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黄泉人の妻〜出会ったその日にアチラ側の住人の妻になりました〜  作者: mai


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第12話 思わぬ訪問者

ある日の朝


太陽が昇り、朝日が窓ガラスから差し込み、屋敷の廊下は柔らかな光に包まれている


「ふあぁぁぁ……よく寝た」


寝起きの菊理が大あくびをしながら、屋敷の廊下を歩いていく


そしてふと、嗣臣の事が頭をよぎった


(……にしても最近嗣臣さんが妙に距離を詰めてきている気がする)


あの一見以来、嗣臣は菊理を抱きしめて寝るのが日課になっていた


しかしそれだけに飽き足らず、隣にいる時や出歩く時など、必ず彼から菊理に触れるのだ



(……本当に私の事思ってくれているのかな……?でもきっと寿美さんの事も忘れられずにいるだろうし………それに―――)


嗣臣の寿美への思いを考えると、胸がチクリと痛んだ

これが嫉妬なのか、それとも寂しさなのか、今の菊理には分からないままだ


そしてそれとは別に、菊理は嗣臣にある違和感を感じていたのだが―――その思考は突如止まった


「あれ?」


ふと縁側を見ると、そこには悩みの種の張本人がいたのだ

そこで座り込み何かをしている


「嗣臣さん?何もしてるんですか?」


「菊理。起きたか」


菊理が覗き込むと、嗣臣の膝に竜と猫が混ざった紫の毛の妖獣、猫柳がいた


中型犬サイズ程の大きさの猫柳だが、まるで甘えるかのように胡座をかいている嗣臣の足の中に収まっている


「あ……この子は確か猫柳ちゃん?でしたっけ?」


「ああ、そろそろ手入れをしてやろうと思ってな。毛を解いているんだ」


「へぇー。お手入れもやるんですね。意外」


菊理は感心しながら嗣臣の手元を見つめる


「やらん奴の方が多いがな。俺はやる」


嗣臣は猫柳の毛をブラシで解いていると、菊理の羨ましそうな視線に気付く


「…………触りたいのか?」


「え!?あ、はい……」


不意に問われ驚きながらも菊理は遠慮がちに答える


「猫柳。触らせてやれ」


嗣臣が猫柳に声をかけると、猫柳はどうぞと言っているかのように身体を菊理に差し出す


「わー!ありがとう。………モッフモフだぁ………」


菊理は感動しながらわしゃわしゃと全身を撫でる

そして喉を撫でると、猫柳が猫のようにゴロゴロと喉を鳴らした


「おお……ここら辺は猫と同じなんだ」


無邪気に愛でる菊理を嗣臣は優しい眼差しで見つめていた


「………好きなのか?妖獣が」


「んー、妖獣っていうか動物が元々好きなんです。人間だった頃は動物好きが高じてペットショップに就職しましたから。安い給料だったけど、楽しかったなぁ……」


菊理はかつての暮らしを懐かしそうに語る

黄泉人としての生活も悪いものではないが、人間の時の暮らしも毎日充実して楽しいものだった


「私も妖獣手懐けられたら側に置いておけるのかなぁ」


菊理はぽつりと呟いた

もし手懐ける事が出来たらペットとして飼いたいという安易な気持ちだが、可愛い動物に囲まれたいという小さな夢が彼女の中にあるのだ


「霊力があれば従えられなくもないぞ」


「それじゃあ無理ですよ。私そんなのないですし」


菊理が苦笑して否定するが、嗣臣は真面目な声で続けた


「そんな訳ないだろう。黄泉人になっているのだから霊力は備わっている筈だ。穢鬼と遭遇した時、何か感じないか?」


そう言われ、ふと思い出した

初めて遭遇した時と天鬼と歩いてた時、そのどちらとも穢鬼が近くにいると決まって悪寒を感じたのだ


「あ……!そう言えば悪寒を感じると穢鬼がいますね!」


「それは霊力の影響で感知してるんだ。強いか弱いかは分からないが、いずれ霊力を操れるかもしれんぞ」


「ふーん……そうですかねぇ……」


菊理は信じられないような様子で、自分の手を見つめた


人間だった頃よく読んでいた転生ものの物語では、主人公がチート級の特別な力に目覚める、といったパターンがお決まりだが、そんなものに目覚めていない菊理には嗣臣の話が些か疑問であった



――――――――――


その日の午後


柔らかな日差しが縁側に振り注ぎ、ぽかぽかとした暖かさが広がる中、菊理は本を読み進めていた

その隣では天鬼が小さな手足を広げ日向ぼっこをしている


「ねぇ天鬼ちゃん。天鬼ちゃんはどうやって嗣臣さんの眷属になったの?確か暴れてる所を嗣臣さんが止めて支配下に置いたって聞いたけど」


ふと、今朝の嗣臣の話が気になり何気なく天鬼に尋ねてみた


「天鬼でしゅか?眷属になるには主と契約するのでしゅ」


「契約?」


「そう。『我々は主の為に忠誠を誓い、命を賭してお守り致します』っていう契約を霊力を通してやるのでしゅ」


天鬼はむくりと起き上がり、伸びをしながらのんびりと答えた


「普通に飼うことは出来ないの?」


「力の弱い妖獣なら出来るかもでしゅけど、天鬼みたいに強い妖獣は出来まちぇんね」


そう言うと天鬼は誇らしそうに胸を張り、ふふんと鼻をならした


「ふーん。そっかぁ」


菊理は残念そうに呟き、本を閉じた


するとその時、庭の茂みからカサカサと葉が揺れる音がした


「え?何?」


菊理はその音がする方向を凝視する

葉の音は止まることなく続き、こちらに何かが来ていることだけが分かる


「菊理しゃま離れて」


天鬼が警戒し身構える

しかし嗣臣の結界で守られているこの屋敷で敵が来ることなどあるのか?―――菊理は疑問に思っているとその音の正体が姿を現した


「…………鹿?でも尻尾はリスみたい」


そこにいたのは見たことのない妖獣だった


体格や耳、額に付いた角は鹿だが顔はウサギのように愛らしく、つぶらな瞳でこちらを見つめている


毛吹はよくフワフワしており、尻尾はリスのように長くボリュームがある妖獣だった


予期せぬ訪問者に、2人は戸惑いながらその妖獣を見つめていた

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