5-2.錬金術師のギルドに泊まろう
お土産という名のお買い物を終えたので、今度はギルドの受付の方に行く。宿の案内をしてもらっていないからだ。さっきもまだ、夕方だったし。
「どうされました」
「宿泊についてなんですけど」
「あ、ご案内まだでしたか」
受付に座っていたのは、これまで対応してくれていた人じゃなかった。そう言えば名前聞いてないな。
今度座っていたのは、女の人。
「二階が工房で、三階が宿泊施設になっています。お荷物は」
「お借りしてる工房の方です」
「そうですか。じゃあ、お部屋にご案内しますね」
まあ、この建物の内に荷物があるのだから、あとで自分で運ぶ、でいいだろう。すぐそこだろうし。
受付の人は、受付の中の、多分他のギルド職員さんがいるところに一回行って、それから戻ってきた。
「お待たせしました」
「お願いします」
手には鍵の束を持っている。
背は僕と同じくらい。ほらやっぱり、僕はそんなに小さくはない。アランさんがデカいのである。熊かなー。人の姿を取っていると、よく分からなくなる。
階段を登ってまずは二階へ。そのまま、三階まで階段を登る。
「アルバンさんは男性ですからあまり気にされないかもしれませんが、男女兼用になっております」
「フロアが、ですよね?」
「お部屋もです」
「え」
「前の使用者が男性かもしれませんし、女性かもしれません」
「え、相部屋なんですか?」
「あ、個室です個室。一人部屋になります」
「ですよね」
それならまあ、僕は気にしない。気にする女性は気にするかもしれないけれど、そういう人は多分、外に宿を取るだろう。
けどまあちょっとびっくりはした。
「以前は二人部屋や三人部屋もあったと聞きますけれど、やっぱりそういう複数人でいらっしゃる人は、外にお宿取りますね」
「どう言う関係なんでしょう?」
「師匠と弟子だったり、弟子が複数いる場合は皆で来たりとか。そうなるとうるさいので、注意されていたりしましたね」
まあ。人が複数いれば会話が発生するわけだ。一人部屋が主で、特に声とか音とか、響くよね、そりゃ。
三階は廊下沿いに全部でお部屋が八つ。片側八つずつだ。だから十六部屋ある。いきなり多い。
「狭くて申し訳ないんですが、こちらをお使いください」
「ありがとうございます」
「鍵はこちらになります」
下の工房と違って、こっちは鍵がかかるようだ。
部屋はそんなに広くない。ベッドがあるだけだ。椅子もない。まあ寝られればいいので文句はない。
文句がある人は、外の有料の宿に泊まればいいと思う。
しかしこの部屋。鍵をかける必要があるのかとも考えるけれど、まああった方がいいんだろうな。安心はできるし。
とりあえず部屋に鍵をかけて、一旦工房へと戻る。薬が冷めているのを確認して、漏斗を使って薬瓶に詰めていく。そう言えばこの薬瓶も割と馬鹿にならないんだよね。値段的に。今回は使い放題だから気にもしていなかったけれど、五十本とか作るとなると、それはそれで考え物だ。いや、初期費用さえあればなんとかなるんだけれど。
初期費用さえ、あれば。
とりあえず詰め終わったところで工房を出て。
「鍵よ鍵。いいというまで誰も入れないで」
部屋の戸に鍵をかけて、一階の受付に行く。誰もいなかったら、明日の朝でいいやと思って。
「どうされました」
もう夜なのに、受付の灯りはこうこうとついていて、受付には人がいる。ボドワンの町のギルドもこうなのだろうか。それとも、バイエの街は大きいから、人がいるのか。
「今、工房の方に中級の傷薬を置いてあるんですけど」
「はい」
「明日の朝、魔法の鞄を頂くので、それをテストしてみてもいいですか?」
「そうですね。今日はもうアランさん帰っちゃってるんで、その方がこちらとしても助かります」
受付にいたのは、昼の人でもさっき宿に案内してくれた人でもなかった。男のひとだ。ちょっと言葉足らずで伝わるか心配だったけれど、何とか通じたようで一安心である。師匠からそれはよく言われた。何を言っているか分からないと。
「ここって何時までやってるんですか」
「隣のギルドがやってる間は、受付を開いてることが多いですね。今日は確か、もう一組帰ってくるはずで、それを待っています」
詳しいことを聞いていいのかよく分からないから、ふうんと相槌を打っておいた。
「遅くなっている、ということは、緊急で傷薬が必要になる可能性があるからですね」
「そういうこともあるんですね」
もうすでに閉店している購買で取り扱いがあるのは初級と中級傷薬、の水薬と塗り薬。それから同じく初級の状態異常回復薬、だ。こっちは、次のレシピブックに書いてある奴。僕はまだ作れない。
けれど錬金術師ギルドの職員が開けることのできる倉庫内の棚には、上級の薬とかがいくつか常備されているらしい。
「購入は出来ないんですか?」
「出来ますよ。あっちのカウンターかこっちのカウンターで直接の取引になります。お値段もかなりかかりますし、在庫数把握しておきたいですし」
「そうなんですね」
今は師匠がいるからそれなりの数をボドワンから入荷できているはずである。ただ、それでも消費期限的なものはあるそうで、回転の速い初級中級のように適当な管理は出来ないそうだ。
おやすみなさいの挨拶を軽く受付の人にして、宿泊用の部屋へと戻る。ちなみに本日の宿泊者は僕一人だという。鍵かけなくてもいいような気がするけれど、念のためかけておく。念のため。
「鍵よ鍵、明日の朝までかかっていて」
まあ何をもって朝と鍵が判断するかは分からないけれど、物理の鍵をかけたうえで魔法の鍵もかけておく。勝手に開錠されることはないんだろうと思うけれど、ちゃんとした魔法使いが開錠しようとしたら開くかもしれない。
どうなんだろうね。




