表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大樹の影には  作者: 稲葉 鈴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/20

4-1.お買い物をもう一回しよう

 中級傷薬の水薬が冷めるのを待って、瓶に移していく。今回も五十本できた。まあ、作る鍋の大きさで、薬の出来る量は変わるから、この鍋だとそれくらいなんだろう。


 このお鍋、買うとしたらいくらくらいするのかを見て帰ろう。


 もちろん今回買って帰れたらとてもいいのだけれど、持って帰るの大変そうだし、結構な値段になりそうだし。


 カッティングボードとはさみと鍋が欲しい。今のところ。すり鉢のセットは今家にあるやつでいい。


 あ、そうだ。町のギルドまで配送してくれるかとかも確認したい。同じギルドなんだから、ここまで来いって言わないで貰えるととってもありがたい。その分沢山作るから。


 とりあえずまた一本だけ瓶を持って、階段を下りる。受付には、さっきの人が座っていてくれていた。



「あ、中級出来ました?」

「出来ました。五十本です」

「じゃあまた俺が持って行こう」



 さっきのアランさんが顔を出して、躊躇なく僕を持ち抱える。まあ、ドアの鍵開けるのに、僕が必要だしね。獣人さんからすれば、僕は小さいから、その方がいいと思うんだろう。


 いや、僕は人間の中でもそれほど小さくはない気がするんだけれど。普通サイズだと思う。でも僕はアランさんから見ると小さいから。やはりくまさんなのでは。うちの森にいる熊さんと違って腕二本だけど。


 さっき購買でも色々取って貰ったけれど、あれは手が届かなかったわけではなくて。どれがどれやらわからなかったからで。


 それはそれでだめな気がするな? いやでも初めてのお店ってそういうことあるじゃんと、自分を慰める次第である。そもそも初めての街なんだから、初めての店じゃない方が珍しい。


 なんてちょっぴり自己嫌悪に陥っている間に、アランさんに二階まで運んでもらって、ドアの鍵を開けて中級傷薬の水薬の瓶を詰めてある箱を持って行ってもらう。


 アランさんが階段を下りきってから、部屋に鍵をかけて、僕も受付へ。だって、怖いじゃない。あれだけの瓶が詰まった箱を持って降りてる人の、足元をちょろちょろするの。僕にその気がなくても、僕が足に引っ掛かったら、って思ってしまう。



「はい。受け取りました」



 同じ鍋で作った傷薬の品質は大体均一になる。たまに均一にならないこともあるけれど、まあまあ均一になる。だから見本の一本だけを受付の人は鑑定するのである。


 そもそも均一になってないってことは、混ぜが足りてないとかちゃんと冷ましきっていないとかそういう状態だ。そういう状態だと、持って行った見本にも何かしらの、傷があるから分かる、という。僕には分からない。



「どうします? 今お会計されます? それとも帰り際にしますか」

「値段だけ教えて貰えますか」



 一晩大金を持って寝るのはちょっと怖い。そういう錬金術師のための制度なのだろう。それをほのめかして貰えたので、それに乗っかる。


 我々錬金術師。戦う能力を持っているのはまれである。


 ちなみに自分はほとんどないが、師匠は戦えるタイプの錬金術師だ。戦い方にはいろいろあるけれど、魔法使いを兼任していると戦える気がする。気がするだけだけれど。他に錬金術師の知り合いとかいないし。


 まあ僕もね。ケロールの森にいたらね。それなりにね。戦えるけどね。ここはケロールの森から、とても遠い。



「分かりました。初級傷薬の買取額が24ブラーの計五十本納品なので1200ブラー。中級の買取額が一本48ブラーの、こちらも計五十本納品ですので2400ブラー。双方合わせて3600ブラーになります」

「ありがとうございます」



 サンドウィッチが一つ11ブラーだったから、なんかいきなり大富豪になった気がする。まあ、それだけの効き目があるから、なんだけれど。そうして、作れる人もそんなに多くないからね。


 今回はさらに素材が無料で着いてきたから、全額懐に入るわけだけれど、街の錬金術師だと、この、素材の代金、というものが馬鹿にならない、らしい。


 へえ、と師匠から聞いた時は思ったけれど、確かに街中には花壇がない。自然がない。


 錬金術師の家なら、カゾーランぐらいなら育てられるかもしれないけれど、中級の素材になるとどうだろう。広い裏庭とかがある家じゃないと難しいかもしれない。


 それだと多分、半額くらいは素材費で飛んでいってしまうかもしれない。駆け出しには辛い話である。


 駆け出しは錬金術師のギルドで素材を提供して貰って作って、必要なカッティングボードとかのお金を集めて独立するのかもしれない。


 僕にはよく分からない話ではあるのだけれど。


 それはそれとして。


 今僕の手元にあるのは、帰りの馬車賃200ブラー、それから持参した初級傷薬の水薬を納品して得た240ブラーと、そこからお昼ごはんと夜ご飯の分を購入した残りが213ブラーである。帰りの馬車賃には手を付けてはならないので、これは計算には含めない。


 それから帰り際に貰える3600ブラー。


 明日の宿代に100ブラーくらいは取っておきたいから、ええと。3000ブラーくらいが、軍資金扱いでいいだろう。物価、というものがよく分からない。森に帰りたい。



「もしも購買で、鍋などを購入されるのであれば、カウンターのオレリアさんにお伝えいただければ、明日こちらで清算いたしますよ」

「あ、助かります」



 一々お金を物理的にやりとしなくてもいいのはとても助かる。よく分からないので。それもあるけれど、大金だしね。



「なにか欲しいものはありましたか」

「カッティングボードとはさみとお鍋が欲しいです。あ、ボドワンのギルドに送って貰えたりとかしませんか」

「しますよ。お時間頂戴しますが」

「おおおおお」

「ローンも出来ますよ」

「ろーん」



 聞いたことのない言葉が出てきた。なんだ。それはなんだ。



「先に商品を受取って、それから残金を返済していく方式ですね。初級傷薬の水薬を十本ずつの納品ですと、ちょっと計算面倒くさいんで詳細は出さないんですが、五十本作れるあの鍋で作るより、時間がかかるのはおわかりですよね」

「分かります分かります。え、そういうのありなんですか」

「借金踏み倒すより、沢山薬作った方が、お金になるじゃないですか」



 それは、そう。


 錬金術師になるつもりで安くはないお金をはたいて錬金術師になって、お鍋を買ってしまったら、それは確かに沢山薬を作って納品した方がいいに決まっている。



「お値段表お渡ししておきますね」



 と言って、受付の人が受付のテーブルの、下の棚から紙を一枚取り出した。多分あそこに棚があるんだと思う。手を突っ込んだので。


 渡されたお値段表には、商品名とお値段が載っている。便利。そこには薬草の値段も載っていた。薬草を育てないで買う人にこそ、この一覧はお役立ちかもしれない。


 カゾーランは十束で20ブラー。これ一束と水で五十本は作れる。2ブラーで1200ブラー。この値段表を見るに、とてもすごい事になっている。


 思わず、受付の人の顔を見てしまった。



「カゾーランは割とどこにでもありますから、鮮度を気にしなければそれくらいのお値段ですね」

「お安い」

「冒険者の皆さんの買取価格なんてもっと安いですよ。ついでにその辺から取ってくるとか、新人がお昼ご飯代だけ稼ぐように引き千切ってくるとか、そんな扱いです」

「扱いが悪い」

「それでも傷薬になるのが、ありがたいところですね」



 まあ質の悪い薬草を使うには、それなりに手間暇がかかる。それなりの手間暇のお値段なのだろう。この買取価格は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ