スライムなんか倒すことに意味はない
「なあ、女神! これ本当にSSRスキルなのか?」
俺は不安になって女神に聞いてみるが、女神は汚いものを見るような目で俺を睨んだ。
「クソが! さっさと行った行ったー、もうすぐ休憩時間なんだよこっちはー!」
そう言って女神が人指し指を俺に向け、ヒョイっと動かすと俺の体はいとも簡単に浮き上がり、魔法陣に放り込まれた。
「うわああああ」
焦って間抜けな声が出た。レベル1でステータスも初期数値だから、女神の力に抗うすべはない。
俺は腰をさすりながら起き上がるとジャックが憐れんだ表情で俺を見ていた。
「マスター、ゴミスキルあたったのか?」
「な、なんだよ。なんでそんな哀れんだ目で俺を見るんだよ?お前はどんなスキルとったんだよ?」
「ふふ、どえらいスキルが当たったぜ。おい、マスター、次の世界では俺の下につけよ! 俺がマスターになるからよ?」
そう言ったジャックの顔は悪意に満ちていた。
「な、なんだょそれ」
そう言う俺の声には、もはや自分でもビックリするくらい覇気が無く、体も震えていた。
なんだ?なんかおかしいぞ?全然強そうなスキルじゃないけど、マジでこのまま転移すんのか、やめとけばよかった!
「みんな〜、次の世界ではどうするの〜? 私は、戦闘に特化した神スキルが手に入ったから1人でやっていこうかしら〜、どこかで会ったらよろしくね〜」
何言ってやがる! お前は俺たちがいないと何もできない姫プレイ純ヒーラーだろうがよ! みんなお前にどんだけ貢いだと思ってんだよ!
「私もこの歳で一華咲かせてみようかねえ!」
婆さんまで調子乗り出した。まさかみんなすげースキル引いてんのか!
「…………………………………………」
厨二病に至っては黙ってるのが逆にこえーんだわ!
「もういい? 異世界転移スタート〜さよーならー、あ、1つ言い忘れたけど転移先の出現地点は5箇所くらいからランダムなので、みんなバラバラになるかもねー」
「おいそれ先に言えー! みんないっしょじゃねえのかよー!」
恐ろしいほどに無表情の女神が無慈悲に合図をすると、魔法陣が光輝き、俺たちの体は聖なる光に包まれて消えていった。
げげ! マジでこのまま始まるのかよ! 俺のスキルゴミみたいなやつだぞ!
──待ってくれ!こんなはずじゃなかった!
女神が不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていることに気づいた。
「あー、これで厄介払いできたわー、お疲れー」女神は最後にそんなようなことを言っていたが、言葉の意味を理解しようとしたその瞬間、意識がぶっ飛んだ。
☆☆☆
「あー、ん? ここは──」
目が覚めると俺は森の中にいた。どうやら転移には成功したらしい。割と明るい感じで木々には小鳥やリスなどの小動物も見受けられことから、おそらく転生した初心者たちが最初に飛ばされるテンプレ的な平和な森に違いない。凶悪なモンスターが救う魔界の森とは雰囲気が違いすぎるから一目でわかる。
「ピキー!」
スライムだ。見なくてもわかる。一応振り返り確認してみる。
──ほら、スライムだ。平和だな。無視することにする。こんなやつをせっせと倒すことに意味はない。スライムの経験値などたかが知れている。それよりも、大事なのは状況の把握だ。
「ステータス!」
ステータス画面が出てきて確認するも溜め息が出るくらい弱い。
「スキルブック!」
右手にペラッペラの紙が出てきた。薄っすいな。ページをめくると一枚だけ紙があり【拾い食い】のスキルが書かれているだけだった。
俺は絶望するのは後回しにして、この状況でどうやって生き抜くかを考えることにした。せっせとレベル上げをするのが正解なのか? せっかく手に入れたスキルをなんとか有効活用して効率良くできないものか。
──その時、ふいに前方の地面に魔法陣が現れ人が転生された。女だ。
俺はとっさに近くの岩の後ろに隠れた。彼女に見覚えがあったからだ。というかさっきまで前世でいっしょにいた仲間だった。
彼女の名前はクレア。前世では大商人で、パーティの裏方役をずっと務めてくれたやつだった。
さっきの転生前の雰囲気では、皆で仲良くニューゲーム、とはいかなそうな感じだったので俺は隠れて様子を見てみることにした。
ステータス
ステータス、と唱えると目の前に現れるホログラム。他人も見ることができる。原理は不明。
スキルブック
スキルブック、と唱えると右手に現れる本。自分の使えるスキルが書いてあり、スキルが増えるとページも増える。原理は不明。
上記2つは転生者のみが使える魔法のような物である。
ただし現地人の中にも普通に魔法を使える者はいる。




