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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第14話 初めての霊力修行①

いつもの比良坂邸での朝の光景

朝日の光とややひんやりとした空気に包まれたこの庭先で、最近変わった光景が1つあった


「おはよー福ちゃん。ごっはんだよー」


新しく作られたばかりの小屋を開け、菊理が声をかけると、トコトコと軽い足取りで駆け寄る兎と鹿が混ざった様な獣が外に出てきた


数日前、菊理に突如雇った霊力で眷属になった福咲鹿に『福』と名付け比良坂邸の庭で飼い始めたのだ


「ご飯おいしいね」


もくもくと食べる福に優しく声をかけていると、後ろから声がした


「――――おい、そこのやつ。ちょっといいか?」


振り返るとそこには見知らぬ男が立っていた

体格も良く、肩幅がガッチリとしていて顔も角張っている、外見年齢は40代くらいの全体的に四角い印象の男がそこにいた


「………はい?」


「嗣臣いるか?呼ばれたんだが」


「えっと……どちら様ですか?」


初めて見る顔に菊理が尋ねると、男は眉をひそめた


「お前使用人なのに俺の事知らねぇのか?」


「いや私使用人じゃないんですが……」


「じゃあ誰だ」


「嫁です」


「嫁ぇ!?お前がか!?」


男は大袈裟なくらい目を見開き驚いている


(……そんなに嗣臣さんの嫁に見えないのかな)


ほんの少し傷ついていると、縁側のガラス窓がカラカラと静かに開ける音が聞こえた


「うるさいぞ道之(みちゆき)。朝から人の屋敷の敷地内で大声を出すな」


嗣臣が眉間にシワを寄せながらその男に注意する


「嗣臣!ていうかお前、再婚したならちゃんと俺に紹介しろよ!」


男は嗣臣を見るなり大声で文句を言う


「報告ならしただろう1ヶ月前に」


「報告だけで良いわけないだろ!」 


言い争う2人だが、長い付き合いがあるのが感じられた


「あの……嗣臣さんの知り合いですか?」


菊理がおずおずと尋ねると、嗣臣は小さく頷いた


「ああ、俺の腐れ縁の大神道之(おおがみみちゆき)だ。

我が比良坂家と大神家は代々黄泉守人をしていて、家同士の繋がりもあってな。それで昔から知った仲だ。それから道之、ここにいるのが妻の菊理だ。今日から霊力の指導をしてほしい」


お互いの紹介をされると、改めて道之は菊理をマジマジと見つめる


「……本当にお前嗣臣の嫁なんだな」


「……そんなに見えないですかね」


「嗣臣の好みとは違いすぎて若干」


遠慮のない道之の言動に一瞬落ち込んだが、ふと疑問が湧いた


「っていうか嗣臣さん、霊力の指導ってなんです?」


「この前菊理の霊力が開花しただろう。もっと高める事が出来たら更に上手く扱えるのではと思ってな。俺では上手く指導出来ないから道之を呼んだんだ」


そう言い嗣臣は道之に視線を向ける

菊理は納得するように大きく頷いた


「な、成る程……よろしくお願いします」


こうして菊理は霊力の指導を受けることとなった


―――――――――――――



修行を行う為、一同は比良坂邸の稽古場に来ていた


屋敷の裏手にある稽古場は高い天井と広い床張りの床を持つ静かな空間だ


そこで道之が中央に立ち周囲を見渡した


「さて……それじゃあ始めるが………その前に、コイツらはなんだ」


そう言って大神が見つめる先には天鬼と福がいる


「天鬼は菊理しゃまの応援をしゅるのでしゅ!がんばれ菊理しゃま!」


天鬼が小さな手をブンブン振り上げていると、隣にいる福も元気に鳴いた


「きゅっ!」


可愛らしい応援を菊理は微笑ましく見つめるが、向かいにいる道之は呆れ顔だ


「天鬼は嗣臣の眷属だから知ってるが……その横の兎の顔した鹿みたいなデカいモジャモジャはなんだ?」


道之は眉をひそめながら福を指さす

すると稽古場の入り口でもたれ掛かっている嗣臣が口を開いた


「それは菊理が眷属にした福咲鹿だ。名を福と言う」


「福咲鹿ぁ!?あの神獣か!……ほぉーこのくらいのやつを従えるくらいの霊力はある訳だ」


道之は目を見開いて驚き、福をマジマジと見つめる


「すごいんですかね?」


「まあ珍しいな。普通神獣は神以外に従おうとはしねぇからな。ただ戦闘は出来ねぇからあんまり役には立たねぇと思うが、移動手段くらいにはなるんじゃねぇか?」


何とも言えない評価が出されたが、福は気にしていない様子でくつろいでいる


「よし!じゃあ始めるぞ」


「お、お願いします」


菊理は改めて緊張しつつ頭を下げた


すると道之が白い箱を3つ並べ、懐から小さな石を出した


「まずはこの霊力の込めた石を3つの箱のどれかに隠す。霊力を使って当ててみろ」


そう言って石を箱の中に入れ、菊理に分からないように箱をシャッフルし始めた


「当ててみろって……どうやって?」


「霊力を感じろ。風の流れを感じように、霊力の流れを感じるんだ」


「うーん……」


菊理は言われるがまま、手をかざし霊力を感じようとする


……しかしいくら待っても霊力の『れ』の字も感じられない


(……………全っ然分かんない)


穢鬼が至近距離で来ている時は気配を察知出来るのに、ただの石では霊力が弱すぎるのかうんともすんとも反応しないままだ

菊理が眉間にシワを寄せていると、突然福が菊理の側までやって来た


「……ん?福ちゃん?」


福は3つの箱をジッと見つめると、右の箱を鼻でツンと押し、菊理を見る


「きゅっ」


ここを開けてみろと言われた気がして菊理が箱を開けると、そこにはあの小さな石が入っていた


「わっ!当てたぁ!凄い!福ちゃんいい子!」


菊理は福の頭をわしゃわしゃと撫で褒めると、福も嬉しそうな表情を浮かべた


「いやそれはお前が当てないと意味ねぇんだ」


しかし冷静にツッコまれ現実に引き戻された菊理はぐうの音も出ず、気まずそうな表情を浮かべる


すると遠くから嗣臣の声が響いた


「……しかし福が出来るならそれを補ってもらえばいいだろう。適材適所と言うやつだ」


それを聞いた道之はジトリと嗣臣を睨む


「……お前なんか嫁に甘くないか?」


「菊理は最近霊力を開花させたんだ。物心つく前から霊力を使えた俺達とは違う」


菊理を庇うような言動に、大神は呆れながらも、それ以上は踏み込まない事にした


「……まあいいか。だかこの練習は毎日しとけ。基礎中の基礎だからな」


道之から課題を課せられ、菊理は小さく頷くのだった







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