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大樹の影には  作者: 稲葉 鈴


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19-1.状態異常回復ポーションの準備をしよう

 僕が家に帰っても、師匠はまだ帰ってきていなかった。どこに行ったんだろう。まあ、帰ってきてから聞いてもいいんだけど。


 中級傷薬のポーションを瓶に詰めて、それから魔法の鞄に入れる。明日はこれを持って行けばいいだけだ。


 傷薬のポーションの瓶の在庫は五十本。明日初級傷薬のポーションを作っちゃうと、家に置いて行かないといけなくなるから、明日は作れないかな。


 カゾーラン草の粉はまだ十分にありそうだから、明日は状態異常回復ポーションの準備をしよう。必要なものを調べるのと師匠が帰ってくるのを待つために、師匠が持っていた状態異常回復ポーションの本を読む。三冊もあったんだ。


 本屋さんで取り扱いがあるという、残り五冊を買うかどうかは悩んでいる。師匠が持っていないなら、いらないってことなのかもしれないし。


 同じ内容を他の人が書いてることもある、って本屋のおじいちゃんも師匠も言っていたし。僕がもっと大人になって、お金に余裕が出来てから、買ってもいいよねと思ってはいる。


 今は正直、高い本を買うお金はない。本ね、高いんだよ。魔導書ほどじゃないけれど。


 普通の本でも数千ブラーはするし、錬金術の本だと一万ブラーはしそうだった。魔導書になると数万から数十万ブラーする。そんな魔導書をポンポン買う師匠怖い。まあ、エルフだし、僕に見本として初級傷薬のポーション作ろうとしたら上級傷薬のポーションになっちゃうし、魔法使いとしてもダンジョンに潜っていたようだけど。


 確かにこの家、泥棒に入るにはうってつけだね? 家もそうだし家具もエルダートレントの端材で出来ているし、師匠の持ってるお高い魔術書も沢山ある。まあ森自体が上級者向けのダンジョンだそうだから、そもそも普通の泥棒さんにとっては割に合わないんだけど。


 師匠の帰宅を待つ間に、状態異常回復ポーションのレシピブックと、師匠から借りた本を並べて読む。


 レシピブックに書いてあるのは本当にレシピだけだ。必要な薬草くらいしか記載がない。葉っぱとか、根っことか少量とか、書いてはあるけれどそれだけだ。


 師匠から借りた本の方がもうちょっと詳しく書いてある。


 状態異常回復ポーションには、大体全部にドロールという薬草を使う。葉っぱだったり茎だったり根っこだったりするけれど、こいつは吸収を助ける作用があるからだそうだ。


 どういうことかって言うと、早く効くってことらしい。確かに毒だの麻痺だのすぐ効いてくれないと困る。


 なるほど、色々考えられているんだなあ。


 異常回復薬ポーションの上巻に載っているのが毒消し、気付け薬、目薬。下巻に載っているのが、麻痺治しに眠気覚ましだ。全部で五種類。最初に貰ったレシピブックに比べると、一冊当たりの掲載数は少ない。買取価格は全部同じ一本54ブラー。中級傷薬のポーションが48ブラーで塗り薬が50ブラーだから結構高い。


 てことは、購入金額も高いんだろうな、って考えさせられる。


 ちなみにここに載っている毒消しは、バルテレミーさんが言っていたように初級向けで、汎用毒消し、って奴らしい。師匠の持ってた本に書いてあった。


 どういうことかって言うと、上級者向けのダンジョンにいるような奴の毒には効かないんだそうだ。何それ怖い。


 それぞれの毒に対応させた何かが必要ってことなんだって。怖い怖い。


 麻痺と目薬も同じで、とりあえずこれを飲むか目薬の場合は目にぶっかけておけ、って程度らしい。毒と麻痺はどのモンスターにやられたのかで処方が変わるそうだし、目薬もどんな症状が出ているのかで処方が変わるそうだ。


 それは確かに、それが専門の錬金術師じゃないと対応できないよね。多分そういう人たちは、そういうダンジョンの側に拠点があるんだろうな、と思う。


 だから、ええと。ダンジョンを出てから、専門の錬金術師さんの所に行って買うんだろうか。それとも、そのダンジョンの近くの錬金術師のギルドのカウンターで、何とかって魔物にやられて、こんな症状が、って相談したら、対応したお高い薬を出してくれるんだろうか。バルテレミーさんなら知ってるかな。ブレソールさんの方が知ってそうかな。


 ボドワンの近くには、カバネルとコラールって町がある。どっちも規模はボドワンと変わらない。って、バルテレミーさんも師匠も言ってた。だから多分、そのどっちにも上級者向けのダンジョンはないんだろうな、って思う。師匠が帰ってきたら聞いてみよう。忘れるかもしれないけど。


 一応ボドワンの町の近くには、中級者から上級者向けのダンジョンがある。



「まずは毒消しかな」



 眠気覚ましと麻痺治しの瓶をお願いして来たけれど、レシピブックの順番的には気付け薬と目薬が先だ。ボドワンでは特に困ってなさげだったから、どの順番で作っても問題ないんだろうけど。いやそもそも新人の納品を宛にはしないよねって気もする。必要だったら多分、ボドワンにも何人か錬金術師はいたはずだから、その人たちに頼んでいるだろう。


 まあお金を払った順番に瓶が納品されるとも限らないし。その辺は僕には分からない。聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、それを聞くのはもっと僕が色々作れるようになってからだろうな、って思う。話の流れ、とかでもない限り。


 とりあえずこの三冊を全部読んで、それから毒消しの所をさらに細かく読めばいいかなと思う。僕が作るのは、汎用毒消しなので。


 一冊読んだ甲斐はあったと思う。他の状態異常回復薬について書いてある本を買う予定がなくなった、という意味でも。まあいつか僕が大人になって、時間もお金も持て余したら買ってもいいかな、くらいかな。師匠を見てると、いつか持て余しそうなので。


 クロード君たちがお鍋を持ってきてくれたのが昼前で、師匠が家にお鍋を運び入れてくれた後にご飯を食べて、師匠はボドワンの町へ、僕は初級傷薬のポーションと中級傷薬のポーションを作った。それから町に売りに行って、帰ってきて、本を読み終わったところだ。

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