが脳内に映った
「………あ、付いてないですね。アレが。女の子みたいですよ」
「お、次は女か」
「着る物も用意しないといけませんね」
嬉しそうに笑みを浮かべる両親に対して、尚道は不満そうだった
「えぇー!妹かぁ。弟が良かったのになぁ」
むくれる尚道の頭を大神が慰めるようにガシガシと撫でた
「大丈夫だ尚道、妹は可愛いぞー。守ってやりたくなるぞ」
父にそう言われ、尚道の顔に少しだけ笑顔が戻った
すると菊理の側に嗣臣が近づき口を開いた
「しかし凄いな菊理。そんなにハッキリと見えるとは」
「そんなに珍しい事なんでしょうか?」
菊理が尋ねると嗣臣は頷いた
「ああ。俺にだってそれは出来ない」
嗣臣にもそう言われ、菊理はまた手のひらを見つめた
この力で私も何か役に立てたら―――
そんな事を密かに思うのだった




