表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/31

第20話 比良坂の嫁

菊理が穢鬼に遭遇する数秒前――


ホールではうんざり顔の嗣臣と苛立ちを露わにしながら足を鳴らしている晴臣の姿があった


「嗣臣!あの嫁はいつ戻ってくるんだ!全く気のきかん嫁だ!」


「父さん、菊理はこれが初めての社交界です。少しは大目に見てください」


そう父を諌めると嗣臣は大きなため息をついた


(さっさと帰りたい………)


そんな事を思いながら時計を眺めていたその時だった


ガシャァン!!


突然窓ガラスの割れる音が響き渡った


「――――!?」


嗣臣が驚いて音のした方向を振り向くと、そこには数十体の穢鬼が割れた窓ガラスから侵入する姿が目に入った


「キャァァァァァ!」


「大変だ穢鬼が入ってきたぞ!」


辺りは叫び声と怒号が響き合い騒然となっている


「どういう事だ!結界が張ってあるというのに何故!?」


晴臣は予想外の事態に驚き狼狽えている


「嗣臣!」


すると遠くから低い声が大きく響いた

道之だ



「ああ」


短く答えると互いの視線が交わり、次の行動を理解し嗣臣は頷いた


「まずは力を持たない者を避難させよう!」


そう叫び駆け出そうとした時、嗣臣はある事を思い出した


(――菊理!菊理はどこに!?)


休憩をしたいと言ってホールを出たきり菊理の行方が分からないままだったのだ


―――このままではマズい


「天鬼!福!」


呼び声と同時に暗闇から2つの影が飛び出てきた


「はっ!」「きゅ!」


「菊理が1人で出ていったきり帰ってきていない!探してくれ!」


「御意!」「きゅ!」


2体は即座に頷くと、直ぐ様駆け出した



(無事でいてくれ!菊理!)


嗣臣は無事を祈りつつ、目の前の敵と対峙するのだった



――――――――――――



同じ頃



菊理は突然現れた穢鬼に動揺を隠せないでいた


「ど、どうして……ここは結界が張られている安全地帯じゃないの……?」


目の前で起きたことが信じられず呆然と立ち尽くす


するとその時穢鬼が菊理めがけて襲いかかってきた


「―――ひゃっ!」


菊理は攻撃を咄嗟に左に飛び避けると、穢鬼の鋭い爪が飾られていた花瓶を叩き割った


穢鬼はゆっくり首を左に向け菊理を見ると、再び跳び上がり襲いかかってきた


「――――っ!」


菊理は手に力を込め、霊力の糸を出しそれを穢鬼に巻き付けると身体を拘束した


「ギィィィィィィ!!」


身動きが取れなくなった穢鬼は叫び声を上げる


襲ってこれない事を確認すると、菊理は床に転がり落ちている二階堂の腕を拾い上げ、二階堂の元へと急いだ


「な、何を―――」


「あなたの腕、治さないと!あなたの事は大嫌いだけど、今見捨てるのはなんか違う!」


早口でそういうと、再び力を込め糸で腕を縫い付けるよう念じる


(早く!早く!早く!繋ぎ止めて!)


焦りながらも術に集中し、丁寧に切断された部分を縫い合わせていく


「―――出来た!」


「おお、腕が繋がった……助かった…」


その時だった

ブチブチという音が聞こえ思わず振り返ると、先程縛り上げた穢鬼が糸を自力で千切っていたのだ


どうやら縛り方が甘かったらしい


「ひぃ!!」


二階堂が情けない叫び声を上げ後ずさった時、穢鬼が菊理めがけて飛び掛ってきた


(―――あ、ヤバイ………詰んだ――――)


死を悟りギュッと目を瞑った瞬間だった


「ウオオオオオオオオ!!」


獣の様な雄叫びと共に青い毛の怪物が穢鬼を思い切り拳を振り上げたのだ


「ギィィィィィィィッ!!」


強烈な拳を食らった穢鬼は叫び声を上げながら飛ばされ壁に追突すると、そのまま動かなくなった


「天鬼ちゃん!」


菊理は安堵の声をあげ名を呼ぶと、横からもう1頭が姿を現した


「きゅー!!」


「福ちゃん!来てくれたのね!」


思わず福に抱きつくと、穢鬼を殺し終えた天鬼が大きい身体を揺らしながら菊理の元へと近づき、跪いた


「菊理様、お怪我はありませんか?」


「私は大丈夫。でもこの人さっき腕を切断されちゃったの。さっき私が繋いで戻したから治ってはいるけど……安全な場所に避難させなきゃ」


「では天鬼がお連れいたす」


天鬼は菊理を抱き上げた


「ありがとう。――福ちゃんはこの人を乗っけて運んでくれる?」


「きゅ!」


福が返事をし乗せやすいようにその場で座ると、二階堂は戸惑いながらも福の背中に跨がった


――――――――――――――


一方ホールでは嗣臣をはじめとする黄泉守人達が穢鬼の始末にあたっていた


「だりゃぁぁぁぁぁ!!」


道之の拳が穢鬼の腹に入ると同時に雷撃がその身体に流れ込む


「ギィィィィィィィッ!!」


穢鬼は電流をうけ感電するとピクリと動かなくなる


するとある穢鬼が嗣臣めがけて襲いかかってきた


「猫柳!!」


嗣臣が猫柳を呼ぶと影の中から猫柳が姿を現し応戦する


猫柳の一撃が穢鬼に入り床に叩きつけられると、そこから影の針が穢鬼を貫いた


「ギィィィァァァァァァ!!」


叫び声をあげ、その場に倒れ込んだ


「全くどうなってやがる!なんで結界破られてんだ!」


「分からん!だがそれを何者かがやった事は明らかだ!」


嗣臣は叫びながら返事を返す


(そんな事が出来る奴がどこに――――)


そう思った時、嗣臣はある事を思い出した


「………まさか」


彼には心当たりがあった

かつて前妻を亡きものにした穢鬼の存在を―――


「嗣臣!」


道之の声にハッとすると目の前で穢鬼がぶっ飛ばされていた


道之が蹴り飛ばし穢鬼を吹き飛ばしてくれたのだ


「………危ねぇぞ油断すんな」


「……すまない」


嗣臣は短く礼を言い、全体を見渡し先程よりも穢鬼の数が減ったのを確認すると、父を避難させたテーブルの下に声をかける


「父さん、あらかた片付きましたし外へ出ましょう」


「お、おお」


晴臣は恐る恐るテーブルから這い出て立ち上がる


戦いの音が聞こえる中、2人はホールを後にした


――――――――――――


避難の為外に出た嗣臣と晴臣はその光景に目を疑った


「これは一体………」


洋館の庭では負傷した者たちが集まり、それを1人1人菊理が声をかけ見て回っていたのだ


「大丈夫ですか?どこを怪我されましたか?」


そう良い声をかけ、酷い怪我をしている者は菊理が霊力を使い治している


綺麗だった彼女のドレスは汚れ、髪も乱れていたが、それに気にすることなく手当てする手を止めない


「主!」


「天鬼!」


天鬼が救急箱を両手に抱えぴょこぴょこと嗣臣に駆け寄った


「菊理しゃまが1人でも多く助けたいと、このように手当てを申し出たのでしゅ」


「菊理自ら………」


「あの嫁がその様な事を………」


晴臣が信じられなそうにボソリと呟いた


「父さん」


嗣臣は静かに呼びかけ、父を見つめた


「確かに菊理は良い家柄の出ではありませんし、父さんの理想からは懸け離れているかもしれません。ですが俺は菊理の優しさとひたむきさに心惹かれているんです。菊理の心は他の誰よりも美しい、そう思っています」


嗣臣は嘘偽りなく、真っ直ぐな瞳で本心を語った


すると晴臣は目を伏せ静かに口を開いた


「…………嗣臣。それでも私はあの嫁は比良坂家には相応しくない、そう思っている」


そう否定的な返事をしつつも父は菊理をジッと見つめている

彼女は今もなお人目も憚らず怪我人の手当てに当たっている


「だが、今のあの嫁の姿だけはお前の嫁として相応しいのかもしれん。ほんの少しそう思えた」


そう答えた父に嗣臣は目を見開いた

あの頑固な父が菊理を少しだけ認めたのだ


遠くで菊理の姿を見つめながら、嗣臣は表情を緩ませていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ