怪しげな地下組織
「倒して欲しいモンスターがいるんだよ、北の山に出るサイクロプスだ、一つ目のでかい化け物だよ」
「化け物退治か、ベタだなあ。そんなの冒険者ギルドに依頼すればいいだろ?」
「それが受け付けてくれねえんだ。被害を信じて貰えなくてよ。北の山は霧が深くて誰も立ち入らねえから目撃者の証言が曖昧でよ、ハッキリ見たやつは殺されちまってな。頼む! 何もお前らだけにやってもらおうってわけじゃねえ! 討伐隊の一員になってくれればいいんだ!」
俺は後ろを振り返り小声でクレアに話しかける。
「サイクロプスって今の俺たちだと早くないか?無理だろ?」
「うん、無理だと思う。前の世界でも上級者向けの狩場にいたモンスターだったし」
「しかし、せっかく訪れた討伐イベントを無下に断るのはもったいないな、よし」
俺は自信ありげな顔をしておっさんを見た。
「わかった、引き受けよう。その代わり今晩の宿と俺の衣類の調達を頼めるか?」
「おお、引き受けてくれるのか! 頼もしいなあんた! なんで服を着てねえのかはもう聞かねえよ。とにかく泊まれるところと服を用意してやるから頼むぜ!」
「ちょっとマスター、どうゆうつもりなの? サイクロプスは無理だって、私なんもできないよ?」とクレアが俺につぶやいた。
「いいから、できるフリして参加しよう。上手く行けば他のやつが倒して報酬もらえるかもしれんし」
と俺はクレアを丸め込み参加することにした。
「助かるぜ。有能そうな若者に声をかけてたんだ。オレの名前はサムだ。アジトに案内するからついてきてくれ。」
こうしておっさんに案内された俺たちは、町外れの無人の建物から地下へと降りていった。そこには地下通路が張り巡らされて1つの街のように広がっていた。地下通路への階段には2人の門番らしき人間が立っており入ってくる人間を見張ってるようだ。
「お客さんだ、通してくれ」とおっさんが門番たちに言った。
門番たちがおっさんと俺たちに一礼する。
「この街は地下街もあったのか!すごいなあ」
「なんかジメジメして薄暗くて怖いところだね、マスター」
「ここはオレたちの秘密のアジトだ、一般に知られてるわけじゃねえよ」
「俺たちの? おっさんたちは一体なんなんだ?」
「オレたちはグリトニル騎士団、この街の汚れ役さ。あ、ここ段差あるから気をつけろよ」
地下通路をしばらく進むと広い空間に出た。そこは体育館ほどの広さの空間で30人ほどの人間がいた。5、6人ずつのグループに分かれて、それぞれ離れた場所で机を囲んでいた。その中のグループの1つへ俺たちは案内された。
「元気な若者を2人連れてきたぜ、サイクロプス討伐のメンバーに加えてくれ」
「いいだろう、出発は明日の夕方だが、サムはどうするんだ?」
「オレは行かねえよ、別の任務だ。だから代わりにこいつらを連れてきたんだよ」
「ふむ、君たちは見たところ転生者って感じだね。何が出来る?」
「俺たちは転生者ではないが、まあ同じようなもんか、戦闘の経験ならそれなりにあるぜ!」
「そうか、頼もしいね! 討伐隊はここにいるメンバーで全員だ。明日は俺が指揮を執るからよろしく頼む。俺の名前はエルガンドだ」
そこには俺たちを含めて8人いた。いかにも熱血漢の冒険者って感じのエルガンドって人がリーダーで、あとはどこにでもいそうな20代くらいの男女が集められていた。俺たちをここまで連れてきてくれたサムっておっさんは参加しないようだ。
「君はどうしてパンツ一丁なんだ? 寒くないのかい?」
俺はまだパンツ一丁だった。
「おっさん、約束の服をくれ」
「ハハ、こいつを着な、修道服だ。俺たちの外部向けの活動用の服だ」
「ありがと、約束通り今晩の宿も頼むぜ」
そして俺たちは、ここグリトニル騎士団のアジト内で食事と寝る部屋を与えてもらい、その夜はアジトで過ごした。
グリトニル騎士団
街のはずれ者や居場所を失った者たちで構成される地下組織であり全貌は明らかではないが、かなりの人数で構成されている。冒険者ギルドが請け負わない危険な仕事や、ヤバいスジからの依頼を請け負うのが主な任務である。表向きは宗教活動や慈善活動を行っていることになっている。




