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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第15話 初めての霊力修行②

「――よし、次に霊力を一定に出し続ける練習をしよう」


先程の箱を片付けながらそう言い、次に丸い木の玉を取り出した


「霊力を一定に……ですか?」


「霊力ってのはただ出せば良いってもんじゃねぇ。闇雲にジャンジャン出していれば霊力は底をつくし、体力もエグい程削られる。それを戦闘時にやってみろ、お前は死ぬ」


「うわぁ…」


菊理はそれが起こった未来を想像し、顔を引き攣らせた


「そうならねぇように一定の量で止めて力を出すんだ。糸を出してこの玉を一定時間浮かせて留めて見ろ」


「は、はい」


菊理は言われるがまま慎重に糸を出した

………が、慎重過ぎるのか一向に糸が玉に届く気配がない


「………いや、そんなチョロチョロ出してても意味ねぇだろ」


「す、すみません」


道之に叱咤され、慌てて謝りもう一度玉を見つめる


(……もう少し強く……強くっ……と)


菊理が強く力を入れたその瞬間

まるで機械で巻き取られたかのように物凄い勢いで玉に糸が巻き付き始めた


「うわぁ!」


「アホか出しすぎだ!」


「すすすすみません!」


糸はぐるぐると玉に巻き付き、まるで毛糸玉の様になっていた

慌てて菊理が糸を引き千切ると、糸は消え玉がゴトンと落ちた


「……ぜぇ……はぁ……なんか物凄い疲労感が………」


大して動いていない筈なのに、まるで持久走を走りきったかのように激しい息切れと身体の疲労感が菊理を襲った


「アホみたいに霊力をかっ飛ばすからだ。その状態が霊力と体力を削った状態だ。死にたくなけりゃ覚えておけ」


「はい……」


菊理が肩で息をしながら頷くと、嗣臣が後ろから近づいてきた


「大丈夫か?水を飲め。少し休憩しろ」


そう言って水が入った筒を菊理に差し渡す


「あ、でも……」


「修行では死にはしないが、これが原因で寝込まれても困る。何も俺達の様にはならなくていい。最低限自分を守れるくらいになれば良いから焦るな」


「はい」


嗣臣の言葉に安心したように頷き水を口に含んだ


その様子を道之は黙ったままじっと見ていた


端から見れば夫婦がお互いを気遣っている良い光景に見える


だがどこか他人行儀に見えて仕方がない――

夫婦というよりは、恋人未満の男女と言い換えた方がしっくりくる気がしていた


道之は微かに2人の関係に違和感を感じるのだった





――――――――――――




それから時は経ち、時間は正午になろうとしていた頃、道之による修行はやっと終わりを迎えていた


「――――という訳で、今回はここまでだ。お疲れさん。さっきの修行は俺がいない時でもちゃんと練習すんだぞ」


「はい。ありがとうございました」


菊理が深く頭を下げて挨拶をすると、トコトコと駆け寄ってくる2つの影が見えた


「菊理しゃまおちゅかれしゃまでしゅ!」


「きゅっ!」


天鬼が水の入った筒を差し出し、福は手ぬぐいを口にくわえ差し出している


「ありがとう天鬼ちゃん福ちゃん」


優しく微笑みながらそれらを受け取り、稽古場を後にした

菊理を見つめながら嗣臣も後に続こうとした時、道之に呼び止められた


「ああ、嗣臣。ちょっと話があるから来い」


背後から道之の声が飛び、嗣臣が振り返ると大神が腕を組み仁王立ちしている


「なんだ話とは?」


嗣臣は道之の元へ歩み寄ると、少しの間があった後に道之が口を開いた


「……お前らどういう目的で結婚した?」


「なんだいきなり脈絡も無く」


嗣臣が眉をひそめると、道之は小さく息をつき口を開いた


「お前と嫁のあの距離感、あれは夫婦の距離感じゃねぇ。特に嫁の方、あれはまだ男を知らねぇ女の反応だ」


そう言って道之は鋭い視線を嗣臣に向けた

そして更に話を続ける


「割り切った結婚にしちゃあ、お前はあの嫁に甘いし、嫁の方も満更じゃ無さそうだ………なのになんで深い関係にならねぇ。なんでいい大人がそんなままごとみてぇな真似しやがる」


「………他所の夫婦の事情に首を突っ込むな。無神経だぞ」


道之の鋭い指摘を嗣臣は表情を変えないままかわす


「………寿美が原因か?」


その名が出た瞬間、道之の眉がピクリと動いた

そしてそのまま押し黙る


「………もう寿美の事は気にするな。あいつはあの日死んだんだ。お前も見たろ?あいつが喰われていく様を」


道之は静かに、まるで諭すように語りかける

そこには悲しさも滲んでいた


「お前はけじめをつけなきゃなんねぇと思っているのかもしれねぇが、そんな物にこだわるのは止めろ……過去に囚われる事を、寿美も望んじゃいねぇよ」


そう言って未だ黙ったままの嗣臣を見つめると、そのままくるりと踵を返し出口へ向かった


「……じゃ、また来週来るわ。引き留めて悪かったな」


道之は後ろを見ないまま手を挙げそのまま稽古場を後にした

そこに嗣臣だけが取り残されたかのように1人佇んでいた


「………出来るわけないだろう。そんな事」


嗣臣は消えるような声で呟き拳を握る


「『あれ』を葬る事が、俺に課せられた贖罪なのだから………」


その暗い決意は、誰に届くこともなく静かに部屋に溶けて消えた

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