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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第18話 菊理、まさかの社交界デビュー!?

ある日の午後

比良坂家に思いもよらぬ来客者が現れた


「―――え!?お、お義父……様?」


戸を開けると嗣臣の父――晴臣(はるおみ)が玄関に立っていた

あの修羅場状態だった初顔合わせ以来の訪問に、菊理は目を見開いて驚く


「お前にお義父様と言われる筋合いは無い。私はまだ認めていないからな」


晴臣は苦虫を噛み潰したような顔でそう言い放ち、菊理を睨見つける


すると廊下から嗣臣の声が響いた


「どうした菊理?」


「あ、嗣臣さんあの――」


菊理が用件を言い終わる前に、玄関に立つ実父に気付き、嗣臣は察した


「………父さん」


嗣臣はあからさまに嫌そうな表情を浮かべ、大きなため息を付く


「………なんですいきなり。菊理の嫌味を言いに来たのなら今すぐお帰りください」


「そうじゃない。お前に今日の夜会に行ってほしいのだ」


実父の突然の申し出に、嗣臣は眉をひそめる


「夜会……?断ります。あんな鬱陶しい場所」


「この嫁の悪評が『黄泉守人』界隈で広まっておる。私は断じてこの嫁を認めないが…このまま謂れのない悪評が出回って比良坂家の名に傷が付くのは困る。噂を収める為にも行け!」


最後に「これは命令だ、いいな!」と吐き捨てるように言い、晴臣は玄関の戸をピシャリと閉め比良坂家を後にした

シンと静まり返った玄関に、嗣臣の深いため息が再び落ちる


「………全く、父さんは世間体ばかり気にするからいけない」


厄介そうにボヤく嗣臣に、菊理はおずおずと尋ねた


「あの……夜会って一体……」


「黄泉守人を担ってる我々が定期的に行っている集まりだ。横の繋がりを深める為と言えば聞こえは良いが、実際は腹の探りあいと足の引っ張り合いをするだけの下らん集まりだ」


そう言い放つ嗣臣の表情は心底嫌そうだ

余程その集まりに行きたくないのであろう


「でもお義父様の命令ですし、行かないとまずいのでは?」


「……はぁ。面倒だが仕方ない。菊理、急だが準備をしてくれ。俺も着替えてくる」


嗣臣は観念したように渋々自室に戻ろうとする


だが、てっきり嗣臣だけで行くと思い込んでいた菊理は驚きの声を上げた


「えっ…えぇ!?私も行くんですか!?」


「ああいうのは夫婦で出るものだ。それに噂を収めろとの事だから菊理にも出てもらう」


「マジかぁ………」


こうして菊理は人生初の社交界デビューをする事になった


―――――――――――


数時間後

衣装部屋ではドレスに身を包んだ菊理の姿があった


「わぁ!菊理しゃま素敵でしゅ!!」


「きゅー!」


天鬼と福がドレス姿の菊理を絶賛するが、当の本人は何とも言えない顔をしている


彼女が今着ているドレスは、あの初デートの時に仕立てた中の一着で『若い婦人達に今人気がある』と勧められるがまま選んでしまった淡い青色のフラッパードレスだ


「………いやぁ、これ浮くんじゃないかなぁ……」


菊理は自信なさげに鏡越しにドレス姿の自身を見つめる


露出は控えめだが、全体に細やかな刺繍が施されており、灯りを受ける度に静かに輝いていた

腰の低い位置で切り替えられたドレスはゆったりとした形で、歩くたびに裾の布地が柔らかく揺れる


そしてそのドレスに合うよう使用人が髪を結い化粧を施してくれたのだが、菊理はなんだか合わない気がして落ち着かないのだ


「そんな事ないでしゅ!菊理しゃまが一番きれーなはずでしゅ!」


「きゅー!きゅー!」


「そ、そうかなぁ」


自信なさげに笑みを浮かべると、部屋の向こうからノックをする音が聞こえた


「―――菊理。準備出来たか?」


「は、はい!」


菊理が慌てて返事を返すと、嗣臣がドアを開けて入ってきた


「…………あのぅ…、どうです?」


ぎこちなく笑い感想を尋ねるが、嗣臣は真顔のまま黙り込んでいる


「………やっぱり、変でした?…………ですよね!こんなちんちくりんに似合いま――――」


「いや」


すると嗣臣が言葉を遮るように否定した


「…………良く似合っている」


ボソリと呟かれたその言葉に、菊理は顔を赤らめた


すると天鬼がニヤニヤと笑みを浮かべながら菊理に近付く


「主は菊理しゃまが美しくて照れているのでしゅ」


いたずらっ子の様な顔でコソリと菊理に告げ口すると、嗣臣がわざとらしく咳払いをした


「天鬼。いい加減そのおしゃべりを止めろ。早く『影』に入れ」


「むぅ。素直じゃないんでしゅから」


ブツブツ文句を言いつつ天鬼は足元の彼の管理する『影』の中に入る


「福ちゃんも嗣臣さんの『影』に入ってね。いい子にしてるんだよ」


「きゅっ!」


福も元気に返事を返すと、素直に『影』の中に入っていった


「……では行くぞ」


「は、はい!」


不安ながらも初めての社交界の場に向かうのだった

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