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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第16話 信頼


あれから1週間後――


練習を積み重ねた菊理はその成果を大神に見せることになった


稽古場の中央に道之、菊理、天鬼、福が集まり、菊理は緊張した面持ちで大神の前に座っている



「よし、じゃあやってみろ」


差し出された木の玉に向かい手をかざし、菊理は力を込める


「ふっ………」


指先から糸が現れ始め、順調に木の玉に巻き付いていく


(力み過ぎない、力み過ぎない、力み過ぎない…………)


そう念じながら菊理は神経を研ぎ澄ます


糸が巻き付いた木の玉はフワリと浮かび、そのままの状態を維持し続けていた


それを見つめていた道之がフッと笑みを浮かべた


「………合格だ。よくやったな」


その言葉を聞いた瞬間、後ろにいた天鬼と福が声を上げた


「凄いでしゅー菊理しゃま!」


「きゅー!!」


天鬼と福がわっと菊理に駆け寄り喜びを分かち合う


「えへへ……」


菊理も控えめに喜びを噛み締めていると、向かいから声が割って入ってきた


「まあ結局、霊力の流れを見るのはダメだったけどな」


「ううっ……」


バツの悪そうな表情を浮かべ、ガクリと肩を落とした


「だが、出来ねぇもんは仕方ねぇか。嗣臣が言った通り、福を霊力探知役にするか」


道之の提案を聞き、菊理は福の顔を見ながら優しく頭を撫でた


「福ちゃん頑張ろうね」


「きゅっ!」


福が嬉しそうに答えると、天鬼がポンと福の身体に手を置いた


「しっかり働くのだぞ福!福は天鬼の子分でしゅからね!」


「きゅっ?」


鼻息を荒くし威張る天鬼を福は不思議そうに見つめている


すると菊理がすくっと立ち上がった


「よし!皆で頑張るぞー!!チームモフモフぅーーっ!ファイヤー!!」


「おー!!」


「きゅー!!」


円陣を組み気合を入れていると、それを見た道之が噴き出した


「ふ……ははっ!面白え奴だなお前は」


ガハガハと豪快に笑いながら、菊理を眺める


「最初はただのイモい嫁だと思っていたが………成る程な、嗣臣がお前を構うのも分かるわ」


「イモいとはなんですか!もう!」


「わりぃわりぃ。だから嗣臣の好みとはかけ離れてると思ったんだ。寿美は美人だったからよ」


突如道之から寿美の名が出て、菊理は目を丸くした


「道之さんって寿美さんとも交流があったんですか?」


何気ない疑問に、大神はアッサリと答えた


「交流も何も―――寿美は俺の妹だよ」


「い、妹さんだったんですか!?」


思わぬ事実に菊理は目を見開いて驚く


「そうだよ?歳は離れてたけどな。可愛いやつだったなあいつは」


道之は懐かしむように目を細め、天井を見上げた


菊理は迷いつつも、気になっていたことを尋ねてみた


「……どんな方だったんですか?寿美さんって。嗣臣さんからは中々聞きづらくて」


「……特別凄いわけでもない普通の妹だったよ。引っ込み思案で、いじらしくて、そして頑張り屋な妹だった」


在りし日の妹の記憶を懐かしむように、道之は話を続けた


「特に嗣臣への愛だけは誰よりも凄かった。あいつは幼い頃から嗣臣を思い続けて、ついには嗣臣と結婚したからな」


「へええ……じゃあ初恋を実らせたんですね」


道之は笑みを浮かべながら頷くと、急に真面目な顔になり口を開いた


「……菊理。お前嗣臣から寿美の事はどこまで聞いてる」


「え?えっと……10年前に穢鬼に襲われて亡くなっている事まで知ってますけど…」


「そうか………」


そこまで言うと少し黙り込み、そしてまた菊理に問いかけた


「お前、今のままで虚しくねぇのか」


「え?」


「お前嗣臣の事好きだろ?」


「へぇ!?」


素っ頓狂な声を上げた菊理に、道之は怪訝そうな表情を浮かべる


「いやなんでそんな驚くんだよ」


「い、いや自分でもあんまり自覚なくて……」


「その反応は惚れてるって言ってるもんだろ」


少し呆れた様子でツッコむと、少し声の調子を落とした


「だがアイツ、一線を越えてこねぇ……違うか?」


「控えろ道之!菊理しゃまになんという無礼を!!」


道之の言動に天鬼がキッと睨み声を荒げるが、菊理がそれを制止した


「いいの天鬼ちゃん。本当の事だし」


それでも天鬼は道之を睨みつづけるが、彼は気にせずそのまま話を続ける


「お前はそのままで良いのかよ。今はお前が嗣臣の嫁なのによ?」


「……嗣臣さんが寿美さんの事以外でも何か抱えてるのは何となく感じています。それが何かは分からないけど―――でも嗣臣さんは私を悲しませるような事はしないと思います。だから嗣臣さんが大丈夫になるまで待ちます。問題無いです」


気丈に振る舞う菊理に、道之は更に踏み込んだ


「その根拠はなんだよ?」


「勘です!」


「はぁ!?勘だぁ!?」


予想外の答えに道之は思わず声を荒げた


「私、何故だか昔から勘だけはいいんですよ?テストで勉強してなかったけど、勘に任せて答え書いたら4割くらい合ってたり、くじで大物当てたり」


まるで自慢げに自身の感の良さを伝えるが、その後少し照れた様に笑った


「……まぁそれは冗談ですけど、嗣臣さん見てると思うんです。あの人は不器用で言葉足らずだけど、ちゃんと行動で示してくれる人だって。だから嗣臣さんを信じてます」


そう言って答える菊理の瞳には揺るぎない確信が宿っていた


それを見た天鬼が目を潤ませる


「く……菊理しゃまぁ―!!天鬼は感激ちまちた!!」


「きゅー!!」


そう言って天鬼と福は菊理に寄り添う


黙って聞いていた道之はフッと小さく笑った


「そうか…………どうやら俺の杞憂だったみてぇだな。お前が嫁なら大丈夫に思えてきた」


そう言うと道之はゆっくり立ち上がった


「よし。じゃあ出かけんぞ」


「え?何処にです?」


菊理が首を傾げていると、道之はニヤリとした


「常世の入り口に、だ。実戦やりに行くぞ」

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