18.届いたお鍋でお薬を作ろう
念願のお鍋が届いたので、お薬を作っていこう、と思う。
鍋自体は師匠がひょいひょいと運んでくれた。まず自分を強化するでしょ。そして布ごと持って、師匠の魔法の鞄に入れた。
それから戻って、テーブルの上の僕が錬金術で使ってる、かまど代わりの布の上に置いたら終わりだ。
師匠が運んだ方が、確実にクロード君たちが運ぶよりも早い。まあ師匠、大人のエルフだからね。そりゃそうだよね。
それから師匠とお昼ご飯を食べて、師匠は町へ行くと出かけて行った。海へ行くための準備があるからだ。何をするのかは、僕はよく知らないけれど。
道を調べたりとか、色々あるだろうし。
師匠が出かけた後は森の道を閉じて、僕は初級傷薬のポーションを作ることにする。
カゾーラン草はすでに昨日の内に粉にしてある。問題は、一束分がどれくらいか分からなくなったことくらいか。いい感じのスプーンが必要かもしれない。
まあ、混ぜながら調整すればいいよね。
カゾーラン草の粉を一すくいお鍋に入れて、作っておいた水をひしゃくに一杯お鍋に入れる。そしてこれを混ぜる。初級傷薬のポーションは火を使わないから好きだ。
混ぜ棒についたポーションの濃さを見て、もう一すくいカゾーラン草の粉を入れる。水はひしゃくに二杯。
ぐるぐるぐるぐると混ぜて、水を足して、水を足しすぎたらちょっとカゾーラン草の粉を足したりして、初級傷薬のポーションが完成する。
まあ、混ぜるだけだからね。初級傷薬のポーションはね。
あとは瓶に詰めたらおしまいだ。
終わってしまった。
正直、初級傷薬のポーションを作るのは、大変ではない。今日はもう、カゾーラン草を粉にしてあったし。
一番大変なのは、薬瓶に薬を詰めることだけれど、それだって慣れたらそんなに大変でもないし。
「水よ水。お鍋を綺麗にして」
使ったらすぐに水で鍋の中をすすぐ。初級傷薬のポーションがちょっとでも残っていて、他の薬と混ざったら大変だからね。
「中級傷薬のポーションも作ろ」
洗った後のお鍋の水は、蓋つきの瓶に入れる。めちゃくちゃ薄い初級傷薬のポーションである。カゾーラン草を奥歯ですりつぶして、唾液と混ぜた時程度の回復量はある。
だからこれは、僕が家で使うように取ってあるのだ。ちなみに中級傷薬のポーションの残りも同じようにして取ってある。
僕が錬金術師の作業をするのに使っている棚の、下の段にまとめておいてある。そこが一杯になったら、森の中に撒きに行くのだ。弱ってる木とか、これだけで何とかなるからね。モンスターには使わない。それで僕が襲われたら面倒だし。
ボーセン草の茎と、カディオ草の根っこをすりつぶしておいた瓶を取り出す。中級傷薬の塗り薬を作った残りだ。ありがたいよね、材料同じようで違うって。
作り方は初級傷薬のポーションとあまり変わらない。粉をすくって入れて、水をすくって入れて、混ぜる。
「火よ火。お鍋をあっためて」
ただ中級と初級の違いは、火にかけるかどうかだ。二種類の薬草の粉を使っているから、水に溶けにくいのかもしれない。
魔物素材のお鍋のいいところは、鍋自体が熱くならないところだ。とてもいい。怖くない。これならたくさんポーションを作れる。
ぐるぐるぐるぐる混ぜて、薬草の粉が水に溶けてポーションが出来上がったところで、お鍋に付属しているふたをする。
「火よ火。もういいよ」
火はちゃんと止める。布製の魔道具とはいえ、火がついているのには変わらないからね。師匠にそう教わった。
火事にはならないみたいだけれど、ちゃんと止めないとずっとお鍋を温め続けてしまうので、ポーションが冷めないのだ。ポーションはちゃんと冷まさないと、瓶に詰められない。
熱いのを瓶に入れると、瓶が割れる、って師匠が言ってた。怖いからやってない。
お鍋ごとポーションを冷ましている間に、僕も出かけることにする。
町の中での情報収集の仕方はよく分からないから、師匠がどこにいるのかは分からないけれど、師匠が町を出て森に向かって道を歩き出したら分かる。そんで森についたら、道を開ければいいだろう。
「錬金術師のギルドに、初級傷薬のポーションを納品してきます」
でも僕はちゃんと書置きを残していく。いや別に今日行かなくてもいいんだけどさ、早く新しいポーション作りたいじゃない。
新しいポーションを作るための薬草は全部庭にあった。それはもう確認した。それを摘んできて粉にしてもいいんだけれど、現在僕の家には状態異常回復ポーション用の瓶がない。ので、作れないのである。
だから今日はその瓶を発注しに行く、という訳なのだ。そのためにはお金が必要で、初級傷薬のポーションの代金はきっと、瓶代になるだろうな、と思っている。ならなかったらどうしよう。
「一本24ブラーで、五十本だから1200ブラーな。どうする。返済に回すか?」
「ううん、貰ってく。次のポーションの瓶買わないと」
「そんなに使わんと思うがな」
「それはそうなんだけど」
でもお金の使い道は、それだけじゃない。
僕は冒険者じゃないから新しい装備とか必要ないし、錬金術師向けのアイテム購入表にも今は特に欲しいものはない。あったとしても、それはお鍋と魔法の鞄のお金を返してからだと思っている。消耗品は別。
「師匠が、出かけるからさ」
「ああ、お前さんの食費か」
「うん。ちゃんと食べなさいって師匠がうるさいから」
1200ブラーはそこそこの大金である。一食で使う人もいるかもしれないけれど、僕は別にそうじゃない。そうじゃなくて、僕は料理が出来ないから。
いや、料理の本は家にあるんだけど。楽しくなくて。火、使うし。
「こんにちは」
「あんた本当に来るスパン早いね」
「今日ね、お鍋が届いてね」
「ああ、まあ。そりゃ使うわな」
錬金術師のギルドの側にある雑貨屋さんのおばあちゃんの所に向かう。異常回復ポーション用の瓶をお願いするために。いやお願い自体はもうしてあるんだけどさ。
「職人にだって都合があるから、すぐには準備できないよ」
「それはそうだけど、ちゃんとお支払いはしておいた方がいいでしょ」
「いい心がけだ」
毒消し用の瓶が一本3ブラーで五十本必要だから150ブラー。眠気覚ましの瓶が一本9ブラーでこちらも五十本必要だから450ブラー、麻痺治しの瓶が一本5ブラーの五十本で250ブラー、気付け薬が2ブラーを五十本で100ブラー、目薬の瓶が一本6ブラーで五十本だから、300ブラー。
全部で、1250ブラー必要だ。
「あ、ちょっと足りない」
「あんたいくら持ってるんだい」
「今初級傷薬のポーション納品して来たから、1200ブラー」
「まあ、全部貰って今度50でもいいけど」
「ううん、今家に中級傷薬のポーションあるから」
「そうかい。明日おいで」
ご飯の代金は確保しておきたいところだ。もうしばらくは師匠がいるだろうけれど、しばらくしたら出かけるのは確定なので。
「ええとね」
毒消し、眠気冷まし、麻痺治しの三種類の瓶をお願いすることにした。気付け薬と目薬は明日だ。
それはそれとして、傷薬のポーション用の瓶を五十本持って帰る。今日はそのために寄ったようなものだし。明日は、最後の五十本だ。これで、今月分の傷薬のポーションの納品はおしまい。




